ユーザが感じる品質基準QoE

IPTVサービスの開発を例として

ユーザが感じる品質基準QoE
著者 NTTサイバーソリューション研究所 監修
ジャンル 全て
電子・通信
出版年月日 2009/02/01
ISBN 9784501326807
判型・ページ数 A5・148ページ
定価 2,420円(本体2,200円+税)
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

現代のマーケットにおいて,消費者にとって魅力のある商品やサービスを開発・提供することは,以前よりもずっとむずかしくなっています。インターネットの普及によって,口コミなどのあらゆる情報がリアルタイムに流通するようになり,消費者の趣味趣向や価値観も多様化しました。
 これまでは,情報通信の分野においては,機能・性能第一で商品やサービスが開発されてきましたが,今ではそのデザイン(意匠)が重要視されるようになり,使いやすさ,サポートの良さ,そしてもちろん価格に至るまでのトータルな満足度が求められるようになってきました。そして最近では,地球環境への負荷なども重要視されています。
 ネットワークのサービスの性能を評価する指標として,QoS(Quality of Service)という言葉がありましたが,これからは,より総合的な品質の指標として「消費者がその商品やサービスを使ったり受けたりする際にどのような体験をするか」という点に着目した総合的な品質であるQoE(Quality of Experience)がさまざまな分野で重要視されています。
 それは,商品やサービスの開発,流通,運用,回収・集結の各過程,すなわちそれらのライフサイクルにおいて考慮されなければなりません。また,消費活動においては,価格はもちろんのこと,ネット上での利用体験の共有による評判の情報や所有の喜び,安心感などマーケティングに関する事項も考慮の対象となるでしょうし,顧客本人の性質,すなわち慣習や文化的背景も影響を与えるでしょう。
 もちろん,これまでも,「顧客満足度」や,満足度のマネジメント(CRM:Customer Relationship Management)といった言葉は存在していました。しかしながら,対象となる商品やサービスのライフサイクルを通して顧客がどのような体験を受けるかといった視点の評価については,まだまだ検討すべきことが多いと思われます。
 企業分野は異なるものの,スターバックスコーヒーやディズニーランドでは,お客様にどのような快適な(すばらしい)体験をしていただくかという「顧客体験のデザイン」を実践しているといえるでしょう。この他にも,金融,外食,流通産業などを中心に,顧客満足度を高める工夫はおもにノウハウとして蓄積されていると思われます。しかしながら,実際に商品やサービスを開発し,デザインを評価するには,数値的・定量的な基準が必要となります。
 ネットワークのサービスに関していえば,これまでQoSという言葉で表現されてきたネットワーク性能のサービス品質から一歩踏み込んだQoE,日本語訳では「ユーザ体感品質」が必要となっています。”Experience”は直訳すれば「体験」ですが,ここではもっと「わくわくする感じ」,「楽しさ」といったポジティブなイメージ感と考えたほうがよいでしょう。この”Experience”を定量化して,消費者が判断しやすいように,あるいはサービス設計の指針となるように考えられたものがQoEであるともいえるでしょう。それは,サービスの発見,契約,享受,維持の各場面において考えられるべきです。
 現在,国際的にQoEについて議論がくり広げられているIPTV(インターネットテレビ)を例にとれば,画像の品質・安定性から操作画面の見やすさ,リモコンの使いやすさなども評価されています。工学の分野においては,学問としてはまだ黎明期であるといえるQoEの概念は,これからの重要な研究課題といえるでしょう。
 本書の出版にあたっては,商品・サービス・システムの設計段階からQoEを意識することで,消費者に高品質な体験を提供し,かつ設計を効率化するヒントを,開発者側に与えることを目的としています。研究開発,設計,運用および営業に至るまで,さまざまな立場でQoEという共通概念をもって質の高いサービスが次々と登場することを期待しています。
 2009年1月
 著者識
第1章 サービスの品質
 1.1 サービスは「時間」の時代
 1.2 総合的なデザインの重要性
 1.3 次のサービスの予想
 1.4 QoEの提案
 1.5 もう一度ユーザの手に
第2章 エクスペリエンスの品質(QoE)
 2.1 さまざまなエクスペリエンス
 2.2 エクスペリエンスの品質(QoE)
 2.3 品質メトリックスへの注目のされ方の流れ
第3章 通信サービスにおけるQoE
 3.1 通信サービスの品質
 3.2 通信関連標準化団体におけるQoSとQoEの考え方
 3.3 NGN(Next Generation Network)とQoE
 3.4 通信サービスにおけるQoEの位置づけと展望
第4章 IPTVサービスにおけるQoE
 4.1 IPTVの定義と各国の状況
 4.2 IPTVの構成
 4.3 映像の評価
 4.4 ネットワーク伝送の評価
 4.5 ユーザインタフェースの評価
 4.6 保守運用性
 4.7 さらなるQoE検討要素
第5章 QoEの課題と今後の展望
 5.1 エクスペリエンスにこそ経済価値がある
 5.2 エクスペリエンスのデザインの方法論
 5.3 改めてエクスペリエンスの品質と総合評価を問う
 5.4 UXマネジメントが今後の企業経営にとってのキー
 5.5 QoEの深化とビジネスの展開

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