電力自由化と技術開発

21世紀における電気事業の経営効率と供給信頼性の向上を目指して

電力自由化と技術開発
著者 横山 隆一 監修
浅野 浩志
荒井 純一
岡田 健司
久保川 淳司
栗原 郁夫
小柳 薫
陳 洛南
中西 要祐
新村 隆秀
ジャンル 電気
出版年月日 2001/09/01
ISBN 9784501110000
判型・ページ数 A5・466ページ
定価 本体7,600円+税
在庫 在庫あり

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電力自由化の技術課題を解説した技術者必携の書

 政府規制下にあった電力事業が部分的に小売が自由化し、電力自由化は必然の流れとなり、技術的な対応が急務となっている。本書は電力自由化に向けた技術者向け解説書として刊行。EU,米国等の諸外国の実例と技術課題を検討し日本の電力事情や動向,技術課題等を解説した関係者必携の書。この分野をリードする第一線の研究者陣が執筆した。

 エネルギー等の諸分野での規制緩和と自由化が世界各国において進められており,とりわけ,米国での競争的電力市場の創設,英国での完全電力自由化への移行,さらにEU諸国の電力自由市場の統合が,わが国の電気事業のあり方にも大きな影響を与えた。1997年7月に,電気事業審議会基本政策部会から,日本型電力小売自由化と言うべき「部分自由化」が打ちだされ,1995年12月に施行された卸電気事業の自由化と相俟って,大口需要家は,従来の区域内電気事業者のみならず,区域内外の新規発電事業者及び電気事業者からの電力購入が可能となり,また,電力供給に参入しようとする事業者にとっては自社保有の発電設備以外の他発電事業者や区域内外の電気事業者からの電源調達も可能となるなど選択の自由度が向上した。さらに,小売り託送および料金設定ルールが明示され,2000年3月より,我が国においても競争原理に基づく電力市場自由化の本格的潮流が動きだしている。今後は,新たな環境下における電気事業の経営効率の向上,供給信頼度の確保のための電力設備形成及び公平性のある系統運用と送電サービスの確立が求められている。
 このような電力自由化の流れの中で,建設期間が短く,需要地に近接して設置が可能であり送電ネットワークへの負担が軽く,またクリーンで地球温暖化の防止に貢献することから,天然ガスコジェネレーション,マイクロタービンや燃料電池などの新エネルギー利用技術及び風力発電や太陽光発電などの自然エネルギー利用発電といった分散電源が注目を集めている。総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会(2001年5月)においては,2010年度における供給サイドの新エネルギー導入見通し(現行対策維持ケース)は,原油換算で約878万Klであり,1次エネルギー総供給に占める割合は,1.4%にとどまると見込まれている。これをふまえ官民の最大限の努力を前提とした新エネルギー導入見通し(目標ケース)では,石油換算で1,910万Klとなり,この場合の1 次エネルギー総供給に占める割合は,3.2%になることが期待されている。新エネルギー(再生可能エネルギー)による電力の導入促進のための法的措置による諸般の制度の整備と並んで,このような新エネルギー利用の分散電源が電力系統に導入されるにあたっては,系統の計画・運用への影響評価,系統連系時の接続技術要件と保護システムの整備,系統周波数,電圧,高潮波などの電力品質の管理と制御に関する技術開発が重要となっている。
 一方,電力自由化に伴う電力系統運用に係わる懸念も指摘されている。規制緩和が進展するなかアメリカ西部地域の大停電事故(1994年12月,1996 年7月,1996年8月),マレーシアの全系崩壊(1996年8月),ニュージランド北島の長期間停電(1998年1月)など電力系統支障が多発している。これは電力自由化により送電ネットワークはコモンキャリア化され,多くの市場参加者間の複雑な電力取引によりネットワーク運用に歪みが生じ,電力潮流が混雑(過負荷)状態に陥ったことが原因といわれている。これらの対応として,送電可能容量の算定と評価,系統安定度,電圧安定性,事故波及防止などの供給信頼性確保に係わる技術開発,パワーエレ機器による送電可能容量の向上技術が求められている。
 また,アメリカで他州に先駆けて電力自由化に踏み切ったカリフォルニア州は,電力危機に襲われている。州の四割にあたる千三百万人が利用している最大手電力会社パシフィック・ガス&エレクトリック(PG&E)が経営難による資金不足から十分な電力の調達ができず,広い範囲で計画停電を実施せざるを得なくなり,ついには倒産にいたった。エネルギー分野への競争導入の旗の下に規制緩和がすすめられ,同州の電力会社は発電と送電部門が分離され,電力は卸電力取引所(PX)から調達することが義務付けられて,そこから電力を購入して企業や一般消費者に送電・販売するという仕組みとなった。同州では,厳しい環境規制と不透明な電力需要動向のもとでコストのかかる発電設備の新設はここ十年まったく行われていなかった。この状況において,シリコンバレーに代表される IT産業の急成長,人口の急増加さらには豪雨,寒波,猛暑といった異常気象などの複数の要因が重なって電力需要が急増加し,電力供給力不足に陥り電力価格が暴騰したことがこの危機の第一要因と考えられている。しかし,始まったばかりの自由電力市場の中で,発電事業者がより高く電力を売ろうと供給調整や価格調整をはかったのではないかとの意見,あるいは前日入札型スポット市場,強制的な発電設備の売却命令,ストランデッドコスト回収までの決済価格へのプライスキャップ制などの市場メカニズムの未熟さに起因するといった見方もある。これらの対応としては,供給信頼度監視機構の見直し,その維持のための送配電設備計画手法の確立,需給運用と設備補修計画の策定,信頼度解析ソフトウェア技術の開発,双方向情報通信技術の開発の重要性が認識されている。
 我が国の電気事業体制のあり方に関しては,2000年3月の部分自由化の効果を3年に渡って検証し,さらなる自由化を進めるか否かを決定することとなっている。しかし,電力市場の自由化は,従来の供給体制,エネルギー事情,国際あるいは地域間連系構造,供給信頼性及び安定運用に対する需要家の要望等の国情によりその選択するべき道も大きく異なる。我が国の電力事業は,世界でも最も良質で信頼性の高い電力を安定に供給してきていることから,今後の電力自由化の方向は,他国を模倣することなく,我が国電気事業の特性に則した独自の最適選択をすることが望まれる。
 本書においては,電力自由化という新環境下において電気事業の経営効率の向上と供給信頼度の確保のための重要ソフト及びハード技術:電力市場のための基礎経済理論(第二章 岡田健司),送電サービスと送電料金設定理論(第三章 浅野浩志),短期限界費用と最適潮流計算(第四章 久保川淳司),系統維持運用・制御とアンシラリーサービス(第五章 栗原郁夫,岡田健司),安定度評価と固有値解析(第六章 的場誠一),供給信頼度評価と電力設備形成(第七章 陳洛南),電力系統の運用・解析支援シミュレーション技術(第八章 中西要祐),分散電源連系と電圧管理技術(第九章 福山良和),分散型電源系統連系と単独運転検出技術(第十章 舟橋俊久),新エネルギー導入と可変速回転機器技術(第十一章 小柳薫),電力品質維持とパワーエレクトロニクス(第十二章 荒井純一),新エネルギー利用と分散電源(第十三章 藤田吾郎),分散電源の系統計画への影響評価(第十四章 新村隆英)について述べる。本書において紹介する各種の先端技術が,廉価で信頼性の高い電力を安定的に供給できる電気事業及び電力系統の構築の一助となることを期待している。

2001年8月
監修 横山隆一
第1章 電力自由化動向と技術課題
第2章 電力市場のための基礎経済理論
第3章 送電サービスと送電料金設定理論
第4章 短期限界費用と最適潮流計算
第5章 系統維持運用・制御とアンシラリーサービス
第6章 安定度評価と固有値解析
第7章 供給信頼度評価と電力設備形成
第8章 電力系統の運用・解析支援シミュレーション技術
第9章 分散電源連係と電圧管理技術
第10章 分散型電源系統連系と単独運転検出技術
第11章 新エネルギー導入と可変速回転機器技術
第12章 電力品質維持とパワーエレクトロニクス
第13章 新エネルギー利用と分散電源
第14章 分散電源の系統計画への影響評価
第15章 電力自由化の今後の展望

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