インターネットの知的情報技術 情報社会とデジタルコミュニティ

インターネットの知的情報技術 情報社会とデジタルコミュニティ
著者 大澤 幸生
角 康之
松原 繁夫
西村 俊和
山田 誠二 
北村 泰彦 編著
ジャンル 情報・コンピュータ
出版年月日 2002/07/01
ISBN 9784501534905
判型・ページ数 A5・160ページ
定価 本体1,900円+税
在庫 在庫あり

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社会活動支援のための情報の応用技術を解説した

 来るべき「情報化社会システム」がどのような社会となるのかを展望しつつ,そこで活用されるであろう知的情報技術について,その研究や応用技術の可能性についてわかりやすく解説した一冊.あくまでも主体は「人」であることを考慮して,さまざまな社会活動を支援するための情報技術の応用技術について取り上げた.

 現在のコンピュータの元祖ともいえるENIAC (Electronic Numerical Integrator and Calculator)がエッカートとモークリーらの手によって完成したのは1946年のことである.ENIAC開発の目的は弾道方程式を計算することにあった.当時の米国陸軍では砲弾の落下位置を爆薬の量,大砲の角度や特性などから求める弾道表を大量に作る必要があり,その計算のために高速な計算機を必要としていたのである.3年弱の開発期間をかけて完成したものは真空管約18000本,消費電力140KW,重量30トンの巨大コンピュータであった.
 これ以来,コンピュータは急速な発展をし続けた.計算の高速化,記憶の大容量化は実世界における様々な計算を機械処理可能にした.当初,最も大きな需要があったのはビジネス計算であった.そして企業の情報化とともに成長を遂げたのが,その名のとおり,IBM(International Business Machine)のコンピュータであった.
 コンピュータのもう一つの発展要因はダウンサイジングと低価格化にある.アップルをはじめとするパーソナルコンピュータの出現はコンピュータの個人所有を可能にした.これはコンピュータ産業の成長を急激に加速した.そしてコンピュータの用途も,単なる計算から,ワードプロセッシングやエンタテイメントへと大きくひろがった.
 そしてさらに,コンピュータはネットワーク化されることにより,新たな発展を遂げようとしている.コンピュータネットワークの発端は1970年にわずか 4台のコンピュータを接続することから開始された米国のARPAネットワークにさかのぼることができる.その後,米国国防省の資金援助によって大学や研究所のコンピュータが次々と接続され,そのネットワークは米国全土に広がるようになった.さらにARPAネットワークは地域ネットワークを結ぶ幹線ネットワークとしての役割が強くなり,現在では地球規模で無数のコンピュータを相互接続するインターネットへと発展している.

 以上のようにコンピュータとネットワークを中核とした情報技術はわずか半世紀の間に格段の進歩を遂げてきた.当初軍事目的のために開発された30トンの巨大コンピュータが,持ち運び可能なぐらいに軽量化され,さらに世界中の人々と自由に情報交換を行う道具にまで進化したのである.
 それでは今後の情報技術はさらにどのように発展してゆくであろうか?これに答えることは容易ではないが,二つの方向性を予想することができる.これまでの情報技術の発展が計算の高速化,記憶の大容量化,小型化,通信能力といったハードウェア中心になされてきたのに対し,今後はソフトウェアを中心とした発展がより重要になるであろう.そしてそのソフトウェアの高度化を支える中核的な技術が人工知能をベースとした知的情報処理技術であるといえる.
 もう一つの方向性は社会システムとしての発展である.当初のコンピュータネットワークでは遠隔ログインやファイル転送が主要な利用目的であったのに対し,インターネットでは電子メールやWorld Wide Webなど利用者間での情報交換が主要な目的となっている.これらは個人ベースでのコミュニケーションを支える有効な手段となっているが,今後はコミュニティベースでの多対多コミュニケーションを支援する社会システムとしての技術がより重要になると予想される.
 本書「情報社会とデジタルコミュニティ」は,このような背景から,「インターネットの知的情報技術シリーズ」の展望編として,わが国における知識処理の第一線の研究者により,インターネット時代に有望な知的情報処理技術の応用領域について述べたものである.本書は一般のビジネスマンや文系の大学生などのインターネット初学者にもできるだけ直観的に理解できるように,具体的な方法を豊富な応用例を基にしてわかりやすく書くように心がけたつもりである.よって,読者はインターネットに関するごく基本的な知識さえあれば,本書を読むことにより,現在における本質的な課題,それに対する人工知能を初めとする知的処理の取り組み,そして,今後インターネットが進んでいく方向を把握することができるだろう.

 大澤幸生(筑波大学)による第1章「予兆発見(Chance Discovery)とそのマネジメント」ではインターネットなどを通して提供される膨大な情報の中から,利用者の意思決定に重要な予兆やチャンスを発見する技術について述べられている.この技術はWeb情報からの新しいコンセプトの発見,マーケティング,株式投資,地震予知などの分野に応用することが期待され,その基本技術としてKey Graphについて解説がなされている.
 角康之(ATR)による第2章「インターネットとデジタルミュージアム」ではインターネット上の社会メディアの一つとしてのデジタルミュージアムについて述べられている.さまざまなデジタルコンテンツをインターネット上で閲覧可能にするバーチャルミュージアム技術だけでなく,実世界の博物館を情報技術によって強化,拡張するデジタルミュージアムの実例を,筆者らが開発したC-MAPシステムを中心に紹介している.
 松原繁夫(NTT)による第3章「コミュニティ支援」はネットワークを介してつながれた人々の集まりであるネットワークコミュニティを支援するコミュニティウェアについて述べている.コミュニティウェアは出会いの支援,語らいの支援,蓄積情報に対する情報統合の支援を行うことが主な目的となり,筆者らが開発したCommunity OrganizerとCommunity Boardについての解説がなされている.
 西村俊和(立命館大学)と北村泰彦(大阪市立大学)による第4章「知的インターネット技術を用いた教育」はネットワークと知的情報処理技術を用いた教育システムについて述べている.本章はネットワークによる新たな教育形態の実現,人工知能技術による教育活動の支援,ヒューマンインタフェース技術によるインタラクションの活性化の観点から,それぞれに関する具体的な事例を紹介している.

 さて,本シリーズは関西文化学術研究都市けいはんなプラザにおける学術交流の一環として行われた知的情報統合研究会の活動を通して生まれたものである.この研究会を積極的に支援していただいた株式会社けいはんなの皆様にこの場を借りてお礼申し上げる.最後に,本書において,図や表の引用に快く応じて頂いた多くの研究者の方々にもお礼を申し上げる.

2002年6月
北村泰彦
山田誠二
第1章 予兆発見とそのマネジメント
第2章 インターネットとデジタルミュージアム
第3章 ネットワークコミュニティの形成支援/語らい支援
第4章 知的インターネット技術を用いた教育

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