未来科学と教育戦略

東京電機大学のシステムデザイン

未来科学と教育戦略
著者 東京電機大学経営企画室
ジャンル 社会科学
出版年月日 2006/06/01
ISBN 9784501621407
判型・ページ数 4-6・216ページ
定価 本体1,600円+税
在庫 在庫あり

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理想の教育を目指す東京電機大学の挑戦

 資源の貧しいわが国において、世界に冠たる日本の技術力を支えてきたのは、<優れた科学技術者>である。とくに第二次世界大戦後の復興期から東京オリンピックが開催された1960年代、1970年代の高度経済成長期、さらに1980年代前半にかけては、尽きることのない人材需要に応えるために、大学を中心とした工学教育による、多くの技術者の育成と輩出が行われてきた。この結果、大学等の急速な規模の拡張が行われ、とりわけ理工系は他分野に比して著しい成長ととげた。
 その後の日本は、国際化、情報化の急速な進展に伴い、海外への技術流出が始まり、産業の空洞化を迎えることになる。いわゆる「失われた十年」を経験した。それでも日本の大学は、文部省(現文部科学省)の護送船団に護られながら、18歳人口の急増期に合わせて規模を拡張させてきた。少なくとも大学では、18歳人口が急減し始めた1990年代においても、いわゆる「バブル時代」が続いていたのである。
 18歳人口が1992年に205万人というピークを経た後は、一転して急減期を迎えたにもかかわらず、多くの大学が適正規模へ適応する術とタイミングを見失ったといえる。
 この間、工学分野では学際化が進行し、一つの分野を専攻すれば技術者として足りるという時代は終焉した。手先の器用な日本人特有の<ものづくり>精神は、もはや世界に通用しない。いま、工学技術者に求められているのは、複数の<ものづくり>分野を「インテグレートする能力」や、「工学をシステムとしてデザインする能力」である。工学教育が果たすべき役割が変容したともいえる。
 今や、<大学改革>は花盛りである。改革を実行していない、あるいは改革しようとしない大学の末路は閉校、解散、合併、統合以外には道は残されていない。
 本書の副タイトルを「東京電機大学のシステムデザイン」としたのも、従来の学部・学科の枠が、学際化・システム化に対応しきれずに、不適応を起こしてきたのではないかという反省から、2007年の創立百周年を機に実行する教育戦略の総括書であるという位置づけからである。
 東京電機大学においては、遅ればせながら他のいかなる大学も追随できないという自負を持ち、極めてドラスティックな大学改革を実行することを決意した。すなわち、第一フェーズとして2007年4月に神田キャンパスに「未来科学部」を新設すると同時に、既設の全学部・学科のスクラップ&ビルドを行う。次に実施する第二フェーズ、第三フェーズと、本学は未来永劫、常に進化し、時代のニーズに合致する「柔構造の組織体」として生まれ変わろうとしている。
 本書は改革に際してとかく見失われがちなこと、すなわち「東京電機大学は、どのような伝統を有し、どのような大学であったのか。」そして今は「どのような大学であり、これからどのような大学に変わろうとしているのか。」その全容を電機学校の設立時までさかのぼり、世に示し、意識共有に際してのメルクマールとなることをも願って発行するものである。
 本学は工学分野の学際化の進展と大学進学適齢人口の恒常的な減少期において、既存の学部・学科組織を温存しながら、それらを抜本的に再編成することなく、新たな学部・学科を設置してきたいわゆる拡充政策をとってきた。その結果は、本文中にも触れてあるが、入学志願者数の漸減から急減を迎える時期に、拡張した器に入る水がない、すなわち「渇水の危機」にさらされることとなった。
 私たち「東京電機大学人」は、このような危機意識をしっかりと認識しつつも、むしろこれをスプリングボードとして、本学の歴史が始まって以来の大規模な改編を実行することを全教職員の心を一つにして決断した。この改革は、本学発祥の電機学校の設立時と、それに続く当時の工業教育への熱意を改めて呼び起こし、原点に回帰し、未来に向かって成長しようとするものである。すなわち、学生、教職員、学生の父母、卒業生等を含むすべての東京電機大学人が心を一つにして、かつて掲げた理想教育の精神、「生徒第一主義」、「教育最優先主義」、「実学重視」、そして「技術は人なり」を改めて21世紀の教育にふさわしい形で再現しようとしているのである。
 高度情報化社会、高年齢化社会を迎え、時代のニーズも刻々と変わりつつあるなかで、東京電機大学は「いかなる変化も受け止めて、柔軟に持続しながら発展していく」ことを目指すものである。私たちの後に続く世代へ引き継ぐべきこと、それは「人類がいかにして快適で安全で、安心しながら生活できるか」を実現することである。そのための人材を育成することが本学の使命である。私たち「東京電機大学人」が目指すところが、「新たな姿」として思い描いていただければ、この本の役割は達成できたといってもよい。
 本書ができる限り多くの人の目に触れ、これからの工学教育を考えるうえでヒントになれば、関係者一同、望外の喜びである。
2006年4月28日
執筆者を代表して 経営企画室長 大松 雅憲
第一章 日本の経済、社会の発展を支えた科学技術と教育
 (1節)戦後高度経済成長期の日本
 (2節)ジャパン・アズ・ナンバーワンの終焉
 (3節)小中学生の理数科離れ、学力の低下
 (4節)「ゆとり教育」の弊害と効用
 (5節)危惧される科学技術創造立国日本の将来

第二章 日本の高等教育の源流と変遷
 (1節)日本の高等教育黎明期
 (2節)私立高等教育機関の出現
 (3節)電機学校設立時の状況
 (4節)世界の高等教育の歴史
 (5節)学制改革と戦後高等教育
 (6節)私立大学における専門分野 ?特に工学分野
 (7節)私立学校振興助成法の施行
 (8節)臨時教育審議会の答申と大学改革の進展
 (9節)大学審議会と規制緩和
 (10節)大学と産業界との連携
 (11節)今、私たちに求められていること

第三章 理想の教育を目指して ?明治40年の学園創立プロジェクト
 (1節)「電機学校」の創立 ?理想の教育を目指して
 (2節)今日につながる「三つの大きな柱」
 (3節)生徒第一主義
 (4節)教育最優先
 (5節)実学重視
 (6節)学校発展にむけた挑戦
 (7節)三つの主義で実る成果 ?校勢の拡大

第四章 学長が語る21世紀の大学
 (1項)大学の使命は知の継承と創生
 (2項)20歳の学生にとっての50年後の科学技術
 (3項)式辞は学長の大事な仕事
 (4項)20歳だった頃を振り返って
 (5項)感性の科学技術を目指そう
 (6項)大学が社会の価値観を変える
 (7項)TDUイノベーション
 (8項)21世紀の東京電機大学の教育戦略
 (9項)工学とは目的をもってデザインすること
 (10項)情報環境学部の取組み
 (11項)eラーニングの概念を変える
 (12項)大学で学ぶことは何か?

第五章 未来を目指した全学改編
 (1節)「第三の大学改革」の幕開け
 (2節)教育・研究分野の再構築
 (3節)学部の改編

第六章 本学独自の教育・研究システム事例
 (1節)世界制覇を目指すFormula SAE プロジェクト
 (2節)文部科学省特色GP「学生・教育最優先の方針」が評価
 (3節)文部科学省現代GP「プロジェクト科目を核とした産学連携」
 (4節)ソーラー電気自動車を世界で実証実験
 (5節)21世紀COEプログラム 実際に役立つ技術を研究・開発し、教育に反映

第七章 理事長が語る学園の理念
 (1節)「東京電機大学人」への願い
 (2節)東京電機大学の基本とは何か
 (3節)なぜ変革が必要なのか?
 (4節)われわれの原点へ戻ろう
 (5節)再生から飛躍へ
 (6節)超我の奉仕
 (7節)学生が活き活きしている大学へ

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