eラーニングのためのメンタリング

学習者支援の実践

eラーニングのためのメンタリング
著者 松田 岳士
原田 満里子
ジャンル 情報・コンピュータ
出版年月日 2007/05/01
ISBN 9784501543105
判型・ページ数 A5・144ページ
定価 本体1,600円+税
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

実務経験者による「eメンタリング」入門書

 eラーニングという言葉は,すでに1980年代末から米国で使われていたといわれていますが,eラーニングは本格的に普及し,教育や研修にかかわる多くの人がeラーニングについてきちんと認識するようになったのは最近のことです。日本では21世紀に入ってからといえるでしょう。実際,日本の大学でインターネットを使った学習による単位認定が正式に認められたのも,eラーニングのトレンドや最新データをまとめた『eラーニング白書』が発行されたのも,2001年のことでした。
 その後,eラーニングは人材育成・教育関係者の間で一種のブームとなり,多くの企業や大学で導入されています。『eラーニング白書2006/2007年版』によると,eラーニングは,すでに従業員5,000人以上の企業では約86%で実施されています。また,2005年末に実施された青山学院大学の学生対象の調査では,約80%の学生がeラーニングについて少なくとも聞いたことがありました。これらのデータが示しているように,eラーニングは,もはや,実験的に試行される物珍しい学習方法ではなく,日常的な学習プログラムの選択肢のひとつとして定着しつつあるのです。
 一方で,ブームとしてのeラーニングは,やや下火になったという見方もあります。現に,eラーニング業界最大の展示会,e?Learning Worldの会場規模は,最近縮小傾向にあるようですし,eラーニングに関する失敗事例やeラーニングからの撤退に関する報告も目にするようになりました。
 なぜ,eラーニング産業の「急」成長は起こらずに,失敗するeラーニングが出てきたのでしょうか。その原因はさまざまですが,代表的な理由は次のようなものです。
 ・当初予測していたより,コストがかかる
 ・ドロップアウト(途中で学習を中止してしまうこと)が多い
 ・eラーニングを支える専門的な人材が足りない
 ・著作権や教育機関に対する制度的な制約が,技術の進歩に追いついていない
 ・教員,インストラクタ,管理職の間に,eラーニングに対する抵抗がある
 このような理由をみると,eラーニングの普及や継続を妨げているのは技術的な問題ではなく,eラーニングの特長を理解し,活用しなければならない側の問題,つまりeラーニングプロジェクトの運営,制度,人材育成,教育文化などに関する問題であることがわかります。別の見方をすれば,eラーニングは導入することより,成果を上げながら続けることの方が難しいともいえます。
 よく考えてみれば当たり前のことなのですが,学習・教育・研修といった営みは「人対人」という関係において成り立つものです。新しいメディアやシステムを使うからといって,それだけで人が突然勤勉になることはありません。また,すばらしいコンテンツ=すばらしいeラーニングプログラムでもありません。コンピュータやコンテンツのよさを活かすために,学習者を動機付けしたり,適切な学習スキルの開発を支援したりすることは,eラーニングの「ラーニング」の部分においてとても重要な活動です。そして,このような活動で中心的な役割を果たすのがメンタです。
 本書は,eラーニングの専門家のうち,学習者を直接支援するメンタについてさまざまな角度から述べています。直接といっても,eラーニングのメンタは,企業における人材開発の一環として導入されるメンタ制度とは異なり,ほとんどの場合ネットワークの向こう側にいます。もっぱらeラーニングで学習支援を行う専門家ですから,本書では「eメンタ」と呼ぶことにしました。
 本書は,読者の皆さんにとっての使いやすさに注意して書かれた入門書ですが,eメンタがなぜ必要なのか,eメンタはどのような活動を行うのか,その専門性はどこにあるのか,eメンタを育成するにはどうすればいいのかなどについて,私たちの経験に基づいて,できるだけ詳しく紹介しました。eラーニングをソフトウェア開発や,インフラ整備の観点から,つまり「e」の部分に注目してとらえている技術者や,「eラーニングの方が対面授業より人としての交流が少ない」と信じている先生方に読んでほしいと考えています。きっと,eラーニングにおけるコミュニケーションの重要性や,奥の深さに気づいていただけると思います。
 なお,執筆にあたっては,2.6節,5.5節,事例1および2章,5章のcolumnは原田が,それ以外は松田が担当しました。また,編集作業,構成等は原田が担当しました。
2007年4月
著者を代表して
松田岳士
第1章 eラーニングの特徴
 1.1 eラーニングへの期待と思惑
 1.2 eラーニングとは何か
 1.3 eラーニングの特徴と学習支援
 1.4 学習メディアの性格
第2章 eラーニングにおける学習支援活動
 2.1 3種類の学習支援方法
 2.2 メンタリングの定義
 2.3 eメンタの存在意義
 2.4 メンタリング活動のカテゴリ
 2.5 メンタリング活動の詳細
 2.6 ブレンディッドラーニングにおけるeメンタ
 eメンタリング事例1:EDVEC
第3章 メンタリングガイドライン
 3.1 メンタリングガイドラインの必要性
 3.2 ガイドライン作成のあらまし
 3.3 ガイドライン手順:メンタリングの目標達成
 3.4 ガイドライン手順:ドロップアウト誘発機会の特定
 3.5 ガイドライン手順:適切さの水準設定
第4章 eメンタからの働きかけ
 4.1 学習者へのアプローチ
 4.2 スケジュール立案の補助
 4.3 忙しい学習者への支援
 4.4 満足度の向上:激励と助言
 eメンタリング事例2:草の根eラーニング
第5章 学習者からの質問・相談への対応
 5.1 学習者のニーズ
 5.2 技術に関するトラブルと学習内容に関する質問
 5.3 人間関係の調整
 5.4 学習コースを逸脱した質問
 5.5 対面カウンセリングによる解決
 eメンタリング事例3:青山学院大学国際eラーニング
第6章 eメンタのマネジメント
 6.1 eメンタチームの編成と配置
 6.2 eメンタ間の関係調整
 6.3 メンタリングの評価,改善
付録
 1 メンタリングガイドラインの実例1(大学公開講座)
 2 メンタリングガイドラインの実例2(大学正規授業)
 3 メンタリング活動の細則

あとがき

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