バイオメカニズム・ライブラリー 多点表面筋電図 (単行本)

バイオメカニズム・ライブラリー 多点表面筋電図
フォーマット:
単行本 電子書籍

新たな応用の可能性が期待される多点表面筋電図の利用方法や応用例について詳解。幅広い研究領域で活用できるよう解説。

著者 バイオメカニズム学会
増田 正
佐渡山 亜兵
ジャンル 全て
電子・通信
出版年月日 2019/09/20
ISBN 9784501333508
判型・ページ数 A5・200ページ
定価 3,300円(本体3,000円+税)
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

新たな応用の可能性が期待される多点表面筋電図の利用方法や応用例について詳解。ロボットやスポーツ工学、医療などの幅広い研究領域で活用できるようわかりやすく解説。より解像度の高い筋電計測についてまとめられた初の書。

はじめに
 
Piperが表面電極を使って筋電図を記録し,筋疲労にともなって徐波化が起こる,いわゆる「Piperリズム」を発見し,1912年に「Elektrophysiologie menschlicher Muskeln」を出版してから,2012年で100年になった.そうした節目に本書の執筆を思い立ってから,すでに7年が経過した.
 筋電図と動作解析に関する最近の国際学会(The International Society of Electrophysiology and Kinesiology: ISEK)がイタリアのトリノ(2006)とデンマークのアールボルグ(2010)で開催され,それぞれMerlettiFarinaという多点表面筋電図の研究者が開催を主導していた.彼らの研究論文を読んでいると,世界の筋電図の流れが変わったという印象を受ける.1970年以前は,針電極による運動単位活動の計測が筋電図研究の主流であった.それが1980年以降,筋電図研究者のバックグラウンドが医学や生理学から工学系に変化してきた.そうした変化が計測手法においても反映され,非侵襲計測や多点計測へと展開していった.
 
長い間,表面筋電図から得られる情報は,筋の活動量を表す振幅情報か筋疲労の指標としての周波数情報に限られていた.しかし,多点表面電極の手法を用いることにより,それまで知られていなかった神経筋接合部の位置や,活動電位が筋線維を伝播する速度の情報を得られるようになった.初期の頃においては,多点電極は直線状の1次元であったものが,2次元の格子状配列に発展していった.特に,高密度電極を用いた表面筋電図手法は臨床神経生理学の領域で診断の道具としての利用が期待されている.
 
先に出版したバイオメカニズム・ライブラリー「表面筋電図」の中でも神経筋接合部や筋線維伝導速度について記述したものの,内容に関しては部分的であった.前著で記載した以外にも,多点表面筋電図により得られる多くの情報は筋生理学の新たな指標として評価されるだけでなく,医療における診断や治療に活かされつつある.
 
今回,多点表面筋電図の方法論や応用例をわかりやすく解説し,多くの研究論文を参照しながら,これまでの成果を取りまとめた.主な読者としては筋電図や筋機能を対象とする研究者を想定しているが,それ以外にも広く筋電図を利用されている方々にも参考になる点はあるかと思う.筋電図に関心のある方々に幅広く本書を活用していただければ幸いである.
 
ここで少し,多点表面筋電図の研究が軌道に乗り出したときのエピソードを紹介させていただく.1985年に東京で開催されたISEKの国際会議の折,その大会の参加者に筋電図や動作計測の分野で著名な研究者であったDe Luca教授とSolomonow教授がいた.両教授はわざわざ,つくばにあった筆者らの研究室を訪問してくださった.つたない説明だったと思うが,楽しいやりとりがあったことを今でも覚えている.しかし,残念ながら,本書の執筆中にDe Luca教授の訃報を聞くことになってしまった.教授のご冥福をお祈りするばかりである.
 
筋電図を研究している間の私(佐渡山)にとってのサプライズは2000年に開催された札幌でのISEKの大会の際に起きた.大会の途中,バスツアーで札幌オリンピックのジャンプ台に向かうとき,たまたま私の席の隣に「Muscles Alive」などの著者としても有名なBasmajian教授が座られた.私は感動のあまり思わず「私はあなたのMuscles Aliveを持っています」と言って,予稿集にある彼の特別講演の顔写真ページを開いてサインをお願いしたところ,快くサインしてくださった.それは今も私の大切な宝物となっている.
 
本書に記述した研究は,多くの方々の支えによって実施することができた.まず,小木和孝氏からは筋電図研究のきっかけと指導をいただいた.宮埜寿夫氏には多点表面筋電図研究の初期段階で適切な協力と助言をいただいた.また,つくばの研究室で行った実験研究の多くには筑波大学の勝田茂教授や岡田守彦教授,ならびに研究室の学生諸氏,すなわち宮田浩文氏,松永智氏,角直樹氏,松垣紀子氏,斎藤健治氏,白石恵氏,山田洋氏から絶大な協力をいただいた.筋磁図の研究では,武田常広氏,遠藤博史氏にもお世話になった.佐渡山が在籍していた信州大学では,上條正義氏,細谷聡氏,酒井一泰氏,越智守氏,菅原徹氏,さらには花王株式会社の木村光俊氏の協力も忘れられない.針電極との同時計測や活動参加閾値に関する研究については,De Luca教授が所長を務めていたボストン大学神経筋研究センター(NeuroMuscular Research Center)に増田が滞在していたときに行ったものであり,De Luca教授始めセンターの職員の方々からは実験の実施にあたり多大な協力をいただいた.
 
産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究グループの持丸正明氏には,佐渡山が大学退職後,同研究所に客員研究員として在籍させていただいた.おかげで多くの研究論文に接することができた.また,前著「表面筋電図」の共著者である新潟大学の木竜徹教授,筑波大学の木塚朝博教授からは,本書を執筆するにあたり有益なコメントを頂戴した.東京電機大学出版局の吉田拓歩氏,早乙女郁絵氏には,本書の出版について大変なご尽力をいただいた.
 
以上の方々に深く感謝申し上げる.

令和元年7
増田  正
佐渡山亜兵
第1章 骨格筋の生理学
 1.1 骨格筋の構造
 1.2 運動神経細胞と神経筋接合部
 1.3 膜電位
 1.4 運動単位と神経支配比
 1.5 収縮力の調節
 1.6 筋線維タイプ
 1.7 運動神経細胞と運動単位の機能分化
 1.8 骨格筋における筋線維組成
第2章 筋電図研究の流れ
 2.1 筋電図とは
 2.2 筋電図研究の始まり
 2.3 多点表面筋電図の研究
 2.4 多点表面筋電図の発展
第3章 筋電位伝播パターンの計測
 3.1 筋線維に沿った活動電位の伝播
 3.2 単一運動単位活動電位の伝播
 3.3 筋周囲方向の電位分布
 3.4 格子状多点表面電極
 3.5 針電極との同時計測
 3.6 表面筋電位のシミュレーション
第4章 神経支配帯の位置と分布
 4.1 上腕二頭筋
 4.2 神経支配帯位置の自動推定
 4.3 格子状電極による2次元分布の計測
 4.4 四肢の筋
 4.5 体幹の筋
 4.6 顔面の筋
  1 前頭筋
  2 鼻根筋
  3 眼輪筋
  4 口輪筋
  5 咬筋
  6 まとめ
第5章 筋線維伝導速度の計測
 5.1 零交差法
 5.2 相互相関法
 5.3 モデルに基づく方法
 5.4 電極方向の影響
第6章 筋線維伝導速度の特性
 6.1 筋疲労
  1 上腕二頭筋
  2 外側広筋
  3 僧帽筋
 6.2 収縮力
 6.3 収縮速度
 6.4 静的収縮と動的収縮
 6.5 発火頻度
 6.6 活動参加閾値
第7章 筋線維伝導速度に影響を与える要因
 7.1 筋線維組成
 7.2 筋線維組成に関する動物実験
 7.3 筋の種類による違い
 7.4 スポーツ種目による違い
 7.5 トレーニングの影響
  1 筋力トレーニングによる影響
  2 バドミントン選手における上腕二頭筋のMFCVの左右差
 7.6 加齢
 7.7 その他の要因
  1 温度の影響
  2 性との関係
  3 薬物との関係
第8章 筋磁図
 8.1 筋磁図の計測
 8.2 筋磁図による筋機能の解析
第9章 多点表面筋電図の応用
 9.1 表面電極貼付位置の決定
 9.2 アーチファクトの検出と除去
 9.3 神経支配帯の位置推定と臨床応用
  1 肛門括約筋
  2 ボツリヌストキシン治療
 9.4 筋線維伝導速度の臨床応用
  1 神経原性病変
  2 筋原性病変
索引

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