「工学」のおもしろさを学ぶ 第2版

「工学」のおもしろさを学ぶ 第2版

新入生に「工学を学ぶための心構え」を自習させ、「工学リベラルアーツ」の素養を養成することを目的とする。

著者 東京電機大学
ジャンル その他
出版年月日 2011/03/01
ISBN 9784501626105
判型・ページ数 A5・194ページ
定価 本体2,300円+税
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

東京電機大学の実践を基に作成されたテキスト。新入生に「工学を学ぶための心構え」を自習させ、「工学リベラルアーツ」の素養を養成することを目的とする。第Ⅰ部では、大学で体験する教育研究の一端を提示。読み物として、工学の楽しさと取り組み方を伝える。第Ⅱ部では、入学してからの授業で必要となる、実験スキル・情報検索法・基本的態度を解説する。

大学新入生の皆さんへ『「工学」のおもしろさを学ぶ 第2版』を贈ります
 入学試験合格おめでとうございます。皆さんの入学を心から歓迎し,入学をお待ちしております。本学の教育の一端を皆さんに知っていただくために,『「工学」のおもしろさを学ぶ 第2版』をお届けします。これは東京電機大学の脇英世,吉田俊哉,松村隆,鈴木聡,岩城和哉,松田七美男,土肥伸一先生に,本学での教育実践をもとに,工学のおもしろさと,入学してから皆さんに役に立つ事柄を書いていただいたものです。
 第Ⅰ部には,コンピュータ発展の歴史や,大学で体験する教育・研究の一端が書かれていますので,おもしろそうなところを拾い読みしてください。第Ⅱ部には,大学に入ってから必要となる実験におけるいろいろな事柄,あるいは,インターネットを利用した情報の検索とその利用に関する基本的な態度が書かれています。これらは,入学されてから必要になる事柄ですが,入学前にお読みいただき,入学後必要に応じて読み返してください。

技術と工学
 東京電機大学は,1907年に廣田精一,扇本真吉両先生が,「実学尊重」を建学の精神として,日本の発展に貢献する技術者の養成を目的として設立された電機学校から発展しました。ここで,実学とは,社会が必要とし,役に立つ学問であり,後に述べますように現在では,科学技術そのものが実学です。
 広辞苑によれば,科学とは,「体系的であり,経験的に実証可能な知識」であり,技術とは,「科学を実地に応用し,人間生活に役立てる技」とあります。科学技術は,社会が直面するいろいろな問題を解決するための手法,すなわち道具です。
 「科学技術で社会に貢献する人材の養成」が本学の使命です。社会が必要とする問題を解決する能力を持つ科学技術者を実践的科学技術者と言います。本学は,実践的科学技術者の養成を目指しています。
 科学技術の基盤は理工学です。ここで工学とは,人間の活動に有用なもの(人工物)を創造し,生産する方法を与える学問の基盤です。ここでのものは,形が重要な場合もありますが,多くの場合,機能であることの方が多いのです。例えば,第Ⅰ部で述べられるファクシミリは,図形情報を伝達するという問題を解決するものです。そのファクシミリは,電源電池,モータ,絵を張るカン,絵の濃淡を音の変化に変える装置等の機能を持つ部品から構成されます。このように,いくつかの機能要素を持つ部品が相乗的に組み合わされ,目指す機能を実現するものをシステムと言います。システム全体を作る技術は,個々の機能要素を作る技術から成ることがわかります。そして,この機能要素を作る技術も,またいくつかの技術から成るわけです。技術はこのように,科学技術の重層構造から成るシステムとなっているのです。これらの基盤となる理工学をこれから皆さんが勉強するわけです。東京電機大学の教育・研究の理念は,「技術は人なり」です。これは文化勲章を受けられた初代学長丹羽保次郎先生の名言であり,技術者にとって広い分野の知識と教養が必要であることを意味します。
 本学には,理工学に関するほとんどすべての分野の教育・研究をする学科があります。この本は,すべての学科の先生に,書いていただいてはおりませんが,大学での工学に関する教育・研究とは何か,何が必要になるのかを知るための一端が書いてあります。楽しんで読んでいただければと思います。

技術と数学
 このように,これから皆さんが東京電機大学で習得する専門は,大学を出た後,皆さんが科学技術者として社会で活躍するための道具です。理工学を利用する能力は,道具を使う能力と同じで,道具を上手に使う鍛錬をしなければなりません。
 知識は,授業で学べますが,使い方は,演習,実験,卒業研究で学び習得しなければなりません。習ったものだけではなく他のいろいろの技術者と協力しなければ,実際の問題を解決するための十分な技術ではありません。このようにこれから,我々人間の活動に有用なものを作るためには,他の科学技術者の持つ技術と相乗的に統合して構成される技術が必要になります。他の技術者と協力するには情報伝達のためのコミュニケーションが必要です。科学技術の情報は,文章で書くより,数式や,グラフ,表を利用しないと伝えることができないものが多いのです。このように,これから大学で勉強する工学は,数学と,自然現象の解析と利用をするための基礎である物理・化学の多くの言葉や概念を使っております。ピサの斜塔から異なる重さの物体を落とすとき同時に落ちることの実験で示した近代科学の父と言われるガリレオ・ガリレイ(1564?1642)は,数学こそ,自然を記述している言語であり,この言語(数学)を知らずして自然は理解できないと述べています。また,ロジャー・ベーコン(1214?1294)は,数学こそ,科学と実験,検証のための入り口であり,確実性の基盤であると実験と数学の結びつけの必要性を述べているのです。彼はまた,科学技術における実験の重要性を次のように述べています。「実験によって,第1に,既存の科学から導き出せる推論を検証することができる。第2に,既存の科学から演繹によっては達することのできない新しい知識をもたらす。第3に,科学のまったく新しい学問分野をつくりあげる。実験なしには,より深い認識は不可能である」。
 ここで,実験とは,対象とするもの(システム)に,外部から変化させることのできる条件や,変数を変えたとき,それによって変化する量を測定し,システムの特徴を認識することです。例えば,物体を高さのわかる塔から放し,落下時間から,重力の加速度を求め,今度は,高さのわからない塔からの落下時間から,高さを求めることも,実験できます。また,皆さんが,新しい機械を手に入れたときに,いろいろの操作をして,どんな動きをするかを知るのも,実験の一つです。

皆さんへの期待
 これからの日本は,地球温暖化ガスの削減,石油代替エネルギーの開発,資源の高騰等の多くの問題に取り組まなければなりません。そして,これらの多くの問題の解決は,皆さんに委ねられているのです。その解決には,新しい手段,新しい機能,新しい科学技術に依らざるを得ません。
 このような実際問題の解決には,さらに多くの小さい問題を解決しなければならないのです。そのためには,皆さんの持つ科学技術のすべての知識と経験を活用し,理論的に解析し,皆さんの創造力により問題を解決しなければなりません。実際に,与えられた問題が解決できるかどうかは,実験で検証していかなければなりません。

 文部科学省の平成21年度「先導的大学改革推進委託事業」における「実践型工学技術者育成における教育成果の評価の在り方に関する調査研究」を,東京電機大学,芝浦工業大学,工学院大学が行いました。その中で,「入学してくる学生が工学を学ぶ心構え」を自習するための本を作ることが検討されました。この本は,東京電機大学として作成されたものです。
 皆さんの,これから勉強する理工学を理解するのに役立てば幸いです。

東京電機大学 学長 古田 勝久
第Ⅰ部 ものづくりから学んだこと
 第1章 コンピュータはいかにして作られたか[脇 英世]
  1.1 国勢調査という大量データ処理の問題
  1.2 ジャガード織のパンチ・カードのアイデア
  1.3 ホレリスのパンチ・カード
  1.4 鉄道の検札切符に似たアイデア
  1.5 大量データ処理装置としての作表機の仕組み
  1.6 国勢調査の成功とパンチ・カード・システムの普及
  1.7 新しいアイデアで改良の繰り返される作表機
  1.8 事務処理だけでなく科学技術計算にも
  1.9 射撃表と膨大な数値計算
  1.10 電子計算機の出現
  1.11 電子計算機とパンチ・カード・システムの連結
  1.12 マイクロ・プロセッサの登場
  1.13 BASIC言語登場の背景
  1.14 成長していくパソコン
  1.15 むすび
 第2章 ものづくり(工学)を学ぶためのお作法[吉田俊哉]
  2.1 今までは包丁研ぎと試し切り
  2.2 にわか芸術家になっていないか?
  2.3 ただ作ってもダメ
  2.4 実験授業は茶番劇
  2.5 ソフトが苦手,ハードが苦手
  2.6 電気電子技術者は特殊?
  2.7 極めれば理工系であり文系であり
  2.8 数学は言語
  2.9 一人で苦労してもたかが知れている
  2.10 計画的はエキスパートが成せる技
 第3章 わくわくするものづくり[松村 隆]
  3.1 幼い頃からのものづくり
  3.2 ミニ四駆から学ぶものづくり
  3.3 遊びから生まれる新技術
  3.4 身近な出来事が研究のヒント
  3.5 常識は見てきたようなウソをつく
 第4章 ロボットにみる工学のナカミ[鈴木 聡]
  4.1 ロボット・ことはじめ
  4.2 2足歩行ロボットの不安定な?安定歩行
  4.3 ”車”というロボット
  4.4 システムインテグレーション
  4.5 むすび
  参考文献
 第5章 デザインとはイメージをかたちにすること[岩城和哉]
  5.1 「もの」と「かたち」
  5.2 全体は部分の総和以上の何ものかである
  5.3 イメージをかたちにする
  5.4 イメージとかたちはずれている
  5.5 イメージはどこから湧いてくるのか?
  5.6 部分と全体
  5.7 建築のデザイン
  5.8 空間はスープのごとし
  5.9 シミュレーション
  5.10 空間作品をつくる
  5.11 そちく
  5.12 オリジナリティ
  5.13 ストロー
  5.14 PPバンド
  5.15 百聞は一見にしかず
  5.16 愚直に積み上げる
  5.17 快適な空間
  5.18 デザイン
第Ⅱ部 楽しい工学の世界
 第6章 実験はスキルアップの宝箱[松田七美男]
  6.1 データ処理を違えてはいけません
  6.2 実験報告書は本当に辛い?
  関連図書
 第7章 情報検索の仕方[土肥紳一]
  7.1 ポータルサイトの活用
  7.2 キーワード検索
  7.3 検索の例
  7.4 ウィキペディアの活用
  7.5 東京電機大学総合メディアセンターの図書サービス
  7.6 日本版「書籍データベース」構想
 第8章 文書や図の引用・転載と信頼性[土肥紳一]
  8.1 文章の引用
  8.2 図の引用
  8.3 表の引用
  8.4 新聞記事の引用
  8.5 ウィキの引用
  8.6 その他の注意
  8.7 転載
  8.8 信頼性
 第9章 技術者倫理と社会的責任[土肥紳一]
  9.1 ものづくり
  9.2 携帯電話
  9.3 ウィニー
  9.4 電子マネー
  9.5 デジタル万引き
  9.6 捏造(ねつぞう)
  9.7 ラベルの価値
  9.8 プレゼンテーションの内容
  9.9 情報倫理デジタルビデオ小品集
  9.10 その他の例
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