電子透かし技術

デジタルコンテンツのセキュリティ

電子透かし技術
著者 画像電子学会
小松 尚久 監修
田中 賢一 監修
稲葉 宏幸
川合 淳郎
松井 甲子雄
汐崎 陽
酒澤 茂之
大渕 竜太郎
松尾 秀城
ジャンル 全て
電子・通信
出版年月日 2004/01/01
ISBN 9784501323202
判型・ページ数 A5・232ページ
定価 2,970円(本体2,700円+税)
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

電子透かし技術とその周辺の技術を解説

ディジタル信号処理技術の発展とインターネットの普及により,画像・音楽などマルチメディア情報の加工と配信が個人でも容易に行えるようになりました。このためディジタルコンテンツの著作権に対する関心が高まり,それを保護するなどの目的で研究が進められてきた電子透かし技術が利用されています。電子透かしとは,貨幣経済における紙幣や証券類などに印刷される透かしをディジタルコンテンツに適用した技術であり,配信するコンテンツの改ざんの検出,またコンテンツ自体の信憑性の確認,さらには機密情報あるいは制御情報をコンテンツの中に含めるなどの応用があります。
電子透かしに関する研究については,ここ数年でさまざまな発表がなされるようになり,活発な研究分野の一つとなりました。今日一般的に利用されている電子透かしは,画像情報に対する適用から研究が進められ,基本的には画像情報の持つ冗長性と人間の視覚特性を利用した提案がそもそもの発端となっています。研究が始まった当初は,冗長性を圧縮することを目的とする画像符号化技術の研究の方向性と必ずしも一致しないこと,また適用できるインフラが整備されていなかったこともあり,特に注目度の高いものではありませんでした。やがてMPEGやJPEGなどの画像符号化方式が標準化され,それに伴って記録媒体あるいはインターネットによるコンテンツの配信が行われるようになりました。そして情報表現メディアとそれらの利用目的の多様化に伴い,さまざまなアルゴリズムとシステムが提案されてきました。
こうした背景に基づき,画像電子学会では,電子透かしを実現する技術と実際の運用を画像情報に関わる専門家の方々に理解して頂き,この技術分野に関する研究開発を活性化することを目的として技術解説を企画しました。この技術解説は,画像電子学会誌の2002年3月号から2003年5月号に「透かし技術とその周辺」というテーマで14編が掲載されました。本書は,様々な分野の技術者,また学生の方々に電子透かし技術を知って頂くために,連載の技術解説に平易かつ詳細なる説明を加えてまとめたものです。すなわち本書では,透かし技術の原点である印刷技術から,静止画像,文書画像,動画像,CG,ホログラフィ,音楽などの様々な情報メディアとともにDVDなどの記録メディアに対する実現技術,あるいは個人認証といった利用面を考慮した技術の応用,また国際標準化に至るまで多岐にわたる内容を扱っています。執筆者はいずれも各分野における第一線の研究者であり,電子透かし技術の基礎から応用までを網羅しました。
著作権の保護を実現するためには,電子透かし技術だけで十分である訳ではありません。当然のことながら,技術的な対策とともに法規,運用面での対策が必要となり,両者は密接な関連があると考えられます。すなわち,技術を正確に知るうえでは,目的を実現する可能性と同時に課題も認識する必要があり,それによって正しい運用がなされるからです。そうした意味においても,本書が今後の研究だけでなく運用面での問題意識を啓発するきっかけとなることを願ってやみません。 
末筆ではありますが,画像電子学会誌において透かし技術の技術解説とともに本書の刊行を企画された明治大学理工学部の田中賢一先生,また編集に際してご尽力下さった画像電子学会の福島理恵子氏,さらに本書の企画にご賛同下さり,ご協力を頂いた東京電機大学出版局の徳富亨氏に衷心よりお礼申し上げます。
2003年11月
目次

まえがき …(小松尚久)… ⅲ

第1章 電子透かしとは何か ?使用形態と耐性評価? …(稲葉宏幸)… 1
1.1 はじめに …1
1.2 電子透かしに求められること …2
1.3 電子透かしの使用形態 …3
1.4 電子透かしを用いるコンテンツ …7
1.5 電子透かしの耐性評価 …8
1.6 むすび …13

第2章 本物の証 ?紙のすき入れ(透かし)? …(川合淳郎)… 15
2.1 はじめに …15
2.2 透かしの技術 …16
2.3 本物の証としての透かし …20
2.4 透かしの品質とその評価 …33
2.5 むすび …35

第3章 文書画像への電子透かし …(松井甲子雄)… 37
3.1 はじめに …37
3.2 文章要素による透かし方式 …38
3.3 背景パターンによる透かし方式 …41
3.4 多値画像の2値化による透かし方式 …43
3.5 2値画像の多値化による透かし方式 …47
3.6 ベクトルデータへの透かし方式 …49
3.7 むすび …50

第4章 JPEG画像に対する電子透かし …(汐崎 陽)… 53
4.1 はじめに …53
4.2 JPEG圧縮処理と透かし埋め込み過程 …55
4.3 透かし情報の埋め込み …59
4.4 むすび …72

第5章 動画像電子透かし …(酒澤茂之)… 75
5.1 はじめに …75
5.2 動画像電子透かしに対する要件 …76
5.3 動画像電子透かし方式の概説 …79
5.4 透かし攻撃ツールStirmark の動画像適用に関して …89
5.5 むすび …92

第6章 3次元形状モデルに対する透かし …(大渕竜太郎)… 95
6.1 はじめに …95
6.2 3次元形状モデルと透かし …96
6.3 メッシュ形状に埋め込む透かし …98
6.4 メッシュの属性や動きに埋め込む透かし …107
6.5 形状CAD データを対象とする透かし …108
6.6 まとめ …108

第7章 ホログラフィへの応用 …(田中賢一)… 113
7.1 はじめに …113
7.2 CGHの合成手法 …114
7.3 透かし情報としてのCGH …117
7.4 署名データの再生 …119
7.5 アタック耐性強化策 …121
7.6 まとめ …122

第8章 音楽電子透かしの普及の可能性について …(松尾秀城)… 125
8.1 はじめに …125
8.2 音楽電子透かし技術の適用の現状 …126
8.3 音楽電子透かしの普及の可能性 …133
8.4 結論 …137

第9章 DVDに対するコンテンツ保護と電子透かし …(田中賢一,田中 清)… 141
9.1 はじめに …141
9.2 DVDの基礎知識 …142
9.3 DVDのコンテンツ保護手段 …145
9.4 まとめ …151

第10章 バイオメトリクス本人認証技術とその課題 …(篠原克幸)… 153
10.1 はじめに …153
10.2 認証に用いられている生体特徴 …155
10.3 バイオメトリクス個人認証技術の課題 …158
10.4 認証アルゴリズムの新しい動き …162
10.5 むすび …163

第11章 攻撃とその対策 …(古原和邦,今井秀樹)… 167
11.1 はじめに …167
11.2 電子透かしを用いて埋め込まれる情報の分類 …167
11.3 埋め込まれた電子透かしに対する攻撃と対策 …169
11.4 透かしの埋め込み・抽出装置に対する攻撃と対策 …171
11.5 今後の課題 …176
11.6 まとめ …178

第12章 ディジタル・ステガノグラフィ技術について …(河口英二,野田秀樹,新見道治)… 181
12.1 はじめに …181
12.2 ディジタル・ステガノグラフィ技術の位置づけ …181
12.3 従来からのディジタル・ステガノグラフィ …184
12.4 実験プログラムや文献 …186
12.5 BPCS-Steganography方式 …186
12.6 限定色カラー画像への適用 …189
12.7 ウェーブレット非可逆圧縮画像への適用 …192

第13章 電子透かしに関する国際標準化動向 …(青木輝勝,安田 浩)… 197
13.1 はじめに …197
13.2 ディジタルコンテンツ流通に関する国際標準化機関・団体とその目的 …197
13.3 MPEG-21と電子透かし …199
13.4 電子透かしに関する耐性評価項目 …204
13.5 まとめ …206

第14章 今後の展望 ?まとめにかえて? …(田中賢一)… 209
14.1 紙幣に対する透かし(第2章) …209
14.2 文書画像への応用(第3章) …210
14.3 静止画像への応用(第4章) …210
14.4 動画像への応用(第5章) …211
14.5 三次元形状モデリングへの応用(第6章) …212
14.6 ホログラフィへの応用(第7章) …212
14.7 音楽情報に対する応用(第8章) …213
14.8 DVDへの応用(第9章) …213
14.9 バイオメトリックス本人認証技術(第10章) …214
14.10 攻撃とその対策(第11章) …214
14.11 ステガノグラフィ(第12章) …215
14.12 国際標準化動向(第13章) …216




〈監修・執筆〉

小松尚久(監修,まえがき)早稲田大学理工学部
稲葉宏幸(第1章)京都工芸繊維大学工芸学部
川合淳郎(第2章)元 東京工芸大学工学部 教授
松井甲子雄(第3章)防衛大学校情報工学科
汐崎 陽(第4章)大阪府立大学大学院工学研究科
酒澤茂之(第5章)KDDI研究所
大渕竜太郎(第6章)山梨大学医学工学総合研究部
田中賢一(監修,第7・9・14章)明治大学理工学部
松尾秀城(第8章)株式会社野村総合研究所
田中 清(第9章)信州大学工学部
篠原克幸(第10章)工学院大学工学部
古原和邦(第11章)東京大学生産技術研究所
今井秀樹(第11章)東京大学生産技術研究所
河口英二(第12章)九州工業大学工学部
野田秀樹(第12章)九州工業大学工学部
新見道治(第12章)九州工業大学工学部
青木輝勝(第13章)東京大学 先端科学技術研究センター
安田 浩 (第13章)東京大学 国際・産学共同研究センター

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