ワトソン 遺伝子の分子生物学(下) 第4版

ワトソン 遺伝子の分子生物学(下) 第4版
著者 J. ワトソン 他著
松原 謙一 監訳
中村 圭子 監訳
三浦 謹一郎 監訳
菊池 京子
滝田 郁子
今成 啓子
滋賀 陽子
田口 マミ子
ジャンル 自然科学
出版年月日 2001/03/01
ISBN 9784501618506
判型・ページ数 A4変・746ページ
定価 本体6,400円+税
在庫 品切れ・重版未定

この本に関するお問い合わせ・感想

生命工学の先駆けをなした名著.研究者必携

 生命科学の先駆けをなした誉れ高い名著。第3版から12年の歳月の間にめざましい進展を遂げた最新の情報を取り込み,1988年に改訂された第4版の翻訳。
 これから分子生物学を学ぼうという学生だけでなく,専門の研究者やバイオテクノロジーの携わる技術者にも役立つ情報を満載。本学生命工学科の立ち上がりに大きく寄与。
 教科書を超え,生命科学・分子生物学の過去・現在・未来を展望する普遍性。上下巻で図版・写真850点,表85点等,豊富なデータや様々な実験が紹介される。
 翻訳がまたこれ日本を代表する科学者3名の監訳を得た,格調高い日本語。人類の到達した科学の最前線と,文化の極みに立つ,当出版局の至宝的出版となるだろう。

■序
 今日では,分子生物学者といえども遺伝子に関する重要な事実をすべて知っているというわけにはいかない。『遺伝子の分子生物学』の第1版 が出された1965年には事情が違っていた。当時は分子生物学者は少なく,学ぶべき事実もそれほど多くはなかった。したがってわれわれのもっているDNA とRNAに関する知識を,大学初級の学生にも簡単に説明できた。それは,遺伝コードの最後のコドンが決められた年であり,当時は第一線の研究者全員がコールド・スプリング・ハーバーの小さな講堂に定期的に集まれたものだった。第2版が出された5年後には,集まる人数が急速にふえていた。しかし,分子生物学に人気がでてきたとはいえ,その前途は,二重らせん発見直後の数年のような知的刺激に満ちたものになるかどうかはまだはっきりしていなかった。リプレッサーがはじめて単離され,これがDNAの調節配列に特異的結合をすることが実証されたとき,DNA研究の先駆者たちの中には,初期の発見の歳月は終わったと感じた人が少なくなかった。高等生物の遺伝子を単離する方法はなかったし,ましてやその塩基配列を知る手段もなかったので,遺伝子が多細胞生物の分化にどのように関与するかを理解するまでの道のりは途方もなく遠く見えた。
 幸いこのような心配は長くは続かなかった。『遺伝子の分子生物学』の第3版が出版されたとき(1976年)には,組換えDNA技術が遺伝子クローニングを可能にしていた。さらに,長い一続きのDNAの塩基配列を迅速に決定する信頼性の高い方法が,まもなく利用できるようになると期待できる状態だった。しかし,このような分子生物学にとって新時代が始まった最初には,組換えDNA技術が危険な病原性のある新生物を作りだすかもしれないという懸念の声が広くあがった。熟考ののち,1977年になってはじめて高等生物の遺伝子クローニングが正式に始められた。第3版では,組換えDNA技術の可能性にわずかに言及できたにすぎない。当然の結果として,真核生物での遺伝子の働きについて短い議論はしてあるが,まだ一時的で,ときにはかなり仮説も入っていた。
 組換えDNA革命の驚くべき成果を示せたのは,この第4版がはじめてである。今では,遺伝子の構造や機能に関する実験は,ほとんどが遺伝子クローニングと塩基配列決定法も用いずには行えないといってもよい。その結果,成果をあげても,あっという間に次の重要な新事実が出てくるという状況になっている。本書で扱った科学的事実は,人類の達成したすばらしい成果といえる。
 今日では,遺伝子に関する研究といっても非常に広範にわたるため,自分自身が全力を注いで研究している領域以外には,権威をもって話すことができなくなっている。最初にも述べたように,第4版の執筆は,ほかにもやらねばならぬ仕事をもつ一科学者の手には負えないと考え,数人の著者で準備を始めた。われわれには,本書を手ごろな長さにまとめるのはむずかしいということもわかっていた。判型を大きくしても,1000ページをこえることが予想された。DNA は,もはやキャンパスでの持ち運びに手ごろな本におさめるには,壮大になりすぎたのである。前置き的な最初の8章を削除して短縮することはできただろうが,この方法を本気で取り上げるつもりはなかった。それでは,第3版までの大勢の読者が評価してくれた基本的事がらが消えてしまい,これから分子生物学を学ぶたくさんの人々が,本書を遺伝子の構造と機能についての真の入門書として利用できなくなるからである。
 こうして書き終えてみると,当初考えていたよりさらに長くなってしまっていた。そうなった理由の1つは,完成が予定より2年遅れ,最新の情報の記載にさらに150ページを要したためである。しかも,われわれは真核細胞の複雑さの裏にある途方もなく多様な遺伝子構造と機能を述べるのに,どのくらい多くの言葉や図が必要かを過小評価していた。そこで,第4版は内容を大きく2つに分けた。第VIII部までには,原核生物と真核生物の遺伝子の構造と機能を支配する一般的原則を入れた。これだけで学部学生の1学期間の分子生物学の教科書として利用できる。後半は多細胞生物の遺伝子の特殊面に重点を置き,DNAの進化を論じる章でしめくくった。本書では後半は前半よりもかなり短くなっているが,今後の改版ではそうはいかないだろう。ついにDNAのレベルで分化の研究が可能になった今では,多細胞生物の特殊化した細胞での遺伝子の編成と発現のしくみの記述でさえも前半以上の分量が必要になるときが来るに違いないからである。
 この新しい第4版も,第3版までと同様学部学生向けの授業の教科書になると思う。また,分子生物学者にとっては遺伝子に関する基本的な事実を確かめる簡明な教科書になると信じている。校閲者一覧に記載されているさまざまな分野の同僚たちに原稿の各部を読んでもらい,その意見をまじめに聞いたので,最終稿は彼らの専門家としての意見を忠実に受け入れたものになっているはずであるが,もし間違いが残っていれば,もちろんそれはわれわれの責任である。本書の一部はThomas Steitz(第6章),Ira Herskowitz(第18,19章),John Coffin(第24章),Brent Cochran(第25章)にも分担してもらった。彼らの専門知識のおかげで,本書の内容はたいへん向上した。さらに,John Coffin,Scott Powers Haruo Saito,Lisa Steiner,Parmjit Jatの各氏は,第IX部以降の各章の参考文献をまとめる手伝いをしてくれた。便利な索引を作成してくれたのは,Maija Hinkleである。
 コールド・スプリング・ハーバー研究所の2氏が払ってくれた努力も,これらとかわらず重要である。Andrea Stephensonは,有能な秘書としてわれわれのまちまちな仕事をまとめてくれたし,Susan Scheib は,聡明で細部まで行き届いた配慮によって原稿や校正刷りを見てくれた。われわれはまた,The Benjamin/Cummings Publishing Companyの編集長Jim Behnkeや,制作担当Karen GulliverとBetsy Dilerniaら大勢のスタッフと一緒に仕事をさせていただいたことに感謝している。また,本書の執筆と制作の全過程を通じて担当編集者として働いてくれたJane Gillenに感謝したい。特に満足しているのは,有能なイラストレーターであるGeorg Klattの努力によって生き生きと描かれている図である。この第4版で新しく作った数百の図の大部分は彼の手になるものであり,彼の献身と関心が本書の内容をよりよいものにしてくれた。最後に,本書のために力を尽くしている間,家族の強い支援が得られたことに深く感謝する。この仕事は,われわれが考えていたものよりはるかに困難で,時間がかかったのである。
James D. Watson
Nancy H. Hopkins
Jeffrey W. Roberts
Joan Argetsinger Steitz
Alan M. Weiner

■日本語版への序
 遺伝子についての知識は爆発的な速度で増しつつあり,衰える気配はない。まったく思いもよらなかったことに,今では科学技術の進歩のおかげで,われわれが特に関心を持った遺伝情報のかけらをクローニングして塩基配列を決定することが,ますます容易になっているからである。1953年の春にDNAの二重らせん構造を発見した当時,Francis Crickも私もこの分野がこれほど早く進歩することになろうとは思ってもいなかった。われわれは,いつか遺伝コードをとくことを夢見ていた。けれども,遺伝子の正確な構造を知ることなど,現実の目標とは思ってもいなかった。当時,それは最もすぐれた化学者の能力さえもはるかにこえた目標に見えたからである。生化学者によって活性のあるDNAが細胞の外で合成されるようになるとは想像もしなかったし,ましてや,試験管内で既存のDNA分子を組みかえてハイブリット分子を作る今日の組換えDNAの世界など,予知もしなかった。
今では,組換えDNA革命が始まった1973年以前にもどって考えることなどできない。あのころは,重要な新事実はそれほど頻繁には現れなかった。来年にはあなたが同僚を興奮させる事実を発見すると考えるのは,あまり現実的ではなかった。ところが今日では,重要な新事実が息もつかせぬ速さで発見されている。そのためのマイナスとしては,今では遺伝子について考えるのに必要な事実すべてを思い浮かべられなくなってしまったということがあげられる。われわれ自身を試し,またその知的状態を維持していくため,そして,分子生物学の荒れ狂う海にただよっているほかの人々を救うため,私は,ハーバード大学教授時代からの学生であった研究者を動員して『遺伝子の分子生物学』のこの新版を作った。われわれは,本書が従来どおり役に立つだけでなく,読書の興奮を引き起こし,しかも啓発することを願っている。本書を通じて,われわれは過去の栄光をたたえると同時に未来に備えての準備をしたいのである。いつの日か達成しうるであろう驚くべき奇跡??自己複製する最初の核酸分子を,地球上に現存する途方もなく多様な生命体へと進化させてきた遺伝的プログラムの理解??の日を信じて。私の友人達が本書の日本語訳にあたってくれ,日本の若者や同僚達が広く本書を活用できるようにしてくれたことをうれしく思っている。
1987年10月16日
James D.Watson
コールド・スプリング・ハーバー研究所


■監訳者のことば
 『遺伝子の分子生物学』は分子生物学のリーダー的存在であるJ.D.ワトソンが著した第一級の教科書で,1965年の初版以来改版を重ねながら,常に多くの人に読まれてきた。第3版以来10年余を経過していて著された第4版は,これまでの期本を踏襲しながら,しかもまったく新しい面を持った姿になった。
 その内容は,まさに,この十数年間に新しい展開をし,多くの成果をあげた分子生物学研究を映した鏡であり,また要所要所に著者の意見や展望がとり入れられている点,事実のみを整理して提示するこれまでのパターンを破るものとなっている。原著者序にもあるように,1973年に開発された組換えDNA技術と塩基配列の分析技術の組み合わせで,1977年頃から分子生物学は多細胞生物の遺伝子研究に大きな展開を示し,生物学の新しい局面をひらきつつある。真核生物の遺伝子の特性の解明を基礎に,免疫,発生,がん,ウイルス,進化など,生命現象に迫る研究が遺伝子の分子生物学を通して可能になったのである。
 1970年代初め,原核生物を中心としたDNA研究を高等生物へと展開する方法を模索した時代を思うと,これは驚くばかりである。さすがのワトソンも,この急速で,しかも広汎な動きを一人でまとめることはあきらめ,4名の第一線の研究者の協力を仰がざるを得なかったところにも,それが如実に現れている。初版以来著者独自の視点に特徴と魅力があったこの教科書も,著者が複数になることによってそのよさが消えるのではないかという懸念はまったくの杞憂だった。見事にコーディネートされた構成と,時に大胆に言い切る記述で,読者に刺激を与えるところは以前をしのぐものにさえなっている。
 現代生物学は遺伝子研究を中心に急速に進歩しているといっても,一つの扉を開いたにすぎない。さらに生物の全体像を捉える真の生物学へと展開していくためには,新しい思考と方法論が要求されている。そのためにも,分子生物学研究の全体像とその流れの把握は大切であり,本書はその要求に見事にこたえている。研究者のための参考書,学生用教科書だけでなく,一般教養書にもなる。
 読者の中から,“遺伝子の分子生物学”をさらに興味深いものに発展させる研究者が出ること,ここに書かれている生物一般や人間の理解に役立つ成果を読み取り,それを他分野に活かす人などが現われることを期待して翻訳の筆をおく。
1988年7月19日  松原謙一・中村桂子・三浦謹一郎
第Ⅶ部 真核細胞にせまる
 第18章 真核生物中での大腸菌の役割をする酵母
 第19章 活用されている組換えDNA

第Ⅷ部 真核細胞の染色体
 第20章 真核細胞ゲノムの意外な構造
 第21章 高等真核細胞の遺伝子の機能

第Ⅸ部 真核細胞に特有な遺伝子機能
 第22章 発生の分子生物学
 第23章 免疫における特異性の生成
 第24章 真核生物のウィルスの驚くべき多様性

第X部 解明されつつあるがん遺伝子
 第25章 細胞増殖の調節
 第26章 がんの遺伝的基礎
 第27章 ヒトのがんの起源

第XI部 遺伝子の進化
 第28章 生命の起源

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