ワトソン遺伝子の分子生物学 第7版

ワトソン遺伝子の分子生物学 第7版

前版に比べ、新たに2章分を追加しながら、全般にわたってアップデート。最先端の関連情報紹介に加え、新たに章末問題を掲載。

著者 ジェームス・D・ワトソン 他著
中村 桂子 監訳
滋賀 陽子 他訳
ジャンル 全て
自然科学
出版年月日 2017/01/01
ISBN 9784501630300
判型・ページ数 A4変・900ページ
定価 11,550円(本体10,500円+税)
在庫 在庫あり

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「DNAの二重螺旋構造の発見(1953年)」から60年を意識して刊行された『Molecular Biology of the Gene 7th Ed.』の翻訳。前版に比べ、新たに2章分を追加しながら、全般にわたってアップデート。4つのコラム(先端思考、重要実験、解析技術、医学関連)を設け、最先端の関連情報を紹介するとともに、新たに章末問題を掲載。

 『遺伝子の分子生物学』の新版が,DNAの構造の発見(1953年)から60周年にあたる今年,第7版としてここに発刊された。本書の表紙デザインはそれを記念するものである。2本のDNA鎖の塩基間で起こる特異的な結合により形成される二重らせん構造は,科学を象徴するイメージの1つとなった。科学を象徴するイメージといえば,19世紀後半はおそらく顕微鏡だっただろう。それが20世紀半ばには電子が軌道上を回る原子のイラストに取って代わられ,さらに20世紀の終わりには二重らせんに取って代わられた。
 われわれが今日知るところの分子生物学の分野は,DNAの構造の発見とその構造からただちに提起された研究課題から生まれた。二重らせんを提案したWatsonとCrickの論文は,今や有名になった一文で締めくくられている。「われわれが主張する特定の塩基対形成が,ただちに遺伝物質の複製機構の1つの可能性を示唆するものであるということにはわれわれも気がついていた。」その構造はDNAがどのように複製できるかを示唆しており,遺伝子が何世代にもわたって受け継がれてきた方法を分子的に探究する道を開いた。DNA分子に沿った塩基の並び順が,“遺伝暗号”を表すことも即座に明らかであり,遺伝子がどのように遺伝的特徴を暗号化しているのかという,遺伝学の第2の謎への挑戦もまた開始された。
 DNAの構造の発見からまさに12年後の1965年に,『遺伝子の分子生物学』の初版が出版されるまでにさまざまな進展があった。上記のモデルで示唆されたやり方でDNAが複製されることが確認され,遺伝暗号がすべて解読され,遺伝子が発現する機構と発現がどのように調節されているかが,少なくとも概要までは確立した。分子生物学の分野は最初の教科書ができるまでに成熟し,このトピックについて,大学の講座のためにカリキュラムが初めて定められた。
 これらの過程の基礎にある機構について,初版から48年間にわれわれの理解は著しく深まった。それらの多くはDNAシーケンス(今年はヒトゲノムプロジェク
トの完了から10周年の記念すべき年でもある)を含む,技術的な進歩に後押しされている。『遺伝子の分子生物学』の今回の版は,初版で確立された本分野の主要な知的枠組みと,その後の驚くべき機構の理解,および生物学的,進化学的な理解の達成の両方を記念すべきものになっている。

この版の新しい点
 第7版では数多くの主要な改訂が行われた。同様に,構成の変更,まったく新しい章の追加,既存の章への新しいトピックの追加など,広範にわたるアップデートも行われた。
・巨大分子の構造と研究について第2部が新しくなった。ここでは,3つの主要な巨大分子がそれぞれ章になっている。DNAの章は第6版から維持されたが,その章の最後の短い節だったものがこの版では拡大され,RNAの構造についてのまったく新しい章となった。タンパク質の構造についての章はStephen Harrison(ハーバード大学)が,この版のためにすべて新しく書き下ろした。
・実験手技の章が巻末から第2部に移った。この改訂された章は,本書の全体にわたって繰り返し出てくる重要な技法について紹介している。この章には分子生物学の基本的な技法に加え,分子生物学者が日常的に用いている多数のゲノミクスの技法についてもアップデートされた節が含まれる。実験手技は章によってはコラムで取り上げ,より特別なものとして紹介している。
・生命の起源と初期の進化についてまったく新しい章が加わった。この章は,どのように生命が誕生したのかとか,試験管内で生命をつくり出す(合成生物学)可能性について,いかに分子生物学と生化学の技法がわれわれに考えさせ,ときには再構成すらさせたかが書かれている。この章ではまた,どのように分子過程が進化に向かったか(生命の非常に早い段階でも)も明らかにしている。
・遺伝子の調節の多くの側面について新しい材料が加わった。本書の第5部では遺伝子の調節を取り上げている。この版では,われわれは細菌の集団における細菌定足数感知,細菌のCRISPR防御系,動物におけるpiRNA,Polycombの機能などの新しい重要なトピックスを紹介する。そのほかに高等真核生物における遺伝子調節のいわゆる“エピジェネティクス”の機構にも多くの議論をさいている。動物の発生の間の多数の遺伝子での“停止したポリメラーゼ”の調節と遺伝子の活性化の際のプロモーターにおけるヌクレオソーム配置と再構築の重要な役割については,この版の新しいトピックである。
・章末問題。この版で初めて登場した章末問題は,簡単な答えとデータ解析問題を含む。偶数問題への解答は巻末の付録2にある。
・最近の研究の進歩を反映する新しい実験と実験的アプローチ。本文中に研究の視野を広げる新しい実験的アプローチと応用を統合して示した。たとえば,遺伝暗号がどのように実験的に拡張して新規のタンパク質を合成できるようになったかの説明,生命に必要な最小限の特徴を同定するための合成ゲノムの作製,ヌクレオソーム配置について新しいゲノム規模での解析の議論,細菌における2相性スイッチについての実験,発症に必要な細菌定足数感知経路を標的とする新しい抗生物質をデザインする手法などである。

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PART 1 歴史
 chapter 1 メンデルの見た世界
  メンデルの発見
  遺伝の染色体説
  遺伝子の連鎖と交差
  染色体地図の作成
  変異による遺伝的変動の起源
  遺伝子の実体と働き方についての初期の考察
  遺伝子とタンパク質の関係を探る予備的試み
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 2 核酸が遺伝情報を伝える
  Averyの爆弾宣言:DNAが遺伝的特異性を担っている
  二重らせん
  DNAは4種類のヌクレオチドの配列によって遺伝情報を伝える
  セントラルドグマ
  タンパク合成の向きの解明
  ゲノミクスの時代
  まとめ
  文献
  章末問題
PART 2 巨大分子の構造と研究
 chapter 3 強弱の化学的相互作用の重要性
  化学結合の特徴
  自由エネルギーの概念
  生物系における弱い結合
  高エネルギー結合
  エネルギーを供給する分子は,熱力学的に不安定である
  酵素が生化学反応における活性化エネルギーを低くする
  生体分子の自由エネルギー
  生合成反応における高エネルギー結合
  基の転移反応における前駆体の活性化
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 4 DNAの構造
  DNAの構造
  DNAの位相幾何学
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 5 RNAの構造と多様性
  RNAはリボースとウラシルを含み,通常は一本鎖である
  RNA鎖はところどころで折り返して,DNAのA型に似た二重らせんを局所的につくる
  RNAは折りたたまれて複雑な三次構造をとることがある
  ヌクレオチドの置換と化学的精査を組み合わせてRNA構造を予測する
  小分子に結合するRNAを方向性をもつ選別法により選択する
  酵素として働くRNAもある
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 6 タンパク質の構造
  基本
  水の重要性
  タンパク質の構造には4つの階層がある
  タンパクドメイン
  アミノ酸配列から三次元構造まで
  タンパク質のコンホメーション変化
  特異的な分子認識物質としてのタンパク質
  酵素:触媒としてのタンパク質
  タンパク質の活性調節
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 7 分子生物学の研究技術
  核酸:基本的な方法
  ゲノミクス
  タンパク質
  プロテオミクス
  核酸-タンパク質相互作用
  文献
  章末問題
PART 3 ゲノムの維持
 chapter 8 ゲノム構造,クロマチン,ヌクレオソーム
  ゲノム塩基配列と染色体の多様性
  染色体の複製と分離
  ヌクレオソーム
  クロマチンの高次構造
  クロマチン構造の調節
  ヌクレオソームの形成
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 9 DNAの複製
  DNA合成の化学
  DNAポリメラーゼの反応機構
  複製フォーク
  DNAポリメラーゼの専門化
  複製フォークでのDNA合成
  DNA複製の開始
  結合と解きほぐし:イニシエータータンパクによる複製起点の選択と活性化
  複製の終了
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 10 DNAの変異性と修復
  複製の誤りと修復
  DNA損傷
  DNA損傷の修復と許容
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 11 分子で見る相同組換え
  よくある二本鎖DNA切断が相同組換えを起こす
  相同組換えのモデル
  相同組換えのタンパク装置
  真核生物の相同組換え
  接合型の切り替え
  相同組換え機構の遺伝的影響
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 12 DNAの部位特異的組換え,および転位
  保存型部位特異的組換え
  部位特異的組換えの生物にとっての意味
  転 位
  転位因子とその調節の例
  V(D)J 組換え
  まとめ
  文献
  章末問題
PART 4 ゲノムの発現
 chapter 13 転写のしくみ
  RNAポリメラーゼと転写周期
  細菌の転写周期
  真核生物での転写
  RNAポリメラーゼIとIIIによる転写
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 14 RNAスプライシング
  RNAスプライシングの化学
  スプライソソーム
  スプライシングの過程
  スプライシングの変種
  選択的スプライシング
  エキソンの混ぜ合わせ
  RNAの編集
  mRNAの輸送
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 15 翻訳
  メッセンジャーRNA
  運搬RNA
  アミノ酸のtRNA への結合
  リボソーム
  翻訳の開始
  翻訳の伸長段階
  翻訳の終結
  翻訳の調節
  翻訳に依存したmRNAの調節とタンパク質の安定性
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 16 遺伝暗号
  暗号は縮重している
  遺伝暗号の3つの規則
  サプレッサー変異は同一遺伝子に生じることも異なる遺伝子に生じることもある
  暗号はほぼ全生物で共通である
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 17 生命の起源と初期の進化
  いつ生命が地球上で誕生したか
  前生物的な有機化学では何を基礎としているのだろう
  生命はRNAワールドから進化したのだろうか
  自己複製リボザイムは定向進化によって生まれうるだろうか?
  ダーウィン進化は自己複製原始細胞を必要とするか
  生命は地球上で誕生したのか
  まとめ
  文献
  章末問題
PART 5 調節
 chapter 18 原核生物の転写調節
  転写調節の原理
  転写開始の調節:原核生物に見られる例
  λファージの場合:重層的調節機構
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 19 真核生物の転写調節
  酵母から哺乳類まで保存された転写調節機構
  真核生物の活性化因子はタンパク複合体を遺伝子によび寄せる
  信号の統合と組み合わせによる制御
  転写抑制因子
  信号伝達と転写調節タンパクの制御
  ヒストンとDNAの修飾による遺伝子“サイレンシング”
  エピジェネティックな遺伝子調節
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 20 調節RNA
  細菌で見られるRNAによる調節
  調節RNAは真核生物に広く行きわたっている
  miRNA分子の合成と機能
  短鎖RNAによる遺伝子発現のサイレンシング
  長鎖非翻訳RNAとX染色体の不活性化
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 21 発生と進化の過程での遺伝子調節
  発生過程で特定の遺伝子群の発現を細胞に指示する3つの方法
  遺伝子発現に差違をもたらす3 つの方法の例
  ショウジョウバエの胚発生の分子生物学
  ホメオティック遺伝子群:重要な発生調節遺伝子群
  ゲノム進化とヒトの起源
  まとめ
  文献
  章末問題
 chapter 22 システム生物学
  調節回路
  自己調節
  双安定性
  フィードフォワードループ
  振動回路
  まとめ
  文献
  章末問題
PART 6 付録
 appendix 1 モデル生物
  バクテリオファージ
  細菌
  出芽酵母Saccharomyces cerevisiae
  シロイヌナズナArabidopsis thaliana
  線虫Caenorhabditis elegans
  キイロショウジョウバエDrosophila melanogaster
  ハツカネズミ(マウス)Mus musculus
  文献
 appendix 2 章末問題の解答
索引

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