たのしくできる 単相インバータの製作と実験

たのしくできる 単相インバータの製作と実験
著者 鈴木 美朗志
ジャンル 全て
電気
シリーズ たのしくできる
出版年月日 2000/07/01
ISBN 9784501109103
判型・ページ数 A5・144ページ
定価 2,200円(本体2,000円+税)
在庫 品切れ・重版未定

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 単相インバータのしくみと,単相インバータによる機械の制御について,基礎からまとめた入門書。主に,インバータの基本であるアナログ単相インバータについて取り上げ,回路の製作・実験を通して電子回路技術の向上を目指す。本文中に登場する回路図には素子名,ICピン番号,抵抗値,静電容量などの値や,部品の規格,メーカ名を記載してあり,実際に製作可能である。

 インバータは,直流電力を任意の周波数の交流電力に変換する電力変換装置である。すなわち,直流を交流に変換する装置であるが,その直流は,コンバータによって,商用電源の交流を整流・平滑して作られる。したがって,インバータ装置としてみると,商用電源(交流)→直流 →交流(可変電圧・可変周波数)という一連の電力変換装置である。
 インバータの出力は可変電圧・可変周波数の交流なので,誘導モータの速度制御に最適である。このため,工場での,ポンプ,ファン,工作機械,ベルトコンベヤなど,誘導モータが使われている多くの機械や装置の速度制御に利用されている。さらに今日では,一般家庭のルームエアコン,洗濯機,冷蔵庫などにも普及してきた。
 私がこの本を書くきっかけとなったのは,横須賀市にあるオカムラ技術短期大学校で,「電子回路」,「自動化制御回路」という科目を担当したことにある。この短期大学校は,労働省が管轄し,神奈川県が認定している公認校で,メカトロニクス技術科がある。1998年10月より1999年9月までの1年間,「電子回路」では,整流回路,オペアンプ回路,正弦波発振回路などを取り上げ,「自動化制御回路」では,位相制御回路,リレーシーケンス回路,単相インバータ回路などを講義し,回路の製作・実験に十分な時間をかけた。本書は,上記の短期大学校で使用した自作テキストを元に,修正・加筆をしたインバータの入門書である。
 オカムラ技術短期大学校での経験を生かして,本書は,単相インバータのしくみと単相インバータによる機械の制御について,基礎から学ぼうとしている方々に役立つように,以下の点を留意してまとめた。
 1.インバータには三相交流用と単相交流用,そして,ディジタルとアナログのインバータがある。だが,その基礎はアナログ単相インバータである。本書はインバータの入門書であるので,対象はアナログ単相インバータとする。
 2.単相インバータ回路は,リレーシーケンス回路を含む,多くのアナログ電子回路によって構成されている。このため,一つ一つの回路について,実験による実測値を交えて解説する。
 3.この本のすべての回路は製作することができる。このため,回路図には素子名やICのピン番号,抵抗値,静電容量の値などを記入する。また,部品を購入しやすいように,規格やメーカ名を記入した部品リストを表示する。
 4.教科書のように理論を学ぶだけではなく,回路の製作・実験を通して電子回路技術の向上を目ざす。
 5.一つ一つの回路がどれも大切な役割をもって,単相インバータという一種のシステムを構成している。一つのシステムを構築することは,インバータに限らず,これからのもの作りに重要である。
 6.単相インバータを製作するだけではなく,製作した単相インバータによって機械の速度制御をする。このため,インバータの特性と機械を動かす誘導モータの特性との関係を取り上げる。
 現在,マイコン制御によるディジタルインバータが一般的である。しかし,このディジタルインバータのしくみを,初学者が理解することは非常に難しいと思われる。まずは基礎・基本である。本書の単相インバータは,PWM制御回路を使用したアナログインバータであり,ある程度の電子回路の知識があれば理解できるように企画・執筆したものである。この本が,読者の方々の技術力向上に貢献できれば幸いである。
 なお,本書の単相インバータは,インバータの動作原理やしくみを学ぶ教材として最適と思うが,特定の場所では,実用装置としての利用も可能である。
 最後に,企画・出版に至るまで,終始多大な御尽力をいただいた東京電機大学出版局の植村八潮氏,松崎真理氏をはじめ,関係各位に心から御礼を申し上げる次第である。
 2000年6月
筆者記す
1. インバータによる誘導モータの速度制御
1.1 インバータの有用性
   1.1.1 インバータとは
   1.1.2 誘導モータの回転速度とV/f一定制御
1.2 誘導モータ
   1.2.1 誘導モータの動作原理と構造
  1.2.2 誘導モータの特性
 1.3 単相インバータの基本回路
 1.4 H型ブリッジ回路の動作
2. 直流電源回路
2.1 コンバータの原理
2.2 突入電流抑制回路と放電回路
2.3 ノイズフィルタ
2.4 制御回路用電源回路
2.5 DC-DCコンバータ
3. リレーシーケンス回路
3.1 リレーの基本回路
   3.1.1 押しボタンスイッチ
   3.1.2 リレーの構造と動作
   3.1.3 シーケンス図
   3.1.4 自己保持回路
3.2 配線用遮断器
3.3 電磁接触器
3.4 タイマ回路
3.5 過電流検出回路
3.6 シーケンス制御によるコンバータの駆動
4. PWM制御回路
4.1 PWM制御回路の動作とH型ブリッジ回路(インバータ)の出力電圧波形
4.2 正弦波発振回路の理論
   4.2.1 発振回路の構成と発振条件
   4.2.2 電圧帰還形としての発振原理
   4.2.3 正帰還回路を単峰フィルタとみなした発振原理
   4.2.4 ウィーンブリッジとオペアンプを組み合わせた発振原理
  4.3 正弦波発振回路と反転増幅回路
  4.4 三角波発振回路とコンパレータ
  4.4.1 三角波発振回路
  4.4.2 コンパレータ
 4.5 デッドタイム挿入回路
 4.6 アーム間短絡防止回路
5. IGBTを使用した単相インバータ回路
 5.1 IGBT
5.2 IGBTのスイッチング動作と電力損失
5.3 ドライブICによるIGBT駆動回路
5.4 サージ電圧抑制回路
5.5 単相インバータ回路
  5.5.1 単相インバータの主回路
  5.5.2 サージ電圧抑制回路基板の製作
  5.5.3 アーム間短絡防止回路と駆動回路基板の製作
6. 周波数カウンタ回路
 6.1 7セグメントLEDとデコーダ
 6.2 プログラマブル水晶発振器
 6.3 3桁周波数カウンタ回路
7. 単相インバータの組立て
 7.1 単相インバータの外観
 7.2 コンバータとその周辺回路の接続
 7.3 PWM制御回路基板,デッドタイム挿入回路基板,アーム間短絡防止回路および駆動回路基板の接続
 7.4 変圧器,制御回路用電源回路基板,DC-DCコンバータ基板の接続
 7.5 アーム間短絡防止回路および駆動回路基板, サージ電圧抑制回路基板,DC-DCコンバータ基板の接続
 7.6 サージ電圧抑制回路基板とIGBTの接続
 7.7 周波数カウンタ回路基板と表示回路基板の設置
8. 単相インバータによる機械の速度制御
 8.1 単相誘導モータの回転速度?トルク特性の測定
 8.2 ベルトコンベヤの速度制御
   8.2.1 ベルトコンベヤ
   8.2.2 単相インバータによるベルトコンベヤの速度制御
   8.2.3 単相インバータ回路の波形観測
 8.3 ベルトコンベヤ連続運転における単相誘導モータの温度測定
 8.4 卓上ボール盤の速度制御
9. 位相制御回路
 9.1 SCRとトライアックによる交流の位相制御
 9.2 ダイアックによるトリガ発生回路
 9.3 位相制御回路による負荷電圧の制御
 9.4 位相制御回路の製作
 9.5 位相制御回路各部の波形観測
 9.6 扇風機の速度制御
   9.6.1 単相インバータによる扇風機の速度制御
   9.6.2 位相制御回路による扇風機の速度制御
参考文献
本書で扱った単相インバータの入手先
索引

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