ITで人はどうなる

人間重視の情報技術を

ITで人はどうなる
著者 斎藤 正男
川澄 正史
ジャンル 情報・コンピュータ
出版年月日 2003/05/01
ISBN 9784501536107
判型・ページ数 A5・208ページ
定価 本体1,800円+税
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

急速に進歩するITと人間のあり方を平易に解説

 コンピュータが本格的に製作され,応用されるようになってからほぼ半世紀になるが,この十年ほどの間に,情報技術(IT)の進歩と社会の変化には目覚しいものがあった.技術革新とか新産業育成という意味では,勢いは少しおさまってきたようにも見えるが,社会へのITの浸透はますます勢いを増している.
 高度技術が普及すれば,社会はそれに対応して変化がある.それは急速に表面化する場合もあるし,潜在的なままに進行し,突然大きな変化をもたらすこともある.過去にあった代表的な例は,テレビである.テレビの普及に伴って,近視が増えたというだけでなく,人々の生活,子どもの日常,家族関係まで大きな変化が生じ,テレビ文化という言葉が生まれた.
 しかし,現在の情報化社会の進行を見ると,テレビの比ではない.携帯電話,インターネット,…どれ1つをとっても,テレビに劣らない大きな変化を人間と人間関係に生じると予想される.良い影響が生じるのは結構だが,まさに両刃の剣で,同じ現象が良いことにもなり,悪いことにもなる.「悪いことに対策を」というのが普通のテクノロジー・アセスメントだが,ITはそんな消極的なものではない.正しく使えば人間社会を飛躍的に前進させるはずのものである.
 ITが普及するとき,社会に何が起きるのか.これは社会学や心理学の問題である.社会を正しく導くという意味での専門家の責任は重い.しかし今までのこの種の研究では,実証的な研究姿勢に重点が置かれ,実体調査や意識調査が主体になってきた.高度技術が急速に浸透していくとき,その浸透を待って調査・分析し,対策を考えても,それは「手遅れ」にしかならない.
 今必要なのは,近未来における技術の進展と普及を予測し,その中での人間と人間社会の変化を想像して対策を立てることである.ここでは技術,経済,社会,人間,…などの専門家が,大胆に意見を交換し,社会の未来像と,その中での問題点を指摘しなければならない.問題は大きく分けて2つの面になる.1つはITが普及するときに落後者を出さないための配慮であり,もう1つは,ITを使うことによる人間と人間関係の変化である.
 ITの普及には目覚しいものがあるのに,現在のITのリーダたちは技術の便利さだけに焦点を当て,「居ながらにして…ができる」をキーワードにして進んでいる.人間の研究をしていると称する人たちは,IT端末と人間の整合性を研究し,「端末からの情報を人間が正しく受け取れるかどうか」を論じている.しかし,もっと大事なのは「正しく情報を受け取った」人間がどのように変わっていくかである.その方向への研究は見られない.
 私たちは,「人間と情報環境」というテーマを掲げ,研究を推進している.しかし,その重要性を認めてもらうことはほとんどなかった.今回(財)双葉電子記念財団からの助成をいただいたのを機会に,まず本書を出版し,議論を起こすことが必要だと考えた.検討結果をまとめて出版に入ってから年月が過ぎ,いささか「古くなった刺身」のような感じもあるが,世間に何らかの影響があれば幸いである.
 今回の出版に当たっては,(財)双葉電子記念財団の御支援,東京電機大学出版局関係者の方々の御尽力をいただいた.これらに対して心から感謝を申しあげる.また以下の方々から貴重な御意見をいただいた.感謝を申しあげる.

 (五十音順)
 稲森義雄氏,梅沢 淳氏,加藤修一氏,筒井末春氏,西村千秋氏,
 廣田昭久氏,星野 聖氏,山崎清之氏,山下和彦氏,吉田道雄氏.
  
 【筆者紹介】
 私たちのグループでは,高齢者とITの関係や,機械環境と脳活動のかかわりなどについて,長い間研究を続けてきた.東京電機大学には,人間と機械環境についての研究所があり,文部省(現 文部科学省)からハイテク・リサーチ・センターの指定を受けて研究をしている.脳波や視線など一通りの心身状態の測定はもちろん,脳から出る微小磁気を測定するシステムや,脳のどこが活発に働いているかを見ることのできる機能的MRIと呼ばれる装置が備えられている.
 写真は,目の前に絵を提示して脳の反応を機能的MRIで見た例である.本人が興味を持って見ているときとそうでないときは,はっきりと区別することができる.今までの脳生理学や心理学での研究では,被験者に画像を提示し,本人が見る気がないとわかったときは,「データは意味がない」として捨てていたのであるが,私たちは,このように本人に「見る気があるかどうか」を調べることに意義を感じている.
 私たちは人間の側から見たITに興味があり,研究をしてきた.最新のITの細部にまで精通しているわけではないが,将来の発展の可能性については広く見渡しているつもりである.

 2003年4月
Chapter1 はじめに
だいぶ昔のこと
 技術の進歩
 社会の変化
 ITの光と陰
 情報弱者
 人間が変わる
 問題意識
 まとめ

Chapter2 ITの進展と人間
初期のコンピュータ
 コンピュータの進化
 専属のコンピュータ
 PCとマルチメディア
 情報化の混乱
 地域のIT化
 将来のIT
 まとめ

Chapter3 足並みを揃えて進もう
 独走する人たち
 人間との接点
 障害者と高齢者
 研究者の独りよがり
 標準化
 ビジョンづくり
 まとめ

Chapter4 家庭はどうなる
 IT化の中の家庭
 地域と家庭
 社会と家庭の接続
 家電のIT化
 家庭内ITシステム
 インタフェース
 家庭生活と技術
 家事のためのIT
 まとめ

Chapter5 障害者とIT
 障害者と個性対応
 視覚障害者の場合
 聴覚障害者の場合
 肢体障害者の場合
 難しい課題
 アクセシビリティ指針
 米国の事情など
 接続の標準化
 研究開発の姿勢
 共用品,ユニバーサルデザイン
 まとめ

Chapter6 高齢者の立場
 高齢者とIT
 高齢者の特徴
 高齢者特性のデータベース
 一般的な傾向
 視 力
 聴 力
 運動・姿勢
 思考・判断
 高齢者のやる気
 まとめ

Chapter7 知識の冷凍庫
 このまま進んでよいのか?
 時間と空間の超越
 実感のある知識
 別世界への窓
 勉強は要らない?
 脆い社会
 思考の皮相化
 人間は何をするのか
 学校はどうなる
 まとめ

Chapter8 つくられた世界と情感
 向こう側の世界
 シミュレータ
 仮想世界と娯楽
 現実感
 本物とは違う世界
 不思議な世界
 自分でつくる世界
 絵画の世界
 気持ちを伝える
 まとめ

Chapter9 仮想と現実
 向こう側とこちら側
 ストレスと逃避
 仮想と癒し
 夢と現実
 現実の中の仮想
 区別のつかない人
 自分勝手な論理
 混同世界の拡大
 まとめ

Chapter10 育児と新世代人
 子供の成長
 母親の役目
 本物と偽者
 仮想世界離れ
 独り遊びの世界
 天動説型人間
 思い切りのよさ
 まとめ

Chapter11 人間関係
 個人ベースの世の中
 携帯電話
 ビジネスとメール
 時間軸の食い違い
 仕事はだれが?
 メールと付き合い
 気持ちと形式
 非言語コミュニケーション
 顔を合わさない会話
 家族との対話
 人間関係と娯楽
 まとめ

Chapter12 やる気
 IT端末とやる気
 若者とやる気
 やる気を何に向けるか
 夢とやる気
 高齢者
 障害者
 モジュラ構成
 まとめ

Chapter13 どうすればよいのか
 当面の問題
 情報弱者への配慮
 気持ちとやる気
 人間中心の設計へ
 仮想世界の利用
 育児の問題
 家族の絆
 技術開発体制
 まとめ

おわりに
索 引

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