MATLABによる ディジタル信号とシステム

MATLABによる ディジタル信号とシステム
著者 足立 修一
ジャンル 電子・通信
出版年月日 2002/02/01
ISBN 9784501322304
判型・ページ数 A5・256ページ
定価 本体3,000円+税
在庫 品切れ・重版未定

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MATLABを使い論理的側面を平易に解説

 ディジタル信号とシステムの基礎となる理論的な側面について,わかりやすく解説。前半は線形システムの表現,離散時間フーリエ変換などを,高校数学の完全な理解を前提に学ぶ。後半で学ぶのはサンプリング,ディジタルフィルタなど,本書の中核となるテーマであり,これは応用例にも深く関わる。これらの理論をさらに深く,具体的に学ぶために,本書ではMATLABの信号処理ツールボックスを使うが,利用できない読者も不利にならないように配慮されている。

 「ディジタル(あるいはデジタル)」という単語が身の回りに氾濫し,当たり前のように日常会話に登場するようになって久しい。20年くらい前までは「アナログとディジタル」といったように,アナログという主役に対する脇役的な存在であったディジタルがもはや主役になってしまった感がある。
 信号処理や通信工学の世界でも,アナログ技術からディジタル技術への世代交代が着々と進行している。携帯電話はディジタル化され,放送業界でも衛星ディジタルから地上波ディジタルの時代が訪れようとしている。そのため,書店の理工学書コーナーへ足を運べば,ディジタル信号処理やディジタルシステムなどに関する書物が多数並んでいる。難解な理論的な本から非常に親切に書かれた入門書までさまざまなものが用意されている。このような状況下で,本書はディジタル信号とシステムの基礎となる理論的な側面について,基本的に高等学校の数学の知識があれば理解できるように,できるだけわかりやすく解説することをめざした。
 まず,本書では,線形システムの表現,離散時間フーリエ変換,そして z 変換になど,離散時間のための数学について記述する。離散時間とかディジタルのための数学というとちょっと難解な感があるが,中心的なものは「数列(漸化式)」である。その中でも(限・無限)等比数列をしっかりと理解していれば,本書の前半の内容を理解することはさほど困難ではないと思われる。
 この例に限らず,著者は高等学校の数学をすべてきちんと理解し,使いこなせるようになっていれば,大部分の高度な科学,工学技術を比較的容易に身につけることができると考えている。ただ,自分の過去を振り返っても,高等学校の時代には何のために数学を勉強しているのか,そしてそれがどのような局面で役に立つのか,よくわからないままであったように思える。このように著者は他人に対して大きなことを言える立場ではないが,いずれにしても,目的意識をもって基礎をしっかりと理解することが重要である。
 もう一方で憂慮されることは,高等学校までの数学で教えられる内容がどんどん減ってきているという事実である。象徴的な例は,小学校での円周率が 3.14 から3 に変更されることであろう。世の中すべての人が,いわゆる理科系へ進学するわけではないので,このような決定が一概によいとか悪いとか言うことはできない。しかしながら,工学に身をおくものにとって,数学は日本語や英語と同じように,基本的な言語である。ぜひ高等学校までの数学の内容の質を落とすことなく,しっかりと教育していただくことを願っている。
 IT 時代ともてはやされているが,日本人すべてが IT のユーザになるわけでなく,IT 技術をクリエートしていくべきエンジニアを多数輩出することが急務であろう。ディジタル信号とシステムは IT 技術の重要な基礎の一つであり,ディジタル信号とシステムの基礎は数学である。インドが IT で成功を収めている背景には,インドの高度な数学教育(たとえば,日本では九九を暗記するだけだが,インドでは19×19までの掛け算をすべて暗記させるそうである)があることを忘れてはならない。
 さて,本書の後半では,サンプリング,ディジタルフィルタ,そして統計的信号処理について学ぶ。特に,ディジタルフィルタは「ディジタル信号とシステム」においてもっとも重要なテーマの一つであり,応用例とも深く関連している。また,統計的信号処理の基礎数学は「確率・統計」である。確率・統計も難解な数学であり,これに関しては高等学校までの数学の知識だけではちょっと足りないかも知れないが,本書ではその基本的な部分を重点的に解説する。
 本書では理論を具体的に学ぶために,MATLAB の信号処理ツールボックスを利用する。MATLAB が利用できない読者に対しても,不利にならないように配慮したつもりであるが,MATLAB を利用することによって,ディジタル信号とシステムに関する理解がいっそう深まるものと信じている。
 本書は,宇都宮大学大学院の「電子制御工学特論」でシステム同定理論を学ぶための基礎として講義した内容をまとめたものである。また,富士重工業 ('96,'98),新日鐵 ('99, '01),ヤマハ発動機 ('00) などの企業の信号処理のセミナーのテキストとしても使用した。特に,宇都宮大学足立研究室,粕谷研究室の学生諸君,そしてヤマハ発動機の受講生の皆さんには,本書についてまざまな有益な指摘を受けた。ここに感謝の意を表したい。最後に,本書の脱稿を根気強くお待ちいただいた東京電機大学出版局の植村八潮氏に感謝する。
   2002年1月

茅ヶ崎にて

足立修一
1 信号とシステム
2 基本的な離散時間信号
3 線形時不変システム
4 離散時間フーリエ解析
5 z変換
6 サンプリング
7 離散時間LTIシステムの表現と性質
8 ディジタルフィルタ
9 統計的信号処理

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