バイオメカニズム・ライブラリー 人と物の動きの計測技術

ひずみゲージとその応用

バイオメカニズム・ライブラリー 人と物の動きの計測技術
著者 バイオメカニズム学会
小川 鑛一
ジャンル 機械
出版年月日 2002/12/01
ISBN 9784501415600
判型・ページ数 A5・144ページ
定価 本体2,500円+税
在庫 在庫あり

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福祉機器に最適なセンサ,ひずみゲージを解説

 「ひずみゲージ」とは,被測定物に貼り付け,その微小変位を測定するセンサである.工学の様々な計測・測定現場にて用いられ,力・圧力・変位などの強度試験のみならず,変換器の工夫により振動・加速度・トルクなどが測定できる万能センサである. 本書は,永年にわたりひずみゲージを用いて各種研究を行ってきた著者が,初学者を対象にひずみゲージの原理や使い方を平易に解説.また,看護・介助士の動作研究をもとにした人間工学への応用事例や手法を解説.今まで経験や勘に頼ってきた看護・介助動作の運動が数値化することができ,多くの動作研究分野において,必須の書である.

 一般に,「物体が外力の作用を受けた時に生ずる形や体積の変化」をひずみ(歪み)といいます.材料科学の分野では,これを「長さの変化量を元の長さで割ったもの」と定義しています.このようなひずみを測るセンサは“ひずみゲージ”と呼ばれています.この小さなひずみゲージが世に現れたおかげで,土木,船舶,航空,鉄道の各分野が飛躍的に発展したことを知る人は少ないのではないでしょうか.筆者がこのひずみゲージに関する本をなぜ刊行しようと思ったかということを以下に述べます.
 戦後間もない昭和22年(1947)に当時の東京大学工学部船舶工学科の教授吉識雅夫先生がアメリカからひずみゲージを持ち帰り,それを共和無線研究所(現共和電業)がいち早く日本で製造を始めました.そのひずみゲージは,船舶の構造・強度試験あるいは鉄道車両・線路の強度試験に使用され,今日に見る日本の造船,新幹線をはじめとする各種鉄道,世界に誇れる自動車,高層ビルの建設などの技術発展に寄与しました.
 筆者は,昭和27年(1952)より8年間,先の東京大学工学部船舶工学科に技術員として吉識教授の船舶強度研究室で働いていました.当時,まだ10代の夜間工業高校生でしたが,ひずみゲージの理屈も知らず,船体構造物や構造材料の強度実験のお手伝いをしました.当時は細い抵抗線を紙に付着させたひずみゲージしかなく,貼ってもすぐには使えず一晩乾燥させるか,赤外線ランプを近づけ強制乾燥させ,絶縁抵抗を上げてからひずみ測定のための強度実験を行うという時代でした.強度試験用鋼材あるいは構造物に何十枚という多くのひずみゲージを貼付し,圧縮,引っ張り,曲げなどの強度実験を数多く行った経験があります.また,荒海を航海する船のひずみ(応力)測定や船底に圧力計を仕掛けて海水から受ける水圧測定も行いました.さらに,大型船が進水するとき,船首が陸地で船尾が海面に達した瞬間のひずみ測定にもしばしば参加しました.
 その後,昭和36年(1961)に航空宇宙技術研究所機体部に移りロケットチャンバーの強度試験,航空機(YS-11)の疲労試験なども行いました.また,昭和38年?昭和40年(1963-1965)には土木工学で有名なアメリカのリーハイ大学に留学する機会を得ました.そこではボールドウィンの 2000トン縦型大型引張り圧縮試験装置による構造材料の強度・破壊実験もしばしば行い,そのときのひずみ測定も担当しました.昭和45年から13年間,東京工業大学名誉教授森政弘先生のもとでロボットの研究を行いましたが,そこでも貼付した数は少ないのですがひずみゲージを使ってロボットの強度,振動,動きの加速度の測定を行いました.また,当時,ネパールの技術援助として,川の流れのエネルギーで川を渡るボート“自然力ボート”の開発を行いました.そのボートはロープを命綱として使用する関係上,ロープ張力測定の必要性に迫られひずみゲージを応用した張力測定も行いました.
 以上述べましたように,ひずみゲージに関わる実践的経験は数多く,ひずみゲージの応用技術を経験によって身につけました.こうして得られたひずみゲージ応用技術をここ10年ほど前より看護師や介護士の動作研究に応用し成果をあげています.看護師・介護士は患者や高齢者を持ち上げ移動させる機会が多く,腰痛を起こす場合が多いのです.こうした大変な作業時に看護師・介護士が発揮する力あるいは身体を支える両足底の床反力をひずみゲージを応用した試作荷重変換器,床反力計(フォースプレート)を活用し測定しています.さらに,背上げができるギャッジベッド上で寝ている患者(模擬被験者)の背面に加わる力とずれの測定もひずみゲージを応用して行っています.このように,ひずみゲージはひずみ測定を前提としますが,その応用として力,圧力,加速度,変位,トルクなどいろいろな機械的物理量が測定できる便利な変換器として利用できます.しかも,力,圧力,変位などの変換器は工夫次第で自作が可能です.本書でも紹介しますが,既製の変換器では測れない機械量を試作変換器で測ることができます.
 ひずみゲージに関わる類書は何冊か散見します.しかし,それらはいずれもひずみゲージの動作原理は理解できますが,実際面への応用となると初学者にとっては理解しがたいものばかりです.いろいろと実際面に直面しないと分からない場面もあるかと思います.これまでの経験を活かし,ひずみゲージの応用を広く世に伝えたいという思いで本書を執筆する気になった次第です.
 本書は,ひずみゲージのことを全く知らない人が初めてそれを使用するような場合,あるいは知っていてもどのように応用すればよいか分からない人にとって,その利用方法を理解していただけるものと思っています.
 最後に,ひずみゲージについていろいろと情報の提供とご指導をいただいた頂いた株式会社共和電業営業技術グループ篠田東洋児氏,ひずみゲージに係わる図と写真提供にご協力をいただいた同社市場開発室前田芳己氏,久能隆志氏,ひずみゲージ関連の最新情報を常に提供して頂いた株式会社共和電業東日本営業部中島實氏に厚くお礼申し上げます.また,お忙しいところこころよく査読をしていただき貴重なご意見を頂いた埼玉県工業技術センター関根俊彰氏に感謝いたします.さらに,東京電機大学出版局石沢岳彦氏には本書全体にわたり大変なご尽力いただきました.ここに重ねてお礼申し上げます.

 2002年10月
小川 鑛一
第1章 ひずみゲージで何が測れるか
1.1 物の寸法や状態を測るということ
 1.2 センサの大分類
 1.3 センサで何をどのように測るのか
 1.4 ひずみとは何か
 1.5 ひずみゲージは電気抵抗の一種
 1.6 変換器への応用について
 1.7 力(荷重)変換器のしくみ(動作原理)
 1.8 測定できる物理現象の予想変化
第2章 ひずみゲージを貼る・配線する・ひずみを測る
 2.1 測定はゲージを貼ることからはじまる
 2.2 ゲージを測定器に接続する
  1 ひずみゲージからの電線を配線する
  2 ひずみを測定する
 2.3 静ひずみの測定(多点のひずみ測定法)
 2.4 ひずみゲージを応用した荷重変換器の考え方
  1 2ゲージ法,4ゲージ法による測定法と荷重変換器
  2 温度ドリフトの話
  3 片持ばりの表面は引張ひずみ,裏面は圧縮ひずみ
  4 ひずみの出力感度とは
  5 ゲージの貼り方が間違ったらどうなる
第3章 ゲージの姿・形と測定器
 3.1 ひずみゲージ
  1 受感素子(センサ)としてのひずみゲージ
  2 ゲージの形式(各部の名称)
  3 種類が多いひずみゲージ
 3.2 ひずみ測定システムと測定器
  1 静ひずみの測定システムと測定器
  2 動ひずみの測定システムと測定器
第4章 応力測定
 4.1 ひずみを測って応力を知る
 4.2 材料や構造体のひずみはどのように測定するか
第5章 ひずみゲージを応用した手作り変換器
 5.1 ひずみゲージ式荷重変換器の考え方
 5.2 ひずみ感度の話
  1 ひずみと力・変位の関係
  2 ひずみゲージを応用した荷重変換器の出力感度について
 5.3 ひずみゲージ応用変換器のいろいろ
  1 最も簡単な荷重変換器(荷重計)
  2 お盆にのせた物体の重量を量る
  3 介助紫煙補助機器の操作力測定
  4 自然力ボートロープ張力測定
  5 コップを握る手の力測定
  6 シーツ引張りによる臥床者移動時の力測定
  7 2人による臥床者移動時の力の測定
  8 床反力の測定
  9 引張荷重変換器と変位変換器
第6章 平面型荷重変換器のすすめ
 6.1 1台のひずみ測定器ですむ平面型荷重変換器
 6.2 ベッド脚を支える荷重変換器
 6.3 超薄型フォースプレートによる臥床者抱き起こし動作
 6.4 臥床者背面力測定用2軸荷重変換器
 6.5 臥床者抱き起こし時の手に加わる力の測定
 6.6 重量物の移動動作
第7章 機械量の応用計測
 7.1 引張力,圧縮力,ねじり力の荷重変換器(荷重計,ロードセル)
  1 引張力の測定
  2 圧縮力の測定
  3 トルクの測定
 7.2 圧力,変位,加速度の変換器
  1 圧力の測定
  2 変位の測定
  3 加速度の測定
参考文献
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