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晶析工学

工業・工学

久保田徳昭(編著) / 平沢 泉(著) / 小針昌則(著)

A5判  256頁 並製
 3,000円+税
ISBN 978-4-501-63010-2 C3058
在庫あり

奥付の初版発行年月 2016年10月
書店発売日 2016年10月05日
登録日 2016年08月30日

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解説

溶液の温度を上げ下げし、目的成分を結晶化させ析出する操作を晶析という。その晶析の理論や技術、実験法、解析法を体系立ててまとめた初の教科書。

紹介

晶析の理論や技術、実験法、解析法を体系立ててまとめた初の教科書。問題演習も準備して理解の助けとなるよう配慮。

溶液の温度を上げ下げし、目的成分を結晶化させ析出する操作を晶析という。その晶析の理論や技術、実験法、解析法を体系立ててまとめた初の教科書。専門用語や定義は初学者向けに解説するとともに、問題演習を用意して理解の助けとなるよう配慮した。深淵なる晶析の世界へ誘う興味深いコラムも用意。医薬、食品、機能品、宝石、環境、エネルギーに携わる技術者・開発者必読の書。

目次

序章 初学者の皆様へ
第1章 晶析とはなにか
 1.1 晶析とは
 1.2 晶析に関するアンケート調査
 1.3 核化と結晶成長
 1.4 晶析装置
 引用文献
第2章 溶解度,過飽和度および結晶
 2.1 溶解度
 2.2 過飽和度
 2.3 結晶の基礎
 引用文献
 演習問題
第3章 核化
 3.1 一次核化の理論
 3.2 一次核化の実験
 3.3 二次核化
 3.4 工業装置内における二次核化速度
 引用文献
 演習問題
第4章 結晶成長
 4.1 結晶成長に関わる3つの速度過程
 4.2 表面集積過程の理論
 4.3 結晶成長に対する不純物効果
 4.4 工業装置内における結晶成長
第5章 準安定領域と核化
 5.1 準安定領域の定義
 5.2 MSZW測定実験
 5.3 MSZWの理論
 5.4 MSZWから核化速度を推定できるか
 引用文献
 演習問題
第6章 ポピュレーションバランスモデル
 6.1 核化および成長速度の表現と個数密度の定義
 6.2 ポピュレーションバランス式
 6.3 マスバランス式
 6.4 ポピュレーションバランスモデルの構造
 6.5 数値計算例
 引用文献
 演習問題
第7章 回分冷却晶析
 7.1 歴史的流れ
 7.2 種晶成長法
 7.3 核化誘導法
 7.4 冷却晶析における微結晶の製造
 引用文献
 演習問題
第8章 貧溶媒晶析
 8.1 貧溶媒晶析における過飽和度の表現
 8.2 貧溶媒晶析における核化と結晶成長
 8.3 貧溶媒晶析の実験例
 8.4 オイル化
 引用文献
 演習問題
第9章 反応晶析
 9.1 溶解度と晶析特性―定性的議論―
 9.2 単分散化の要件
 9.3 環境分野における反応晶析
 引用文献
 演習問題
第10章 多形制御と結晶化による光学分割
 10.1 多形制御
 10.2 結晶化による光学分割
 引用文献
 演習問題
第11章 結晶純度と結晶形状
 11.1 結晶純度
 11.2 結晶形状
 引用文献
 演習問題
第12章 結晶収量と装置設計
 12.1 マスバランス
 12.2 結晶収量の計算―1回の晶析で何トン生産できるか―
 12.3 生産速度の計算―1日何トン生産できるか―
 12.4 装置容積の計算―装置の大きさは―
 引用文献
 演習問題
第13章 スケールアップ
 13.1 冷却に関する問題―大きな装置は冷えにくい―
 13.2 混合に関する問題―大きな装置は混合しにくい―
 13.3 核化に対するスケールアップ効果
 13.4 結晶粒径に対するスケールアップの影響―種晶成長回分冷却晶析の場合―
 13.5 ろ過時間に対するスケールアップの影響
 引用文献
 演習問題
第14章 準安定領域―従来の考え方と本書の提案―
 14.1 準安定領域の解釈―問題はどこにあるのか―
 14.2 最も広く受け入れられている解釈―準安定領域は核化準備期間である―
 14.3 古典核化理論をベーストした説明
 14.4 結晶粒子蓄積量に着目した解釈―核化準備期間ではない―
 14.5 MSZWの実験的挙動の解釈
 引用文献
演習問題解答
索引
英文索引

前書きなど

 晶析という言葉は、少し分かりにくいかもしれません。晶析とは,物質精製および結晶粒子製造を目的として行われる工業的結晶化のことです。実験室の限られた理想的な条件下で行われる結晶化とは一線を画しています。実験室における結晶化は,あらかじめ注意深く準備された溶液から欠陥のないきれいな結晶を作ることが目的となることがほとんどです。これに対して,工業現場では多くの不純物を含む溶液から純度の高い結晶を作ることが要求されます。しかも,経済的にかつ大量に作らなくてはならないのです。晶析工学は,晶析のための工学です。晶析は,近年大量生産現場のみならず,機能性化学製品あるいは医薬品の製造にも広く使われています。また,晶析は広く横断的にさまざまの工業分野で使われています。晶析の特長は,1回の結晶化操作で純度の高い固体粒子が得られることです。晶析により得られる結晶粒子は,目的あるいは物質によって,数10nmの微粒子から数mmの粗粒子に及びます。近年は,結晶粒子製品に対する要求が厳しく,粒径,粒子形状,純度の厳密な制御が必要となっています。
 今から40数年前,結晶核発生すなわち核化の実験をしたことがあります。どんな実験かというと,500mLのガラス製攪拌容器に取った硝酸カリウム水溶液を冷却して結晶を発生させる実験です。冷却が進んで飽和温度以下の領域に入るとやがて微結晶が発生し,その後すぐにサンプル溶液全体が急に白濁します。晶析の何たるかをよく知らないまま始めた準安定領域とは,溶液の飽和温度と白濁温度(核化温度)の間の温度領域のことです。実験は非常に簡単で誰でもすぐできるのですが,実はこのデータの解釈が難しいのです。あたかも準安定領域内では核化は起こっていないように見えるのが曲者です。
 準安定領域は英語でmetastable zoneといいます。もちろん,”準安定”ですから熱力学的安定領域ではありません。しかし,その何たるかは充分には理解されてきませんでした。従来さまざまな解釈がなされていて,その中でも正統(?)とされる解釈は,「この領域では核化は起こらない。この領域では溶液の構造が核化に向かって徐々に変化していく。いわば,核化準備のための非定常的変化の起こっている領域だ」というものです。ところが,この準安定領域の非定常的解釈は,晶析全般における基本的概念あるいは現象とうまくなじみません。むしろ,従来のこの解釈は,晶析工学の進歩を遅らせている元凶のように思われるほどです。元凶とはいわないまでも,どこか怪しいと多くの人が感じていると思います。
 本書における準安定領域の解釈は,上述の非定常的解釈とは全く別なもので,結論をいえば,非定常的準安定領域は存在しないとするものです。本書の考え方は,特に第5章において,詳しく述べます(ただし,本書では準安定領域という語はそのまま使用しました)。この新しい解釈によって準安定領域と核化速度が合理的に関係づけられ,準安定領域に関する多くの実験事実と他の晶析現象が矛盾なく説明できます。
 本書では,準安定領域と待ち時間(すなわち等温系における白濁化までの時間)の解釈と説明に多くのページを割きました。その理由は,今まで準安定領域と待ち時間の解釈が適切になされていなかったため,晶析全体の体系的理解が困難になっていたという思いがあったからです。しかし,本書は準安定領域と待ち時間のみの解説書ではありません。
 本書の目的は,大きく2つです。1つは,準安定領域と待ち時間を詳しく説明することです。それは,核化過程を直接捉えることはほとんど不可能ですが,核化に密接に関係する測定値としての準安定領域の大きさおよび待ち時間を矛盾なく説明することで,核化を理解することができると考えたからです。本書のもう1つの目的は,実務を重視した晶析工学を体系的に解説することです。
 本書の構成は,次のとおりです。序章から第14章まで,全部で15章からなっています。序章では初学者のために晶析を簡単に解説しました。第1章では,晶析の概略を述べました。第1章に一通り目を通すことにより,晶析の概略が把握できるようにしました。第2章は,晶析の理解のための基礎をまとめています。第3章から第6章は,晶析の基礎的,理論的部分を扱っています。第7章から第13章では,晶析技術の解説をしています、実務を優先する読者は,第3章から第6章は省略してもよいでしょう。しかし,晶析の理解を深めたい読者は,第3章から第6章も読むことをお勧めします。
 まず,第3章から第6章までの簡単な紹介をします。第3章では,核化について解説しています。一次核化,二次核化および工業装置内の核化の順で解説しています。特に,等温条件下における待ち時間の確率的挙動について詳しく述べました。本書の特長の1つです。第4章では,結晶成長の基本的な事項を扱っています。すなわち,結晶表面に対する不純物効果,そして,工業装置内の結晶懸濁系における結晶成長現象についての解説です。不純物効果の詳細な解説は,本書のもう1つの特長です。第5章は,準安定領域の新しい解釈です。核化確率あるいは核化速度と準安定領域の関係を特に詳細に説明しています。第3章における待ち時間との関係にもふれました。上述しましたが,本書の準安定領域の新しい解釈は,従来の意味での準安定領域の存在を否定するものです。核化の確率的様相の理解のために,Excelシート上で簡単に実行可能なモンテカルロシミュレーションも紹介しています。第6章では晶析プロセスの数学的枠組みとしてのポピュレーションバランスモデルの概略を述べました。ここでは,とかく理論的な取扱いが難しいといわれている晶析過程が,核化速度および結晶成長速度などの速度過程が適切にモデル化できている限り,数学的に厳密に記述できることを示しています。
 第7章から第13章までは,実務を念頭においた章ですが,操作および技術の単なる説明ではなく,理論的にも統一がとれたものになるよう意識して執筆しました。第7章は,バッチ冷却晶析の解説です。回分冷却晶析に関する研究の歴史的流れを述べた後,種晶成長法について詳しく述べています。種晶成長法,すなわち,添加した種晶を成長させて製品とする方法はバッチ冷却晶析における実用的かつ確実な技術だからです。第8章では,貧溶媒晶析について解説しました。貧溶媒晶析における過飽和度の表現方法,核化および結晶成長について述べ,次いで貧溶媒晶析の実験を紹介し,最後にオイル化現象について説明しています。第9章は,反応晶析です。難溶性物質と可溶性物質における晶析特性の違い,核化と成長の分離による結晶粒径分布の単分散化,ダブルジェット法,それに,環境分野における晶析の利用等について解説しています。第10章では,多形制御と結晶化による光学分割の解説をしました。多形については,溶液媒介転移の説明とその制御法の紹介をしています。溶液媒介転移は,多形制御において重要な現象です。また,光学分割については,優先晶析法の基本的な説明のほか,粒径差を持たせた種晶による光学分割,添加物による光学分割の実験例を紹介しています。第11章は,結晶純度と結晶形状の問題を扱っています。結晶純度の項においては,結晶形状の形成の基本的機構を解説した後,形状制御法について述べています。第12章は,結晶収量と装置設計を扱っています。結晶収量と装置設計の問題は,マスバランス式が基本です。回分晶析を対象として解説しました。第13章は,晶析におけるスケールアップの問題です。晶析の書籍では,従来ほとんど扱われてこなかったろ過の問題もここで扱っています。最後の第14章は,準安定領域に関する従来の考え方のレビューです。上述の準安定領域の非定常的解釈のほかにも,いくつかの解釈が存在することが述べられています。第14章は省略しても実務には全く差し支えはありません。
 本書を執筆するに当たっては,多くの方々の協力と励ましがありました。筆者が岩手大学在職中の共同研究者および学生諸君には大変お世話になりました。本書に引用したデータのかなりの部分は,岩手大学在職中のものです。昔の同僚と学生諸君に深く感謝いたします。序章,第1章および第9章を担当してくださった早稲田大学の平沢泉教授,コラムを1つと第6章を執筆してくださった小針昌則博士にも感謝いたします。お二人の協力なくしては,本書はできなかったと思います。小針博士は,本書執筆のきっかけを作ってくださいました。また,初校の段階で数多くの間違いの指摘をしてくれた早稲田大学平沢研究室の学生諸君にも感謝いたします。本書を出版するにあたりご尽力くださった吉田拓歩氏(東京電機大学出版局)に深く感謝いたします。最後に,私の研究生活を長い間支えてくれた妻和子に感謝いたします。

2016年8月
編著者 久保田 徳昭

著者プロフィール

久保田徳昭(クボタノリアキ)
平沢 泉(ヒラサワイズミ)
小針昌則(コバリマサノリ)

上記内容は本書刊行時のものです。

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