免震構造と積層ゴムの基礎理論

免震構造と積層ゴムの基礎理論
著者 ジェームズ M. ケリー
日本振動技術協会
藤田 隆史 監訳
藤田 聡
正木 信男
鈴木 重信
井上 清孝
加藤 隆一
坂口 達
佐々木 頼孝
ジャンル その他
出版年月日 2005/11/01
ISBN 9784501621100
判型・ページ数 A5・248ページ
定価 本体3,800円+税
在庫 品切れ・重版未定

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積層ゴムによる免振を理論的に解析

 著者が地震被害から建物を守るための方法として積層ゴムを利用する事に関与しはじめたのは1976年のことであった。その当時,著者は同じ目的でエネルギー吸収装置の開発に携わっていた。そこで開発し実験を行っていた装置は,最終的にはステッピング構造の橋脚に採用されたが,これは部分免震の考え方を取り入れた物であった。そして,これらのエネルギー吸収装置を建物の耐震性向上に用いるためには,免震装置と併用することでエネルギー吸収装置自身に十分なヒステリシスを描かせるための大きな変形を生じさせることが最善であると確信するに至った。
 まさにちょうどその頃,当時マレーシアゴム製造者研究協会[以下MRPRA(Malaysian Rubber Producer’s Research Association)と略す]のC.J.Derham博士から天然ゴムを用いた積層ゴムがどの程度まで地震被害から建物を守ることができるか検証するために,カリフォルニア大学バークレー校地震工学研究センターの地震シミュレーター研究室において振動台実験を実施する可能性について検討することに興味があるかどうか打診された。このミーティングの直後,20トンの供試体と手作りのアイソレーターを用いて実験を行った。この初期の実験から得られた結果は極めて有望なものであった。よって,それに引き続き,実用に供し得る積層ゴムで免震支持された,より現実的な40トン5層の建物モデルを用いてさらなる実験が行われた。両実験においては,免震系に減衰を付与するための様々なタイプのエネルギー吸収装置を併用する場合としない場合について実験が繰り返された。ここで用いられたエネルギー吸収装置は,オイルダンパー,摩擦ダンパーと鉛や軟鋼の弾塑性変形を利用したものであった。この試験の結果,免震装置に付加的な減衰を付与する場合,必ずしも減衰の増加が上部構造物の応答の低減にはつながらないことが判明した。それどころか,これらのエネルギー吸収装置は上部構造物の高次モードの応答加速度を増大させることさえあることが示された。この実験により,過大な減衰は必要なく,むしろ有害ですらあることが明らかになり,免震装置に減衰を付与するには積層ゴムのゴムコンパウンド自身に減衰効果を持たせることが最善であることが明確になった。
 本書では主に高減衰天然ゴム材料を用いた免震装置について示すが,結果は例えばネオプレンゴムやエチレンプロピレンゴム(EPDM:耐熱性,耐候性に優れており,通常ホース,建築資材などに使われている)を用いた装置にも適用することができるものである。天然ゴムコンパウンドの研究開発の大部分は,前述のMRPRAによって行われた。
 積層ゴム自体,固体力学分野での魅力ある研究課題であるが,ここではほんの少ししか触れないことにする。というのも,積層ゴムの力学的研究のほとんどは,A.G.Thomas博士の指導のもとMRPRAにおいて実施されてしまっているからである。この15年間,カリフォルニア大学バークレー校地震工学研究センターで大学院生らは私と共に,積層ゴムの力学について,免震構造物の動力学について,そして装置の設計についての研究に従事してきた。これらの理論的,実験的な研究はこの免震技術というものを構造工学の専門家に認知させるための手段であった。
 本書では天然ゴムを用いた積層ゴムについてのみ紹介するが,このタイプの免震装置だけが市場に出回っており使用可能であるとは考えないでいただきたい。事実,ほとんどの免震装置は積層ゴムをばね要素としてのみ用いており,軟鋼棒や鉛プラグやその他の減衰装置と併用して用いられている。筆者の意見としては,これらの付加的な要素を併用する装置は最終的に陳腐化し,標準的な免震装置は積層ゴムのみで構成されるものになると考えている。しかしながら,これを書いている今この時さえ,この分野は非常に早く進歩/変化していることから,読者が本書を読む頃には別のタイプの免震装置が現れているかもしれない。
 本書は構造動力学の素養を持ち,構造力学に興味のある構造技術者のために書かれている。本書における解析のほとんどは,他の種類の免震装置にも適用できるであろうし,その規準/指針における要求事項はすべての装置にも当てはまると考えられる。構造技術者が免震建物を設計する際に従わなければならない設計指針に関する内容は本書に取り込んだが,橋梁に積層ゴムを適用する際に指針の要求事項に関してはここでは省いた。なぜなら,筆者の意見としては,橋梁支承に対する多くの指針での要求事項が免震装置に適用されたなら,構造技術者が免震装置をこれほど効果的にしているゴムの特殊な特性を使うことができなくなるであろう。
 本書で示されているこの免震技術は,病院,緊急オペレーションセンターや原子力発電所といった重要度の高い建物の被害地震対策を実現する上で,低コストで,信頼性の高い方法を探している構造技術者にとって正に理想的なものである。さらに,国連工業開発機構[UNIDO(the United Nations Industrial Development Organization)]からの資金援助による近年の確証プロジェクトでは,免震が開発途上国における住宅や学校に対して極めて高い適用可能性を有していることを実証した。もし本書が免震に異を唱える多くの現代の構造技術者の偏見を払拭でき,加えて,構造物の地震被害低減のためにこの革新的技術を彼らが採用する助けとなったとき,この目的は達成されたことになる。
第1章 耐震設計のための免震
第2章 振動絶縁
 2.1 はじめに
 2.2 振動絶縁の理由
 2.3 すべり系振動絶縁装置
第3章 免震
 3.1 基礎固定構造物の解析の再検討
 3.2 免震の線形理論
 3.3 柔軟構造物の免震
第4章 建物への理論の拡張
 4.1 多自由度の運動方程式
 4.2 他自由度系のモード解析
 4.3 他自由度系の変位と力の推定
第5章 免震建物の水平応用とねじれ応答の連成
 5.1 はじめに
 5.2 ケースⅠ:三つの固有周波数が近接する場合
 5.3 ケースⅡ:並進振動数が等しく,ねじれ振動数が異なる場合
第6章 積層ゴムの圧縮と曲げ
 6.1 はじめに
 6.2 圧縮により生じるせん断応力
 6.3 単層パッドの曲げ剛性
 6.4 大きな形状係数の単層パッドの単純圧縮
 6.5 大きな形状係数の円形パッドの圧縮剛性
 6.6 大きな形状係数の正方形パッドの圧縮剛性
 6.7 大きな形状係数の単層パッドの曲げ剛性
第7章 積層ゴム支承の座屈
 7.1 積層ゴム支承の安定性
 7.2 環状支承の安定性解析
 7.3 せん断剛性の鉛直荷重依存性
 7.4 支承頂部の沈み込み量
 7.5 支承座屈の単純な機械的モデル
 7.6 座屈後の挙動
 7.7 支承の減衰特性への鉛直荷重の影響
 7.8 ロールアウト安定性
第8章 積層ゴム支承の設計法
 8.1 支承の予備設計法
 8.2 積層ゴム特性の実験的検討
 8.3 コンパクトな設計の支承
あとがき
付録A:米国における免震建築物の耐震規準
付録B:免震構造物解析用のコンピュータプログラム
参考文献
監訳にあたって
索引

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