超伝導の基礎 第3版

超伝導の基礎 第3版
著者 丹羽 雅昭
ジャンル 自然科学
出版年月日 2009/03/01
ISBN 9784501624507
判型・ページ数 B5・524ページ
定価 本体5,600円+税
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

 超伝導現象がKamerlingh-Onnesに発見されて,昨年で90周年を迎えた.この間,超伝導に関する実験的,理論的研究は飛躍的な進歩を遂げた.初期に発見された金属単体に関しては,Bardeen-Cooper-Schrieffer(BCS)理論で見事に説明されることが広く認知されているが,近年,新しい超伝導物質(希土類化合物,酸化物,フラーレン,ホウ素化合物等々)が続々と発見されてくると,従来の理論の枠内で十分であるのかという疑問も生じてきた.このような状況にある現在は,過去の理論を再検討し,新たな理論の構築へと向かう時期にさしかかっているように思われる.したがって,従来型超伝導体(conventional superconductor)の標準理論であるBCS理論が確立されていくまでの発展過程を追体験することは,これから超伝導の分野で研究を志すものにとって非常に教訓的である.
 本書は,超伝導理論の発展過程から真に基礎的な事項を厳選し,そうして取り上げたテーマについては懇切,丁寧をモットーに記述した入門書兼サブテキストである.基礎的なテーマに限定したため,強結合超伝導体の理論,不純物効果の微視的理論,近接効果やAndreev反射,酸化物超伝導体に関して提唱されてきた新理論の紹介等々興味深い事柄については割愛せざるを得なかった.しかし,そのかわりに通常の専門書では省略されている計算過程は目で追っていくだけでも理解できるくらい詳しく書いておいた.このような方法をとったのは,読者の負担を軽減するとともに,数式の導出や変形等で昏迷してしまうよりもむしろ,その式の背後に横たわる物理的描象を明確にすることへ時間を費やして頂きたいと考えたからである.また,利用される数学的基礎知識については,巻末の付録で詳細に解説してあるから,他の書物を参考にしなくても,微積分と線形代数の初歩,および量子力学と統計物理学の知識があれば,本書は必ず読破できるであろう.ここに記述されている論理的な流れ,基本的な考え方を汲み取って,そこから斬新で画期的な理論を生み出される読者の現われんことを願っている.
 体裁をみて頂ければわかるように,本書は,LATEX2εで組版されている.したがって,内容についてはもちろん,誤植があればすべて筆者の責任であることをお断りしておく.チェックは十分行ったつもりであるが,気のつかれた点など,ご指摘頂ければ幸いである.
 この本の出版にあたり,元物質工学科教授,東京電機大学名誉教授 小川信二先生には,原稿を丁寧に査読して頂きました.心より感謝します.また,いろいろの面でお世話になりました東京電機大学出版局の植村八潮氏,徳富亨氏に謝意を表します.
 最後に,本書がまがりなりにも出版に漕ぎ着けられましたのは,ゼミ等で御指導を賜りました東京電機大学名誉教授 篠原正三先生のお陰であります.ここに,厚くお礼申し上げます.

西暦2002年2月
丹羽雅昭

第3版への序

 本書は2002年の初版以来,多くの読者に支えられ第2版まで重ねてこられたが,現時点で読み返してみると,不満足な箇所が目に付くようになってきた.特に,第8章でGreen関数法と銘打ってあるにもかかわらず,電子Green関数に偏った記述となり,従来型超伝導のもう一方の主役であるフォノンに関しては全然取り上げられていない点,座標表示のGreen関数に重点が置かれた記述になっているため,波数ベクトル表示については簡単に触れただけにとどまっている点である.そこで今回の改訂を機に,8.5節を新たに設けて,初期のBCS理論では単純な取り扱いしかされていなかった電子?フォノン相互作用をより精密化し,フォノンGreen関数を紹介することにした.そもそもGreen関数は,数学的には非斉次微分方程式の解を求めるために導入されたものであり,このようにすることで,電子?フォノン相互作業下での電子およびフォノンに関する方程式を解く道具としてのGreen関数の意味がより明確になったのではないかと思われる.とはいうものの,具体的に方程式を逐次近似で解くことまでは行っていない.それには,Feynmanダイヤグラムに代表される多体問題の技巧が必要になるが,頁数の関係上許されなかった.その点に関して巻末に挙げてある文献96)の第7章,102)の第10章,218),220),223)を参照していただきたい.
 更に,電磁気学に関する物理量および式の表現が,本書で用いられているCGS-Gauss単位系と他の書物で使われているMKSA(SI)単位系で異なるために混乱をきたすという読者の声にお答えして,付録Fに両者の対応表を掲げることにした.加えて,常用される数学定数の詳しい値を与え,便宜をはかった.
 この第3版ではより使い勝手のよい書物にしようと様々な試みを行ったが,まだまだ至らない箇所,独りよがりや誤りがあるであろう.前版同様,ご意見,ご教示いただければ幸いである.
 最後に,今回の出版に際し有益な助言を頂いた東京電機大学出版局の植村八潮氏,吉田拓歩氏に感謝申し上げたい.
 2008年12月
 丹羽雅昭
第1章 超伝導研究史
第2章 超伝導の実験事実
 2.1 完全電気伝導性
 2.2 完全反磁性
 2.3 臨界磁場
 2.4 比熱
 2.5 熱電気効果
 2.6 永久電流・フラクソイドの量子化
 2.7 Josephson効果
第3章 超伝導の現象論I?初期の理論
 3.1 超伝導体の熱力学
 3.2 Gorter-Casimirの2流体モデル
 3.3 Londonの現象論
  3.3.1 London方程式
  3.3.2 London方程式の解
   [ I ]板状超伝導体
   [ II ]円筒状超伝導体
   [ III ]球状超伝導体
   3.3.3 London理論の物理的意義
 3.4 Pippardの現象論
第4章 超伝導の現象論II?GL理論
 4.1 相転移に関するLandauの一般論
   [ I ]α4>0の場合
   [ II ]α4=0の場合
   [ III ]α4<0の場合
 4.2 超伝導のGinzburg-Landau自由エネルギー
 4.3 Ginzburg-Landau方程式
  4.3.1 Ginzburg-Landau方程式の導出
  4.3.2 Ginzburg-Landau方程式の極形式
  4.3.3 磁場のない場合のGL方程式
 4.4 GL理論における2つの特性長さ
 4.5 GLパラメータと無次元化されたGL方程式
  4.5.1 Ginzburg-Landauパラメータ
  4.5.2 無次元化されたGinzburg-Landau方程式
 4.6 フラクソイドの量子化
 4.7 表面エネルギー
   [ I ]κ≪1の場合
   [ II ]κ≫1の場合

第5章 2種類の超伝導体の磁気的振る舞い
 5.1 第I種超伝導体の磁化過程
 5.2 反磁場係数
   [ I ] 円筒状超伝導体の場合
   [ II ] 球状超伝導体の場合
 5.3 中間状態
   [ I ] 球状超伝導体の場合
   [ II ] 板状超伝導体の場合
 5.4 第II種超伝導体の磁化過程
 5.5 第II種超伝導体における臨界磁場と混合状態
  5.5.1 下部臨界磁場
  5.5.2 Londonモデルにおける下部臨界磁場
  5.5.3 上部臨界磁場
  5.5.4 混合状態
   [ I ]Hc1からのアプローチ
   [ II ]Hc2からのアプローチ
 5.6 渦糸の運動
  5.6.1 渦糸に作用する力
  5.6.2 磁束フロー状態
 5.7 渦糸のピン止め
  5.7.1 ピン止めと磁束クリープ
  5.7.2 Anderson-Kim理論
第6章 微視的理論への準備
 6.1 第2量子化
  6.1.1 Bose粒子に対する数演算子
  6.1.2 Fermi粒子に対する数演算子
  6.1.3 場の演算子
   [ I ]Bose場の演算子
   [ II ]Fermi場の演算子
  6.1.4 場の量子論における3つの描像
 6.2 自由粒子系の性質
  6.2.1 統計力学の復習
  6.2.2 自由粒子の分配関数と分布関数
   [ I ]Bose粒子の場合
   [ II ]Fermi粒子の場合
  6.2.3 状態密度
  6.2.4 自由Bose粒子系の性質
  6.2.5 自由Fermi粒子系の性質
 6.3 電子?フォノン相互作用
  6.3.1 格子振動
  6.3.2 格子振動の量子化?フォノン
  6.3.3 遮蔽効果
  6.3.4 電子?フォノン相互作用
第7章 超伝導の微視的理論I?BCS-Bogoliubov理論
 7.1 電子間の引力相互作用
 7.2 Cooper対
 7.3 対演算子
 7.4 BCS基底状態
 7.5 BCS還元ハミルトニアンと基底状態エネルギー
 7.6 励起状態
  7.6.1 1粒子励起エネルギー
  7.6.2 Bogoliubov-Valatin変換
 7.7 超伝導状態における熱力学的性質
  7.7.1 平均場近似
  7.7.2 有限温度におけるギャップ関数の振る舞い
  7.7.3 超伝導状態における熱力学的物理量の計算
 7.8 準粒子の遷移過程
  7.8.1 準粒子に対する状態密度
  7.8.2 外場に対する超伝導体の振る舞い
 7.9 超伝導体の電磁力学
  7.9.1 弱い磁場に対する電子系の線形応答
  7.9.2 完全反磁性の条件
  7.9.3 London超伝導体による電磁波の吸収
  7.9.4 Meissner効果に対する微視的理論
第8章 超伝導の微視的理論II?Green関数法
 8.1 Green関数
  8.1.1 数学的定義
  8.1.2 物理的定義
 8.2 有限温度におけるGreen関数
 8.3 超伝導のGor'kov理論
  8.3.1 一般的定式化
  8.3.2 空間的に一様な場合の解
 8.4 Ginzburg-Landau方程式の微視的理論からの導出
 8.5 BCS理論の拡張
  8.5.1 電子?フォノン相互作用の精密化
  8.5.2 Coulomb反発相互作用の転移温度に及ぼす準粒子トンネル
第9章 超伝導体におけるトンネル効果
 9.1 量子力学的トンネル効果
 9.2 常伝導体/絶縁体/常伝導体接合
 9.3 常伝導体/絶縁体/超伝導体接合
 9.4 超伝導体/絶縁体/超伝導体接合における準粒子トンネル
 9.5 Josephson効果
  9.5.1 Josephson効果の現象論
  9.5.2 Josephson接合のエネルギー
  9.5.3 ゲージ不変な位相差
  9.5.4 磁場下にある単一Josephson接合
   [ I ]トンネル電流が反磁性電流に比べ無視できる場合
   [ II ]トンネル電流が反磁性電流に比べ無視できない場合
   [ III ]位相差が時間に依存する場合
  9.5.5 2つの並列Josephson接合系?SQUIDの原理
  9.5.6 Josephson効果の微視的理論
付録A 複素関数概論
 A.1 複素数と複素関数
 A.2 複素関数の微分
 A.3 複素積分
 A.4 留数公式と留数定理の定積分への応用例
付録B 特殊関数I
 B.1  ガンマ関数,ベータ関数,ディ・ガンマ関数
  B.1.1 ガンマ関数
  B.1.2 ベータ関数
  B.1.3 半整数値を変数とするガンマ関数
  B.1.4 D次元球の体積と表面積の公式
  B.1.5 ガンマ関数の無限乗積表現
  B.1.6 ディ・ガンマ関数
 B.2 Riemannのゼータ関数とAppell関数
  B.2.1 Riemannのゼータ関数
  B.2.2 Appell関数
付録C 特殊関数II
 C.1 Bessel方程式とBessel関数
 C.2 Bessel関数の漸化式と微分公式
 C.3 Bessel関数の母関数
 C.4 変形Bessel関数
 C.5 球Bessel関数
付録D BCS理論で用いられる積分公式,級数公式の証明
付録E 楕円積分と楕円関数
 E.1 楕円積分
 E.2 楕円関数
  E.2.1 Jacobiの楕円関数
  E.2.2 振幅関数
  E.2.3 Jacobiの楕円関数の微分公式
  E.2.4 楕円関数の一般的定義
  E.2.5 楕円■(テータ)関数
  E.2.6 式(5.213)の証明
付録F 単位系と物理定数表・数学定数
 F.1 CGS-Gauss単位系とMKSA単位系
 F.2 物理定数表
 F.3 数学定数
参考文献
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