パワートゥザエッジ

ネットワークコミュニケーション技術による戦略的組織論

パワートゥザエッジ
著者 安田 浩 監訳
デヴィット・S・アルベーツ
リチャード・E・ヘイズ
ジャンル 全て
その他
出版年月日 2009/03/01
ISBN 9784501624101
判型・ページ数 4-6・308ページ
定価 3,520円(本体3,200円+税)
在庫 在庫あり

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木の香りのする静かな佇まい、お客を迎える敬いの言葉、五感すべてを満足させる飲み物と料理、目を上げれば緑豊かな自然に癒される、正にわびとさびの世界。本当に生きていて良かったと実感できる時ではないだろうか。日本に生まれた事は本人の意図ではない。しかも意識のしっかりしない間に、お宮参りだ、初節句だ、正月だと連れ回され、そして極めつけは最初に聞く言葉が日本語と、日本文化を三つ子の魂として我々は意識下に頑健に植え付けられてしまっている。
 二十世紀まで、そしてWEB社会が到来するまでは、我々は日本文化を世界に輸入しそれを謳歌することが出来ていた。近年、何となく世界における日本文化の位置付けに、かすかなかげりを感じ始めているのは私だけだろうか。何か大きな変革が迫っていて、とてつもなく厳しい文化淘汰圧が加わり始めたのではないかという不安が膨らんでいる。
 その顕著な兆しは情報ビックバン(情報大爆発)から始まる。アメリカ発のインターネットとその活用技術が日本に定着を始めたのは一九九〇年代中頃からである。一九九四年五月二日夜七時、ゴールデンタイムのニュースの中で、NHKがインターネット技術を五分間にわたって紹介したことはその顕著な現れである。この時以来、インターネットが急速に展開し、インターネット文化あるいはメール文化を知らない人は、駆逐されてしまったといっても過言ではない。
 歴史の変革を感ずる時人は過去に事例を求める。情報ビックバンに対応する事例は歴史上にはないのか。探し求める私の目に飛び込んできたのが、「カンブリア紀生命ビックバン」である。五億四三〇〇万年前のある日、地球をを覆っていた濃密な霧が突然晴れ、海底も含め全地球が暗闇から決別した。十億年前から海底で蠢いていた動物は、この変化に敏感に反応し、三葉虫が最初に目を持って世界に君臨した。有眼動物の無眼動物に対する優位性は絶対的であることは言を待たず、五億年間安定な進化を続けてきた動物の世界は、突然の嵐の前にたった五〇〇万年で様代わりし、無眼動物は完全に駆逐されてしまった。カンブリア地域産出のバージェス動物郡化石は、眼を持った動物による淘汰圧がいかにすさまじかったかを物語ってくれる。
 このカンブリア紀生命ビックバンと同じ現象が今迫っていることを私は感じている。インターネット→WEBなる世界中の情報へのアクセス手段が与えられたことは霧が晴れたことに匹敵し、検索エンジン、特に画像検索エンジンを得たことは世界中を見る眼(遠隔眼)を我々が持ったことに匹敵する。遠隔眼(WEB文化)を使いこなすアメリカ発文化の厳しい淘汰圧が加わり始めたことが、私の不安を引き起こした原因である。二十世紀「物」の時代から二十一世紀「知」の世界へ移り、時あたかも物理戦争から文化戦争への移行が言われているのは、正にこの遠隔眼淘汰圧の高まりと一致する。私の予測では、この文化戦争はおおよそ五十年で決着し、二〇三〇年頃にはWEBを使いこなせない文化は駆逐されてしまうであろう。
 日本文化は「知の極地」であり、世界文化を豊かにするためにも駆逐されてはならない。そのためには厳しい淘汰圧を跳ね返し、熾烈な文化戦争に勝ち抜かなければならない。WEB世界での中心は現場(エッジ)であり、文化という環境では現場は一般大衆である。一般大衆が目覚めなければ文化戦争には勝ち残れない。本書は軍事指導書とも見られがちであるが、実は、軍隊だけではなく、国家・企業/生産・文化等すべての現場に力を与え、現場からの改革を力とするための指導書である。
 皆様が本書に力を得て、一人が十人、十人が百人を意思改革させる中で、文化戦争における日本文化の勝利を勝ち取って頂きたく、訳者一同心血をこめて本書をお送りいたします。
 平成二十一年一月
 安田 浩 記
第1章 イントロダクション
 情報の力を活用する
 パワートゥザエッジ(PTE)
 本書の構成
第2章 指揮統制
 指揮統制の定義
 C2(指揮統制)の領域
 永続的原理
 C2アプローチの範囲
 周期型
 割り込み型
 問題解決型
 問題提示型
 選択的統制型
 無統制型
 自己同期化
 トラファルガーの海戦(一八〇五)
 情報化時代の指揮統制へのアプローチ
第3章 工業化時代の指揮統制
 分業
 専門化
 階層的組織
 最適化
 調停
 統合計画
 実行の分散
 工業化時代のC2?単純な適応制御メカニズム
第4章 工業化時代の原理とプロセスの崩壊
 工業化時代の遺産
 相互運用性と工業化時代の組織
 俊敏性と工業化時代
 情報化時代と工業化時代の組織
 2人の伍長の物語
第5章 情報化時代
 情報の経済力
 情報の力の再定義
 パワートゥザエッジ(PTE)を可能にする技術
 電話による情報交換の特徴
 ブロードキャストによる情報交換の特徴
 電子メール交換の特徴
 ネットワーク化された環境での情報交換の特徴
 情報を処理する前に発信する
 民間からの教訓
 俊敏性への焦点
 クレジットカードから生命工学まで
 プッシュ指向型からプル指向型サプライチェーンへ
 スーパースターの終焉
 階層化組織と頑健にネットワーク化された組織、その違いと効率
第6章 情報化時代の軍隊に求められる特性
 ネットワークセントリック戦争
 状況判断
 同盟と組織横断的な作戦
 適切な手段
 手段の統合
第7章 相互運用性
 相互運用性の必要性
 相互運用性のレベル
 相互運用性の実現
 相互運用性の実現方法
 相互運用性の課題
 相互運用性のエッジ的実現方法
第8章 俊敏性
 俊敏性?情報化時代の側面での定義と位置づけ
 俊敏な指揮統制
 頑健性
 復元性
 応答性
 柔軟性
 革新性
 革新性の測定
 適応性
第9章 パワーとエッジ
 パワー
 工業化時代の軍事「力」
 情報化時代のプラットフォーム
 新しい手段と機会
 情報化時代のパワーの性質
 エッジ
第10章 パワートゥザエッジ(PTE)
 エッジ型組織
 組織の構造とパワーの関係
 固定したリーダーシップと創発的なリーダーシップ
 エッジ型情報基盤
 GIGの構成要素
 GIGのデータポリシーと実装
 GIGネットセントリックエンタープライズサービス(NCES)
 GIGエージェント
 エッジを強化するGIG
 IPを基盤とするGIGのトランスポート層
 エッジ指向アプリケーション
第11章 情報化時代の指揮統制
 情報化時代の指揮
 情報化時代の統制
第12章 パワートゥザエッジ(PTE)の組織の力
 階層型組織とエッジ型組織
 階層型組織とエッジ型組織の比較
第13章 エッジ指向の任務能力パッケージ
 制度的プロセスの共進化
 戦略的計画と要求事項
 実地検証、共進化、そしてPTE
 訓練と演習を超えて教育と実地検証へ
第14章 未来に向けて

 解題
 訳者あとがき
 索引

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