新刊

大学のデジタル変革 (単行本)

DXによる教育の未来

大学のデジタル変革
フォーマット:
単行本 電子書籍

学習者本位のDXのあり方や国内外の動向、大学教育の将来と課題についてまとめた。高等教育機関や社会人教育関係者に必読の書。

著者 井上 雅裕 編著
角田 和巳
長原 礼宗
八重樫 理人
石崎 浩之
辻野 克彦
丸山 智子
足立 朋子
市坪 誠
イネステーラ 笠 章子
内海 康雄
大江 信宏
渋谷 雄
二上 武生
札野 順
間野 一則
山崎 敦子
湯川 高志
除村 健俊
ジャンル 全て
社会科学
出版年月日 2022/09/15
ISBN 9784501633806
判型・ページ数 A5・242ページ
定価 3,410円(本体3,100円+税)
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

<内容紹介>
教育におけるDXとは、データやデジタル技術を生かして、教育の変革を行なうこと。大学教育DXの全体像の俯瞰と先行モデルにおける今後の方向性について調査研究を実施。学習者本位のDXのあり方や国内外の動向、大学教育の将来と課題等についてまとめた。大学等の高等教育機関、社会人教育関係者必読の書。大学におけるDXおよび学際的な見地からまとめられた書籍は少ない。

<まえがき>
 コロナ禍をきっかけに,社会と教育のデジタル化が加速している。多くの教員が学習管理システム(LMS)を使い,教育のデジタルデータを扱うようになった。オンライン授業は距離や時間の制約を受けない。他大学や海外の大学とのオンラインでの共同授業も実施されている。
 LMSに蓄積される学習データを分析して,各学生の多様性に合わせた教育や,デジタル技術を活用することで,多様な学生や障害等を持った学生に個別に対応が可能となり包摂的な教育が実現され,学修成果の向上が期待できる。また仮想現実(VR)や拡張現実(AR)などを用いれば,これまでは多くの費用がかかったり,危険であったりするため実現できなかった学習体験を得ることが可能になる。
 さらには,大学間・国際・産学連携でのオンラインによる新しい教育モデルが生まれることで,大学の組織や教育のプロセスの変化が起きる。一つの大学,大学院に入学し,いつも決められた教室で授業を受け,卒業するというこれまでの教育のモデルが変わる。在学中も大学卒業後も国内外の複数の大学でオンラインや対面の併用で多様な学びを継続して行い,生涯に渡って学修履歴を蓄積しながら学び続ける教育モデルに拡張されるだろう。

 公益社団法人日本工学教育協会では「工学教育のデジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーションの調査研究委員会」を2021年4月から2023年6月までの期間に時限設置した。本調査研究委員会では,大きく2つの調査研究の対象を設定した。
 第1に大学教育のデジタルトランスフォーメーション(DX)の方向に関し,社会状況,環境,ニーズ,制度,情報技術,国際連携,産学官連携などの多面的な調査を行い,その方向を示すことである。
 第2の目的をその先行モデルとして,国際的な大学間,産学連携でのリカレント教育に関して調査,検討を行い今後の方向を示すこととした。本書はその調査研究委員会の成果である。

 本書が想定している読者は,大学や高等専門学校等の高等教育機関の教職員,同じく経営管理層,企業の人材開発・研修部門の方,民間の教育・研修会社の方,教育行政に関わる官公庁の方,生涯にわたって継続的な学びをしようとしている学習者の方である。本書は教育のデジタル化に関して幅広く記載しており,初等中等教育機関の教職員の方にも有用であると考えている。

 本書の構成を示す。
 第1章の「大学教育のDXを俯瞰する」では,本書全体の要旨を述べた。ここでは,2章から5章までの内容を概観している。また,2章から5章までの内容はそれぞれ独立しており,1章を読んだ後に,2章以下のどの章からでも読み進めることができる構成とした。
 第2章の「大学のデジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーションの現状と将来」では,大学のDXの動向や背景を述べた後に,それを進めるための人材育成を示した。ついで対面授業とオンライン授業を組み合わせたブレンド型授業のありかた,ブレンド型教育の質保証とその成熟度のモデル,オンラインでの国際協働学習を示した後,オンラインで教育を行っている国内外の教育機関のモデルを紹介した。
 第3章の「学習者本位の教育のためのデジタル技術」では,学習者のためのデジタル化のあり方を述べた後,学習データを活用した学修成果の向上,サイバー空間と物理空間が融合する新しい教育のあり方,電子出版による教育の新たな価値創造を示した。
 第4章の「大学を変革するフレームワークとシステム」では,大規模公開オンライン講座(MOOCs)の最近の急激な商業化の状況,学位より小さな学修単位であるマイクロクレデンシャルについて述べ,マイクロクレデンシャルを活用した国際的な大学間連携のモデルを示した。ついで,学修歴をデジタルで証明する技術と国内外の動向を示し,最後に教育に関する情報システムの標準化と今後の動向を示した。
 第5章の「社会人教育に対する要求と新しい教育モデル」では,リカレント教育と社会人教育の現状と今後の変革について述べた。まず,日本,欧米,東南アジアの社会人教育プログラムを概観し,社会人教育の課題とコロナ禍での状況を示した。次に,人材育成の目標と学習モデルを踏まえて,社会人教育のこれからのモデルを述べた。
 第6章の「これからの大学教育と実現の課題」では,まとめとして,将来の大学教育のモデルとそれが実現された状況を描写した。また,その大学教育のモデルを実現するための課題と方策を示した。

 本書の執筆や出版にあたっては,公益社団法人日本工学教育協会の調査研究委員会の活動を通じて日本,そして世界の大学教育や人材育成に関わる多くの方の協力や助言をいただいた。深く感謝を申し上げ,あとがきに名前を記載させていただいた。

2022年7月
執筆者を代表して
井上 雅裕
第1章 大学教育のDXを俯瞰する
 1.1 大学教育のDXの背景と目的
 1.2 大学教育のDXと教学マネジメント
  1.大学教育のデジタライゼーション
  2.大学教育のDX
  3.対面とオンラインの複合による教育
  4.対面とオンライン融合による国際連携
  5.ミネルバ大学(オンラインと対面の融合)
  6.ブレンド型教育のマネジメント
 1.3 学習者本位の教育のためのDX8
  1.データ駆動型教育とラーニング・アナリティクス
  2.サイバーフィジカル(Cyber-Physical)連携での学習の場の拡張
  3.電子出版
 1.4 DXを支えるフレームワーク
  1.大規模公開オンライン講座(MOOCs)
  2.マイクロクレデンシャル
  3.学修歴証明書のデジタル化
  4.総合的な学習マネジメント
 1.5 大学教育およびリカレント教育での国際連携・産学連携の教育モデル
第2章 大学のデジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーションの現状と将来
 2.1 大学のDXの動向
 2.2 大学のDXを推進する体制整備とそれを推進する人材育成
  1.体制整備
  2.人材育成
 2.3 オンライン授業,ブレンド型学習,ハイブリッド教室の方法とその特徴
  1.オンライン授業の開講形態
  2.オンライン授業の利点・欠点
  3.オンライン授業と対面授業の複合
 2.4 ブレンド型教育の成熟度と教学のマネジメント
  1.科目レベルの成熟度
  2.学位プログラムレベルの成熟度
  3.高等教育機関レベルの成熟度
 2.5 グローバルPBLとオンライン国際協働学習(COIL)
  1.渡航を伴うグローバルPBL
  2.コロナ禍でのグローバルPBLのオンライン化
  3.今後のグローバルPBL「ブレンド型の国際連携学習」
 2.6 ミネルバ大学による高等教育の再創造とDX
  1.ミネルバ大学とは
  2.ミネルバ大学の挑戦と理念
  3.実践的知の育成を可能にするカリキュラム
  4.完全なアクティブラーニングとそれを可能にするテクノロジーForum
  5.ミネルバ大学の衝撃
 2.7 オープン大学
  1.オープン大学の歴史
  2.オープン大学の遠隔講義
 2.8 放送大学
  1.放送大学の歴史と概要
  2.放送大学のデジタル化
 2.9 サイバー大学
  1.サイバー大学の概要
  2.理念とミッション・ステートメント
  3.デジタルラーニングエコシステム
  4.学生サポート
  5.質保証
  6.DXへの取り組み
第3章 学習者本位の教育のためのデジタル技術
 3.1 教育におけるデジタライゼーションの狙いと目的
  1.学習者本位の教育のあり方と方向性
  2.自律的に学び続ける学習者の育成
  3.学習者のモチベーション
  4.学習の評価と自省
  5.個々の学習者に合わせた学習環境と学習支援
 3.2 データ駆動型教育とラーニング・アナリティクス
  1.データ駆動型教育
  2.ラーニング・アナリティクスの定義
  3.ラーニング・アナリティクスの基本的な手順
 3.3 Cyber-Physical連携での学習の場の拡張
  1.XRの概要
  2.XRの利用機材
  3.トラッキング技術
  4.コンテンツ作成
  5.XRの活用事例
  6.シミュレーション技術の活用による組込みシステム技術者教育の事例
 3.4 電子出版がもたらす教育への新たな価値創造
  1.電子出版の市場動向
  2.電子書籍活用による学習の広がり
  3.学習へのアクセシビリティーを高める
  4.学生はどのような使い方を好むか
  5.電子書籍化による「知の還流構造」の構築
  6.電子出版による新たな価値の創造
第4章 大学を変革するフレームワークとシステム
 4.1 大規模公開オンライン講座(MOOCs)
  1.Cousera
  2.edX)
  3.FutureLearn
  4.Udacity
  5.JMOOC
  6.SWAYAM
  7.中国大学MOOC
 4.2 マイクロクレデンシャル
  1.マイクロクレデンシャルとは何か
  2.マイクロクレデンシャルに望まれる特性
  3.マイクロクレデンシャルの提供者と提供方法
  4.マイクロマスタープログラム
  5.マイクロクレデンシャルの学習時間および学位などとの接続
  6.日本における履修証明制度と今後
  7.マイクロクレデンシャルの特徴と活用
  8.マイクロクレデンシャルの課題
  9.マイクロクレデンシャルとその記録手段の関係
 4.3 学修歴デジタル化とデジタル証明の動向
  1.学修歴デジタル化の目的とその分類
  2.学修歴デジタル証明の分類と標準化動向
  3.学修歴デジタル化の各国の取り組み状況
  4.学修歴デジタル証明の真正性確認と実装
  5.学修歴デジタル化の実施状況
  6.日本における大学での学修歴デジタル証明の導入遅れの原因と対応
  7.学修歴デジタル証明の今後
 4.4 教育に関する情報システムと標準化
  1.現在の電子学習環境
  2.IMS Global Learning Consortium による標準化
  3.次世代電子学習環境(NGDLE)
  4.学習歴データ連携に伴う個人情報の取り扱い
  5.学習歴データ連携に伴う合意形成の必要性
第5章 社会人教育に対する要求と新しい教育モデル
 5.1 人材育成の背景と要求(産業界の視点)
 5.2 日本の社会人教育プログラム
  1.日本の社会人教育の現状
  2.社会人教育に関わる施策と大学などでの事例
 5.3 欧米の社会人教育プログラム
  1.欧米のビジネススクール学位プログラム
  2.アメリカのノンディグリー(非学位),エクステンションプログラム
  3.大学による企業向け研究・教育・人材育成プログラム
  4.欧米のエグゼクティブ エデュケーションプログラム(EEP)
 5.4 東南アジアの社会人教育プログラム
  1.東南アジアのビジネススクールおよび学位プログラム
  2.東南アジアのノンディグリープログラムとエクステンションプログラム
 5.5 社会人教育の課題とコロナ禍での状況
  1.欧米のビジネススクール
  2.欧米のオンラインプログラム
  3.新型コロナ感染症環境下での企業における研修プログラム
 5.6 人材育成目標と学習のモデル
  1.人材育成目標
  2.学習のモデル
 5.7 社会人教育のこれからのモデル
  1.企業の人材育成プログラムと教育機関のリカレント教育との連携
  2.アジアでの大学間連携プログラム
  3.その他の社会的視点
  4.本調査を通した提言
第6章 これからの大学教育と実現の課題
 6.1 これからの大学教育
 6.2 実現するための課題
索 引
あとがき

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