シリアルサイエンス

おいしさと栄養の探究

シリアルサイエンス

穀物における品種改良や加工・製造について「おいしさと栄養を最大限高める」ための研究を初学者向けに分かりやすくまとめた。

著者 椎葉 究 編著
一ノ瀬靖則
鈴木啓太郎
乙部千雅子
青木法明
岡田憲三
木村俊範
田中眞人
平本 茂
ジャンル 自然科学
出版年月日 2014/07/01
ISBN 9784501628703
判型・ページ数 B5・240ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 在庫あり

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「味覚の良さ」や「栄養素の質」は原料の成分特性や性質に依存するだけでなく、加工や製造方法も重要な要素となっている。品種改良や加工・製造といった「穀物」をつくる上で欠かすことのできない各種プロセスにおいて、「おいしさと栄養を最大限高める」ための研究を、それぞれの分野で中心的な活動を行っている著者陣により、初学者向けにわかりやすくまとめた。

 はるか昔,人類は狩猟生活から農耕社会へ生活基盤を変化させた。このとき,作物としてイネ,コムギ,トウモロコシなどのイネ科植物が最終的に世界中で選ばれたことは,人類の共通の歴史である。でもなぜイネ科植物が選ばれたのだろうか,それは,ほかの植物と比較して優れている面があったからだと思う。1つは,人間は多々ある多糖類の中でデンプンしか消化できないが,イネ科のこれらの植物にはデンプンが多かったこと。また,一粒から数十倍もの収量があり(多収),成長が早く病気にも強く,栽培も比較的簡単であったことがあげられる。それと,アミノ酸としてグルタミン酸が豊富に含まれていたこと。人類は頭脳を発達させるために,グルタミン酸を要求してきた。その証拠にうま味成分はグルタミン酸であり,グルタミン酸を獲得することに至福を感じたのではないかと思う。そのようなことから,イネ科作物が選ばれたのは,人類の進化上,必然だったようにも思われる。
 農耕社会になって以降,イネ,コムギ,トウモロコシなどの穀類は加工され世界中で食されてきた。現在でも,ごはんやパン,めん,菓子類は,ほとんどの人類の生活を支えている。栄養となり,おいしさと健康を支え,人間生活の根源となっている。それらはさらに文化となり,文明が築かれる礎になり,まさに今日の全産業の基盤となっている。
 しかし,それら穀類は,その使命を支えている割には,「つつましやか」であり,単なるイネ科の一植物であり,昔から植物としての営みを繰り返し続けてきたに過ぎない。その素直な植物ゆえに,人間は,遺伝子を改良し利用してきたが,全遺伝子が解明されたのはつい最近だし,それらの遺伝子の働きと解析はこれからである。
 このように,人間が長い歴史の中で毎日のように食し,これほど身近な割には,未だに,人間が知らない謎をたくさん含んでいるのも不思議な気がする。それで,「この作物のことをもっとよく知りたい」と,その魅力にとりつかれた人たちがいた。私たちが本書を作ろうと思ったのは,まさに,我々の体を作り,文明を作り,現在の産業を作った力が,「何故,こんなにもつつましやかな植物の中にあるのか」,「ほかの植物にはなくてこの植物だけにある不思議な力とは,何なのか」,「どのようにしてその力が作られているのか」,「なぜ,こんなにおいしくて健康にいいのか」などの謎を,是非解き明かしたいという欲求があったからにほかならない。そして,その謎解きから得られた知識を,「新しい食品をつくる,健康とおいしさを提供する,食糧危機に対処する」,そのような目的を持った人たちに利用してもらいたいと思ったからである。本書が,そのための一助に少しでもなれることを,切に願っている。
 本書では,コムギとコメ粒内部組織の構造,含まれる成分とそれぞれの機能や特徴など,古典的でベーシックな穀物科学をまず解説したうえで,原料から食品を加工するプロセスと,それに伴う化学変化,加工の原理と応用を解説し,その後,できあがった食品の栄養と生理機能性(生体調節機構)を理解できるようにまとめた。
 まとめるにあたり,一連の時系列的に体系化することを意識した。
 第1章では,コムギとコメの就職の食糧としての現代まで続く社会的な役割と食糧を取り巻く現代の課題について簡単に述べる。なお,これらの課題に対する技術的解決方法については,本書にも一部述べているが,本書を参考にして今後の研究に期待するところである。
 第2章では,コムギとコメの組織解剖学的な構造と形質およびそれらの形質を有する特定の遺伝子とその特性を導入するために払われた研究者の情熱と技術について,育種最前線で活躍する研究者によって解説される。「コシヒカリが何故おいしいのか」「モチコメは昔からあったけれど,最近まで世の中になかったモチコムギが日本においてどのようにして作られたのか」など興味深い内容となっている。
 第3章では,コムギとコメに含まれる主食として特徴的な成分について,解説する。ほかの作物にはない主食ならではの栄養成分とおいしさの秘密があるが,その成分について解説する。特に,コムギグルテンタンパク質の構造や機能,穀類のデンプンの特徴などが述べられる。
 第4章では,主として小麦粉加工中の生化学的反応についての解説がある。小麦粉からパンなどができるまでの加工工程(プロセッシング)では,いろいろな反応が起こって,独特のパンなどの食感や香,色,が生成されている。その生化学的なメカニズムなどの理論が解説される。
 第5章では,シリアルフードのプロセッシングとして,コメの加工法とコムギの加工法が解説される。コメからおいしいご飯を作る方法や理論,加工する機械の仕組みなどを解説する。特に,コムギに関しては,製粉から加工までの技術解説とその理論およびその研究史が述べられる。また,コメでは,南インド料理で有名なイドリやドーサなど世界のコメ加工品の加工方法や理論など興味深い内容となっている。
 第6章では,シリアルフードの栄養的な側面の解説がある。特に,シリアルフードの栄養面で最も重要な炭水化物の代謝については,最新の科学的知見が解説される。また,シリアル中(特にコムギ)に含まれている生理機能性を持った特定保健用素材にもなりうる成分の機能の解説とそのエビデンスが述べられる。

 最後に,この本書を作るにあたり,たいへんお忙しい中,貴重な時間を割いてご執筆頂きました先生方々に,また,たくさんの助言を頂きました東京電機大学出版局の方々と妻に,厚く御礼とこころよりの感謝を申し上げます。

 平成26年5月
 椎葉 究
第1章 小麦と米のシリアルサイエンスについて
 1.1 小麦
 1.2 稲,米
 1.3 シリアルサイエンスのこれから
 引用文献
第2章 小麦粉と米粉の構造と遺伝学的特性
 2.1 穀物の解剖学的構造
 2.2 穀物の育種遺伝学的特性
 引用文献
 参考文献
第3章 シリアル中の成分の化学と機能
 3.1 水
 3.2 シリアルの糖質
 3.3 シリアルのタンパク質
 3.4 シリアルの脂質
 3.5 シリアルのビタミン・補酵素
 3.6 シリアル中のミネラル
 3.7 シリアル中のその他微量成分
 参考文献
第4章 シリアルフード加工プロセス中の重要な生化学的反応
 4.1 酵素反応
 4.2 酸化および抗酸化反応
 4.3 褐変反応(Browning)
 4.4 製パン発酵中の化学的変化
 4.5 グルテンの構造と二次加工中の動的変化
 参考文献
第5章 シリアルフードのプロセッシング
 5.1 小麦粉食品の物性(Rheological Properties)
 5.2 小麦粉の加工(Processing for Flour)
 5.3 米(粉)食品の物性
 5.4 米のプロセッシング
 参考図書・資料
 引用・参考文献
第6章 シリアルフードの代謝と栄養,機能性
 6.1 シリアルフードの代謝と栄養
 6.2 シリアルフードの機能性
 参考文献
索引

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