永久磁石同期モータの制御

センサレスベクトル制御技術

永久磁石同期モータの制御

センサに代わり、ソフト的に実現した位相速度推定アルゴリズムを用いて回転子位相と速度を得てベクトル制御を行う技術のこと。

著者 新中新二
ジャンル 電気
出版年月日 2013/09/01
ISBN 9784501116408
判型・ページ数 A5・312ページ
定価 本体4,200円+税
在庫 在庫あり

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永久磁石同期モータ(PMSM)の制御の基本は、回転子位相に基づくベクトル制御である。回転子の位相はセンサにより検出できるが、機構的に装着ができない場合もあり、これを解決するものがセンサレスベクトル制御技術である。センサに代わって、ソフト的に実現した位相速度推定アルゴリズムを用いて、回転子の位相と速度を得てベクトル制御を行う技術である。

 モータの効率駆動に注目が集まっている。今日の主要モータは交流モータであり,交流モータのなかで最も高い効率を達成しているのが,永久磁石同期モータ(PMSM:permanent-magnet synchronous motor)である。PMSMにおいては,最高効率点において95%超の効率が達成可能であり,ハイブリッド車,電気自動車などの効率を重視する用途においてはPMSMが多用されている。モータの達成効率は,モータ自体の特性に加えて,この駆動制御技術によるところが大きい。効率的なモータといえども,駆動制御を誤れば,所期の効率を得ることはできない。
 PMSMの効率を重視した駆動制御の基本は,回転子位相(位相は位置と同義)に基づくベクトル制御である。回転子位相の情報を得るには,回転子に位置・速度センサを装着すればよいが,装着により,熱的・機械的・電気的信頼性の低下,軸方法のモータ体格の増大,製造コストの増大などの問題が発生する。用途によっては,位置・速度センサの装着が機構的に不可能なこともある。この問題を根本的に解決する技術が,センサレスベクトル制御である。
 センサレスベクトル制御技術は,位置・速度センサに代わって,ソフトウェア的に実現した位相速度推定アルゴリズム(位相速度推定器とよばれる)を用いて,回転子の位相と速度を得てベクトル制御を遂行する技術であり,最高難度のハイエンド駆動制御技術のひとつである。近年,先導的メーカにおいては,位相速度推定器の理解が進み,センサレスベクトル制御駆動の応用が展開されている。とくに,家電分野では,PMSMのセンサレスベクトル制御駆動が常識化しつつあるようである。
 本書は,上記潮流の社会要請をふまえ,PMSMの最新・最先端のセンサレスベクトル制御技術を広く万民のものとすべく,これを解説したものである。本書には,以下の特長をもたせた。

(i)センサレスベクトル制御技術の中核は,回転子の位相・速度の推定を担う位相速度推定器にある。位相速度推定器の構成原理・方法は学術論文の数だけ存在し,これらを個々に把握することは容易ではない。本書は,主要な位相速度推定器の構成原理・方法,統一的視点に立ち体系的に解説した。統一性・体系性において本書に比肩する解説書は,著者の知る限りにおいて,現時点では存在しない。
(ii)本書は,読者をセンサレスベクトル制御技術の原理から最先端まで誘うものである。本書は,現時点の学会論文誌掲載論文,国際会議発表論文を超える最先端技術を多数かつ詳細に解説しており,本書を読破した読者は,先端技術論文を批判的に理解する力を身につけるであろう。
(iii)センサレスベクトル制御技術は,PMSMの数学モデルに立脚したモデルベースドかつ理論ベースドな技術であり,現場トレーニングのみで身につけることは限りなく不可能である。この理解と活用には,少なくとも電気系大学学部修了程度の基礎学力が必要である。本書は,これを備えた大学院生,企業技術者を短期間に世界トップレベルに引き上げるべく用意された教科書であり技術書である。短期間習得には,上述の統一性・体系性が威力を発揮する。
(iv)センサレスベクトル制御技術は,PMSMの本来性能を最高度に引き出す技術である。「理論ベースドな技術といえども,その真価はモータ実機の駆動において評価されねばならない」との認識のもと,本書は実際性・実用性を重視した解説を展開している。数値実験,実機実験の解説に多くの紙幅を割いたのもこのためである。

 本書は,統一性・体系性の観点から4部構成としている。原則として,基礎的な数学モデルを解説した第1部・第1章から順次学修されることを想定しているが,独立性の高い第2章と第3章は,最終章のあとにまわすことも可能である。本書を大学院15周セメスターの講義教科書として利用する場合には,第2章と第3章を進捗調整用の章として活用することも可能である。また,第3部と第4部とは,学修の順序を入れ替えることも可能である。
 最後になったが,本書出版にご協力を賜った方々を紹介し,衷心より感謝申し上げる。第2章の引用挿絵には,見城尚志先生,青島一朗氏のご協力を得た。第9章における実機検証用のデータは,天野佑樹君より提供を受けた。同君には,同章の数値検証および全章の構成にも協力を得た。第13章の実機実験のデータは,岸田英生氏の論文から引用させていただいた。近年の社会要請をご理解のうえ,本書出版にご尽力をくださった東京電機大学出版局・石沢岳彦氏には,特別の謝意を表する。

2013年4月4日 ミッドスカイタワーにて
新中 新二
第1部 数学モデルとシミュレータ
 第1章 理想条件を想定した数学モデルとベクトルシミュレータ
  1.1 uvw座標系上の数学モデルとベクトルシミュレータ
  1.2 αβ固定座標系上とdq同期座標系上の数学モデル
  1.3 γδ一般座標系上の数学モデルとベクトルシミュレータ
 第2章 非正弦誘起電圧を想定した数学モデルとベクトルシミュレータ
  2.1 背景
  2.2 uvw座標系上の数学モデル
  2.3 uvw座標系上のベクトルシミュレータ
  2.4 γδ一般座標系上の数学モデル
 第3章 軸間磁束干渉を想定した数学モデルとベクトルシミュレータ
  3.1 背景
  3.2 dq同期座標系上の数学モデル
  3.3 γδ一般座標系上の数学モデル
  3.4 数学モデルの検証
  3.5 ベクトルシミュレータ
第2部 センサレスベクトル制御系の構造と共通技術
 第4章 センサレスベクトル制御系の基本構造と共通技術
  4.1 ベクトル制御系の基本構造
  4.2 センサレス駆動における共通技術
第3部 駆動用電圧・電流を用いた位相推定
 第5章 一般化回転子磁束推定法
  5.1 全極形D因子フィルタ
  5.2 一般化回転子磁束推定法
  5.3 センサレスベクトル制御系
 第6章 1次フィルタリングによる回転子磁束推定
  6.1 γδ一般座標系上の回転子磁束推定
  6.2 行列ゲインの方式
  6.3 固定ゲインを用いた回転子磁束推定法の実現
 第7章 2次フィルタリングによる回転子磁束推定
  7.1 γδ一般座標系上の回転子磁束推定
  7.2 行列ゲインの方式
  7.3 回転子磁束推定法の実現
 第8章 同一次元D因子状態オブザーバへの展開
  8.1 B形D因子状態オブザーバ
  8.2 A形D因子状態オブザーバ
 第9章 電圧制限を考慮した軌跡指向形ベクトル制御
  9.1 軌跡指向形ベクトル制御の原理とシステム制御
  9.2 非電圧制限下の制御
  9.3 電圧制限下の制御
  9.4 楕円軌跡指向形ベクトル制御法の数値検証
  9.5 楕円軌跡指向形ベクトル制御法の実機検証
第4部 高周波電圧印加による位相推定
 第10章 システム構造と高周波電圧印加
  10.1 背景とシステム構造
  10.2 印加高周波電圧と応答高周波電流
 第11章 高周波電流の正相逆相分離による位相推定
  11.1 相関信号生成器の基本構造
  11.2 振幅抽出器
  11.3 相関信号合成器
  11.4 相関信号生成器の特性検証
  11.5 高周波積分形PLL法
 第12章 高周波電流の軸要素成分分離による位相推定
  12.1 相関信号生成器の基本構造
  12.2 振幅抽出器
  12.3 相関信号合成器
  12.4 実験結果
 第13章 高周波電流の軸要素積による位相推定
  13.1 相関信号生成器の基本構造
  13.2 高周波電流相関信号の評価
  13.3 高周波電流相関信号の正相関特性
  13.4 位相推定特性の数値検証
  13.5 位相推定特性の実機検証
  13.6 実験結果
参考文献
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