確率モデルの基礎

金融工学を視野に入れた確率論的考え方

確率モデルの基礎
著者 遠藤 靖
ジャンル その他
出版年月日 2002/05/01
ISBN 9784501619404
判型・ページ数 A5・356ページ
定価 本体4,200円+税
在庫 品切れ・重版未定

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金融工学に不可欠な確率モデルを平易に解説した

 「ファイナンスのための確率微分方程式」などの金融工学関連書籍を理解するために必要な「確率モデル」を基礎から解説.高校数学でも扱うごく初歩的な集合演算から解説を始めているので,数学の専門的な知識を前提とせずに読み進めることができる.また,第10章で株価モデルを論じているように,金融工学への導入までを視野に入れた内容としている.ファイナンスを学ぶ学生や業務とするビジネスマンのための一冊である.

 本書は確率モデル---確率現象を数学的に表現したモデル---をあつかうための基礎に主眼をおいて書かれています.つまり確率論・確率過程の入門書です.工学や経営科学,物理学や社会科学など,さまざまな分野で発生する確率現象にアタックを試みる読者諸兄にたいして基礎的な道具を提供することを目的としている.とくに,最近の金融工学における価格過程などを視野に入れています.
 確率論はほとんどの場合,二つのステップを踏んで学んでいるように思います.第一ステップでは初等的で,厳密ではないが教導的で,直感的に対象とする現象について確率的な思考ができるようにすること.第二ステップでは測度論的な道具を使って確率論を数学的により厳密に展開ができ,現象をモデル化できるようになること.前者は主に学部の初めに教養あるいは基礎教科として学び,後者は学部の終りから大学院の初めに習得することが多いようです.ところが著者の経験からすると,前者から後者への移行にはかなりの努力と忍耐が必要です.そこで,本書は主としてこの橋渡しをめざしています.ところどころに直感的な理解の助けとなるように,簡単な例を挙げたり,コンピュータシュミレーションの結果などにより視覚化している.
 もともと本書は,経営システム工学系の学部・大学院の講義ノートを下敷きにして教科書を念頭においてはいますが,独学で挑戦する読者にも理解できるように構成されています.組み合わせ論的な確率論から一歩踏み出すのはなかなか骨の折れることですが,たとえば,ブラックー=ショールズ公式をより深く理解するためには流さなければならない汗ともいえるでしょう.
 確率論的考え方が親しまれない一つの理由として,これまでに慣れ親しんだ確定的・決定論的方法があまりにも強力な思考方法として染み込んでいるからではないかと思われます.そこに確率論的思考方法を差し挟むにはかなりの抵抗があるので,まずは確定的・決定論的方法とは補完的なものと位置付けて,並列した考え方として理解するように努めたほうがよいかも知れません.そのうえで,再度,両者を高位から眺めてみるのがよいでしょう.
 一度,自転車に乗ることをおぼえると二度と忘れないものです.泳ぎもそうです.これは確率論的な考え方にもあてはまります.いったん身につけることが大事で,そうすればさまざまな現象に遭遇したとき,大した努力もなしに自然に対処できるようになるでしょう.とくに,不透明で不確定な現象に晒されている現代人にあっては大事なことです.流した汗は必ず報われると確信して頑張りましょう.よい汗を流せたと実感できたらしめたものです.
 さて,本書はつぎのような構成になっています.第1章では,後の章で必要となる集合論の基礎的な概念を述べ,第2章と第3章では,確率現象を記述するための基盤となる確率空間と,その上で定義された関数である確率変数について考える.第4章では確率変数の一つの特性値である期待値の定義を与る.第5章では独立性と従属性について考え,第6章では独立確率変数列に関する2・3の重要な定理を述べる.第7章では比較的単純な点過程を導入し,第8章では Markov過程を紹介する.第9章では本書の主要課題の一つであるBrown運動について学ぶ.第10章では,第9章までに学んだことをもとにして,金融工学で基本となる価格過程の基礎について述べる.
 終りに,著者の力不足で粗略な点や不備な箇所などあろうかと思いますが,読者諸兄のあたたかいご意見やご叱正をお願いします.本書の出版には多くの人たちの協力や励ましがありました.とくに,グラフは学部生の出町和也君と院生の根岸幸仁君の労作です.また,東京電機大学出版局の菊地雅之氏には,はじめから終わりまで原稿のスケジュール管理や何やかやとお世話になりました.みなさまに心より感謝申しあげます.

2001年12月 東京にて
著者
第1章 集合と位相
1.1 集合および集合上の関係
  1.1.1 集合演算
  1.1.2 直積
  1.1.3 対応
  1.1.4 写像
  1.1.5 順序関係
  1.1.6 同値関係
  1.1.7 同値類,商集合
1.2 距離空間と位相空間
  1.2.1 距離空間と位相空間
  1.2.2 n次元Euclid空間Rnにおける開集合と閉集合
  1.2.3 位相空間
練習問題
第2章 確率空間
2.1 可測空間
  2.1.1 集合体
  2.1.2 σ-集合体
  2.1.3 σ-集合体の生成
  2.1.4 Borel集合体
2.2 直積σ-集合体
2.3 確率測度
  2.3.1 確率測度の定義
  2.3.2 確率測度の性質
  2.3.3 確率測度の完備化
練習問題
第3章 確率変数
3.1 可測関数
  3.1.1 可測関数
  3.1.2単関数
3.2 確率変数
  3.2.1 確率変数と分布変数
  3.2.2 離散確率変数と連続確率変数
  3.2.3 クオンタイル関数
  3.2.4 多変数の確率分布関数
3.3 確率変数列の収束
  3.3.1 確率変数列の概収束
  3.3.2 確率変数列の確率収束
練習問題
第4章 期待値
4.1 期待値の定義
  4.1.1 非負単関数の期待値
  4.1.2 非負確率変数の期待値
  4.1.3 確率変数の期待値
  4.1.4 可測部分集合上の期待値
4.2 確率変数列の極限とその期待値
4.3 期待値の基本的性質
  4.3.1 分散と共分散
  4.3.2 確率分布関数による期待値の表現
  4.3.3 期待値に関する不等式
  4.3.4 Cebysevの不等式
4.4 多次元確率変数の期待値
4.5 確率変数の特性関数
  4.5.1 一意性の定理
  4.5.2 特性関数モーメント
  4.5.3 積率母関数
練習問題
第5章 独立性と条件つき期待値
5.1 独立性  5.1.1 独立性の定義
  5.1.2 独立確率変数の和の分布
5.2 条件つき期待値
  5.2.1 初等的な条件つき期待値
  5.2.2 一般的な条件つき期待値
  5.2.3 条件つき分散
  5.2.4 条件つき期待値の射影的性質
練習問題
第6章 独立確率変数列
6.1 大数法則
  6.1.1 大数の弱法則
  6.1.2 大数の強法則
6.2 中心極限定理
練習問題
第7章 確率点過程
7.1 確率過程
  7.1.1 確率過程の定義と構成
7.2 Poisson過程
  7.2.1 計数過程
  7.2.2 Poisson過程
  7.2.3 到着間隔と待ち時間の分布
  7.2.4 到着時刻の条件つき分布
7.3 再生過程
  7.3.1 定義と基本的性質
  7.3.2 極限定理
  7.3.3 Waldの方程式
  7.3.4 再生定理
7.4 ランダムウォーク
  7.4.1 対称ランダムウォーク
練習問題
第8章 Marcov連鎖
8.1 Marcov連鎖の定義
8.2 Chapman-Kolmogorovの方程式
8.3 状態のクラス分け
8.4 極限定理
8.5 分布過程
8.6 有限Marcov過程
  8.6.1 推移確率行列の標準形
  8.6.2 Markov連鎖の分類
  8.6.3 吸収的Markov連鎖
練習問題
第9章 Brown運動
9.1 Brown運動
  9.1.1 Brown運動の定義
9.2 見本関数の性質
  9.2.1 自己相似性
  9.2.2 微分不可能性
  9.2.3 非有界変分性
9.3 Brown運動の構成
  9.3.1 Parey-Wiener表現
  9.3.2 P.Levyの構成法
9.4 Brown運動のMarkov性
  9.4.1 マルチンゲール
  9.4.2 マルチンゲール変換
  9.4.3 Brown運動のマルチンゲール変換
9.5 Brown運動から生成される過程
練習問題
第10章 株価過程モデル
10.1 ランダムウォークモデル
  10.1.1 二項モデル
10.2 幾何Brown運動モデル
  10.2.1 Bachelierモデル
  10.2.2 Samuelsonモデル
  10.2.3 可変ボラティリティモデル
付録A 練習問題の略解
付録B 記号
付録C 補足
C.1 上限・下限
C.2 上極限・下極限・極限
C.3 無限積と指数関数のTaylor展開
C.4 Gilvenkoの定理
C.5 Radon-Nikodymの定理
付録D 確率分布
付録E 参考図書について
     参考図書
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