初めて学ぶ 基礎 ロボット工学
本書は、ロボットをこれから学ぼうとしている初心者に対し、ロボットとは何か、ロボットはどのような構造・機能を持ち、それを動かす方法はいかにあるべきかを平易に述べている。
特に、前半は、ロボットを創り動かすための考え方に主眼をおき、後半はロボットを実際に動かすための理論と技術を解説している。
空想の世界であったロボットが現実のものとなり,現在それが産業分野で広く利用されている。かつては,小説の世界でのヒーロー,からくり人形,自動演奏のオルゴールがロボット的な存在として人を楽しませ,夢を与えてくれた。ところが,電子工学(エレクトロニクス)をはじめ機械工学,コンピュータ工学,情報工学などロボット技術を支える工学技術が進歩・発展したおかげでロボットの実用が現実のものとなった。産業用ロボットが実用段階に入って久しく,最近では人間の住めない宇宙空間や深海でのロボットの使用が徐々にではあるが行われ始めている。
ロボットは動く。動くものは人間誰もが興味をいだく。大学の工科系,工業専門学校,工業高校の機械科や電気科へは,ロボットを学びたいからという理由で入学する学生は多い。確かに,ロボットは見ていても楽しいし,創っていても楽しい。しかし,その仕組みをきちんと理解し,製作するためには十分な準備が必要である。ロボットに所定の物体を所望の位置へ素早く運び,その物体をきちんと位置決めするには計測(センサ)技術,制御(コンピュータやアクチュエータ)技術など工学知識と経験が必要である。
本書では,ロボットをこれから学ぼうとしている初学者に対し,ロボットとは何か,ロボットはどのような構造・機能を持ち,それを動かす方法はいかにあるべきか,ということの概要を平易に述べている。ロボット工学は,機構学,制御工学,計測工学,電気・電子工学,コンピュータ工学などいくつかの機械,電気,電子などの分野にまたがる横の学問分野である。本書は,ロボットを創り動かすための考え方に主眼をおいて,ロボット全体がわかるように広く,浅く,わかりやすく書いたつもりである。
第1編の「はじめてのロボット工学」では,ロボットとはどんなものか,また,それを動かすメカニズムはどうなっているのかを知ろうとする初学者のために書かれ,小川鑛一が執筆担当した。また,第2編の「ロボット制御ことはじめ」では,ロボットの手(マニピュレータ)に話を限定し,そのモデリング法とこれを動かすための制御方法について述べ,加藤了三が執筆担当した。本書一冊の学習でロボットが創造できるとはとうてい思えない。ロボットの動く原理とその構造,理論,応用の一端を理解していただけ,ロボットに関する関心がさらに高まれば,本書の目的は達成できたと考えている。
最後に,本書出版にあたり東京電機大学出版局の岩下行徳氏には大変お世話になった。ここに心よりお礼申し上げる次第である。
1997年8月
小川 鑛一 ・ 加藤 了三
⇒ 正誤表〔第1版10刷〕のダウンロード
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特に、前半は、ロボットを創り動かすための考え方に主眼をおき、後半はロボットを実際に動かすための理論と技術を解説している。
空想の世界であったロボットが現実のものとなり,現在それが産業分野で広く利用されている。かつては,小説の世界でのヒーロー,からくり人形,自動演奏のオルゴールがロボット的な存在として人を楽しませ,夢を与えてくれた。ところが,電子工学(エレクトロニクス)をはじめ機械工学,コンピュータ工学,情報工学などロボット技術を支える工学技術が進歩・発展したおかげでロボットの実用が現実のものとなった。産業用ロボットが実用段階に入って久しく,最近では人間の住めない宇宙空間や深海でのロボットの使用が徐々にではあるが行われ始めている。
ロボットは動く。動くものは人間誰もが興味をいだく。大学の工科系,工業専門学校,工業高校の機械科や電気科へは,ロボットを学びたいからという理由で入学する学生は多い。確かに,ロボットは見ていても楽しいし,創っていても楽しい。しかし,その仕組みをきちんと理解し,製作するためには十分な準備が必要である。ロボットに所定の物体を所望の位置へ素早く運び,その物体をきちんと位置決めするには計測(センサ)技術,制御(コンピュータやアクチュエータ)技術など工学知識と経験が必要である。
本書では,ロボットをこれから学ぼうとしている初学者に対し,ロボットとは何か,ロボットはどのような構造・機能を持ち,それを動かす方法はいかにあるべきか,ということの概要を平易に述べている。ロボット工学は,機構学,制御工学,計測工学,電気・電子工学,コンピュータ工学などいくつかの機械,電気,電子などの分野にまたがる横の学問分野である。本書は,ロボットを創り動かすための考え方に主眼をおいて,ロボット全体がわかるように広く,浅く,わかりやすく書いたつもりである。
第1編の「はじめてのロボット工学」では,ロボットとはどんなものか,また,それを動かすメカニズムはどうなっているのかを知ろうとする初学者のために書かれ,小川鑛一が執筆担当した。また,第2編の「ロボット制御ことはじめ」では,ロボットの手(マニピュレータ)に話を限定し,そのモデリング法とこれを動かすための制御方法について述べ,加藤了三が執筆担当した。本書一冊の学習でロボットが創造できるとはとうてい思えない。ロボットの動く原理とその構造,理論,応用の一端を理解していただけ,ロボットに関する関心がさらに高まれば,本書の目的は達成できたと考えている。
最後に,本書出版にあたり東京電機大学出版局の岩下行徳氏には大変お世話になった。ここに心よりお礼申し上げる次第である。
1997年8月
小川 鑛一 ・ 加藤 了三
◆正誤表◆
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第1編 はじめてのロボット工学
第1章 ロボットとは
1・1 ロボットことはじめ
1・2 いかにロボットに作業をさせるか
1・3 それは位置決めの仕事か
1・4 ロボット工学を学習するために
1・5 人間とロボットの比較
演習問題[1]
第2章 ロボットの形態・構造・要素
2・1 ロボットに必要な要素
2・2 ロボットの形態と構造
2・3 ロボットの関節と手首
2・4 ロボットアームとハンドに力を伝達する方法
演習問題[2]
第3章 ロボットの手足を任意の位置・姿勢に設定するために
3・1 ロボットに作業をさせるために
3・2 ロボットの動きを理解するための数式
3・3 ロボットになぜコンピュータを使うのか
演習問題[3]
第4章 ロボットの動きを支えるエレクトロニクスとセンサ
4・1 ロボットを動かす方法
4・2 目標とする信号と実測する信号を比べる
4・3 直流モータを回すパワー増幅器
4・4 ロボットの五感センサのはなし
演習問題[4]
第5章 仕事をするロボット
5・1 ロボットに作業させるための配置
5・2 作業対象物をいかにつかむか
5・3 ロボットの活躍分野
5・4 ロボットの活躍分野に関する文献
演習問題[5]
参考文献
第2編 ロボット制御ことはじめ
第1章 マニピュレータの運動学
1・1 順運動学と逆運動学
1・2 姿勢角
演習問題[1]
第2章 マニピュレータの微分関係
2・1 微分関係
2・2 特異姿勢
2・3 静力学
演習問題[2]
第3章 マニピュレータの動力学
3・1 ラグランジェの運動方程式
3・2 マニピュレータの運動方程式
3・3 特殊な機構のマニピュレータ
3・4 減速機・モータを含んだマニピュレータの運動方程式
演習問題[3]
第4章 マニピュレータの制御
4・1 制御の基礎
4・2 マニピュレータの位置制御
4・3 マニピュレータの力制御
演習問題[4]
第5章 学習制御
5・1 学習制御の背景
5・2 学習制御の考え方
5・3 学習制御法(1入力1出力線形システムの場合)
5・4 学習制御の安定性
5・5 学習制御例
第6章 スペースマニピュレータ
6・1 スペースマニピュレータの特徴
6・2 スペースマニピュレータのモデリング
6・3 スペースマニピュレータの分解速度制御
参考文献
演習問題の答え
索引
第1章 ロボットとは
1・1 ロボットことはじめ
1・2 いかにロボットに作業をさせるか
1・3 それは位置決めの仕事か
1・4 ロボット工学を学習するために
1・5 人間とロボットの比較
演習問題[1]
第2章 ロボットの形態・構造・要素
2・1 ロボットに必要な要素
2・2 ロボットの形態と構造
2・3 ロボットの関節と手首
2・4 ロボットアームとハンドに力を伝達する方法
演習問題[2]
第3章 ロボットの手足を任意の位置・姿勢に設定するために
3・1 ロボットに作業をさせるために
3・2 ロボットの動きを理解するための数式
3・3 ロボットになぜコンピュータを使うのか
演習問題[3]
第4章 ロボットの動きを支えるエレクトロニクスとセンサ
4・1 ロボットを動かす方法
4・2 目標とする信号と実測する信号を比べる
4・3 直流モータを回すパワー増幅器
4・4 ロボットの五感センサのはなし
演習問題[4]
第5章 仕事をするロボット
5・1 ロボットに作業させるための配置
5・2 作業対象物をいかにつかむか
5・3 ロボットの活躍分野
5・4 ロボットの活躍分野に関する文献
演習問題[5]
参考文献
第2編 ロボット制御ことはじめ
第1章 マニピュレータの運動学
1・1 順運動学と逆運動学
1・2 姿勢角
演習問題[1]
第2章 マニピュレータの微分関係
2・1 微分関係
2・2 特異姿勢
2・3 静力学
演習問題[2]
第3章 マニピュレータの動力学
3・1 ラグランジェの運動方程式
3・2 マニピュレータの運動方程式
3・3 特殊な機構のマニピュレータ
3・4 減速機・モータを含んだマニピュレータの運動方程式
演習問題[3]
第4章 マニピュレータの制御
4・1 制御の基礎
4・2 マニピュレータの位置制御
4・3 マニピュレータの力制御
演習問題[4]
第5章 学習制御
5・1 学習制御の背景
5・2 学習制御の考え方
5・3 学習制御法(1入力1出力線形システムの場合)
5・4 学習制御の安定性
5・5 学習制御例
第6章 スペースマニピュレータ
6・1 スペースマニピュレータの特徴
6・2 スペースマニピュレータのモデリング
6・3 スペースマニピュレータの分解速度制御
参考文献
演習問題の答え
索引