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サービス工学の技術 ビッグデータの活用と実践

コンピュータ

本村陽一(編著) / 竹中 毅(編著) / 石垣 司(編著)

A5判  218頁 並製
 2,800円+税
ISBN 978-4-501-55100-1 C3004
在庫あり

奥付の初版発行年月 2012年11月
書店発売日 2012年11月30日

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紹介

サービス工学の研究事例、ビッグデータの活用事例を収録。そのためのアプローチと分析・解析技術についても解説。

サービス工学の研究事例、ビッグデータの活用事例を収録。そのためのアプローチと分析・解析技術についても解説。ビッグデータ関連書籍の中では唯一研究事例・研究技法にまで言及している。

目次

第1章 サービス工学とは
 1.1 サービス産業の生産性向上に向けたサービス工学への期待
 1.2 生活者を起点としたサービス生産性向上に向けて
第2章 大規模データに基づくサービス工学
 2.1 サービスにおける大規模データ
 2.2 大規模データによる利用者の計算モデル化
 2.3 サービスにおける予測と最適化のループ
 2.4 大規模データを用いたサービス支援システム
 2.5 大規模データに基づくサービス工学のめざすもの
 2.6 おわりに
第3章 サービス工学基盤技術開発
 3.1 はじめに
 3.2 サービス産業の課題整理とアプローチ
 3.3 観測・分析・設計・適用のループ
 3.4 観測技術
 3.5 分析技術
 3.6 設計技術
 3.7 適用技術
 3.8 おわりに
第4章 大規模データからの計算モデル構築
 4.1 サービス利用者のモデル化
 4.2 ベイジアンネットによる計算モデル化
 4.3 消費者行動モデリング
 4.4 社会応用とアクションリサーチ
第5章 統計的因果推論のサービス工学への適用可能性
 5.1 はじめに
 5.2 準備
 5.3 因果効果
 5.4 統計的独立関係を利用したアプローチ
第6章 データ同化によるシミュレーション計算と大規模データ解析の融合
 6.1 データ,情報,知識
 6.2 大規模データにもとづく研究の指針
 6.3 大規模データと知識発展スパイラル構造
 6.4 サービスサイエンス研究の肝要点
 6.5 データ同化
 6.6 受益者・生活者の視点と目線
第7章 プロ野球ファンの観戦行動のモデル化
 7.1 はじめに
 7.2 モデルの目的と構築方法
 7.3 リピータモデルの構築
 7.4 ファンモデルの構築
 7.5 ファンモデルをファン構造のうえで考える
 7.6 おわりに
 付録 認知的クロノエスノグラフィ
第8章 よりよい医療サービス提供に向けたヒヤリ・ハット情報の活用
 8.1 はじめに
 8.2 医療機関におけるサービスの質管理と質保証
 8.3 病院薬剤部において蓄積されるヒヤリ・ハットデータを活用する
 8.4 まとめと今後の課題
第9章 小売サービス
 9.1 小売業サービスの実際
 9.2 研究の概要
 9.3 動的個人モデル
 9.4 推定のアルゴリズム
 9.5 解析結果
 9.6 まとめ
 付録
第10章 サービス視点からのマーケティング情報と意思決定
 10.1 経済サービス化のマーケティングへのインパクト
 10.2 消費者意思決定過程―製品の付加価値化とサービス化
 10.3 サービス視点からの戦略的データベースマーケティング
 10.4 ソーシャルサービス視点からのマーケティング戦略
 10.5 おわりに
第11章 大規模データに基づく顧客行動のモデル化
 11.1 顧客行動のモデル化と大規模実データの活用
 11.2 顧客セグメントと商品カテゴリ
 11.3 顧客セグメントと商品カテゴリの生成
 11.4 顧客行動のモデル化
 11.5 顧客セグメントの活用
 11.6 おわりに
索引

前書きなど

 今やさまざまな場面や文脈において,歴史的に大きな転換点に立っているということが語られている。労働人口およびGDPの第三次産業比率が増大していることによる産業構造の変革,製品のコモディティ化と社会の成熟化によるモノづくりからコトづくりへの価値観の転換,社会と科学技術の今後のあり方,ITインフラのクラウド化と情報端末のモバイル化により加速する情報サービスのソーシャル化,そしてそのうえで大量のデータが蓄積されることによる,いわゆるビッグデータの活用への要請などである。
 こうした転換期にあって,工学においてもその視点が,これまで客観的に扱うことが容易であったモノに対する技術の体系から,人の行動や心理にかかわるコトを扱うための技術の体系へと移行していくことが時代の必然になっている。そして,まさにこうした時代背景の中で「サービス工学」という分野が誕生し,その流れを加速しつつある。
 2012年7月にはHuman side of service engineeringという国際会議の第一回目がサンフランシスコで開催され,2012年10月には国際学会であるサービス学会(Serviceology)が日本で発足した。
 本書は,こうした時代にあってサービス工学を実問題解決のなかで実践している事例を紹介し,その中核的技術としての大量のデータ,いわゆるビッグデータを活用するいくつかの手法やその周辺技術の紹介を行う。ただし,サービス工学はまだその全貌を示すには誕生して間もないため,本書ではサービス工学を体系だって説明するというよりは,サービス工学が対象とする分野や考え方,手法と応用例を具体的に紹介することで,読者がサービス工学の実例を理解できることを目的にしている。現時点におけるサービス工学の技術や問題は,従来のマーケティングや情報工学,人間工学と何かが決定的に違うように見えるわけではない。どちらかというと,サービス工学という新たな切り口と問題意識からスタートして,実際の問題に取り組む中で,問題解決に使う手段は従来の分野の中に存在するものを適用することも多い。それは,サービスという対象はこれまで存在していなかった抽象的な形而上学的なものではなく,すでに何らかのかたちで学問や技術においても取り扱われており,現実社会における活動のなかですぐに利用可能な要素により構成されていることに起因する。そして当然ながら,サービス工学の結果として生まれた成果も,やはりただちに現実の社会やサービス現場で適用され評価されるものである。つまりサービス工学は,カール・ポパーがいうところの「ピースミールエンジニアリング」,すなわち「漸次的に社会を改良する漸次的技術」として実践されなければならないのである。
 そしてサービス工学の集団が現場に導入されることによって,サービスの内容はその介入の影響を受け,その結果はまた新たな観測として結果に表れるだろう。そのサービスの現場で起こる事象が変化する様は,あたかもサービスを構成するすべての要素が有機的に結合した生命体(オートポイエーシス)を望ましい状態に制御することがサービス工学の本質であると考えても過言ではないだろう。ただし,この「望ましい状態」については現在のところ,普遍的な客観的指標があると期待することは難しく,そこにはサービスシステムを構成する人々や環境,すなわち実際の社会の主観的な価値観を反映した間主観的なものを想定せざるをえない。現段階ではこうした間主観的価値観を明示的に取り扱う方法論はまだ確立されていないため,1つの代替手段として,実際の人の行動を客観的データとして大量に収集して計算する手段をとる。これはサービス現場で生成される,いわゆるビッグデータとよばれるものである。このビッグデータという言葉もまた,現時点ではその定義や取り扱い方が学術的には確立されたものではない。しかし,この時代の大きな転換期にあって,今後の工学や社会システムのなかで実際に大きな位置を占めるその存在は,いまや単に観測データが大量にあるというだけの意味では足りない重要な意味をもつことはあきらかだろう。これからの社会がこのビッグデータをどのように活用していくことができるのかは,我々に課せられた大きな課題であるとも言える。
 実際のサービスのなかでも,たとえば会員カードや電子カードを提示して購買行動をとることで収集されるID付きPOSデータや,日々の業務を電子的に記録した業務記録などの大量データは,実際に集計され,何らかのかたちで活用されることが期待されている。つまり,こうした人や社会の行動が含まれたビッグデータを計算機上でうまく取り扱うことができれば,間主観的な価値観を含むサービスシステムの動的な制御を工学的に実現する技術が生まれる。これがサービス工学を実践するための基本戦略となる。
 本書の構成は次のとおりである。
 第1章において,サービス工学という研究分野が誕生した背景と周辺領域との関係,そこにおける要請と課題について整理する。
 第2章では,実在するモノではなく無形であるコトをその研究対象とするために必然となる,サービス現場で生成される大規模データに基づくサービス工学について述べる。そこでは,サービスをとりまく提供者と利用者のあいだの価値の伝搬や共創性,無形のサービスを改善していくための最適設計ループについても議論する。
 第3章では,サービス工学を実践するために開発された基盤技術について,経済産業省の事業として2008年から2011年にかけて行われたサービス工学の研究開発プロジェクトにおける事例を紹介する。
 第4章では,コトであるサービスを工学の計算対象とするために,サービス利用者の計算モデル(ベイジアンネット)を大規模データから自動的に構築することにより,サービスの最適化を可能にする技術と方法について紹介する。
 サービス工学における計算モデル化では,コトのモデル化,つまり因果的な構造のモデル化が重要な課題になる。第5章では因果構造のモデル化に関する理論を紹介する。
 第6章では,大規模データに基づいてサービスを最適化するために,もっとも有力な技術と期待されているデータ同化によるシミュレーションを解説する。
 現時点では,大規模データによるモデル化を実行するためにも変数や状態の設定に関しては何らかの事前知識が必要であり,大規模データによる量的調査の前に,実際のサービス利用者に対する質的調査を行うことが重要である。そこで第7章ではプロ野球のファンサービスを題材にしたサービス工学の事例を観戦行動のモデル化手法とそのための質的な調査技法の事例紹介を行う。
 第8章では,医療の現場である大学病院の薬剤部におけるサービス提供者の行動モデル化の事例として,医療安全への応用事例を紹介する。
 第9章では,実際のサービス現場において生成される大規模データであるID付きPOSデータを用いたサービス工学の研究事例として,小売サービスにおける顧客のモデル化と分析事例を解説する。
 第10章では,サービスにおける大規模データを用いたマーケティングと意志決定支援の事例を実際の企業活動の例に基づいて解説する。
 第11章では,大規模データを用いたサービス利用者の計算モデル化を行うアルゴリズムやシステムについての詳細を実例とともに解説する。

 サービス工学は,現時点において必ずしも十分に体系的に整備された学問とはいえないが,本書がねらうところは,現時点の段階における基本的な考え方と,それを実践するための基礎的方法や技術,事例をできるだけ具体的に紹介することであり,今後の新たな工学のあり方に対して1つの視点や切り口を提供することにある。
 対象となる読者は,これからサービス工学分野の研究や開発を考えていきたいという工学分野の専門家や学生,サービス工学の技術に興味をもち,それを活用したいと考えている実務家などである。サービス工学という分野の特殊性から,実務の現場においては技術的・理系の知識が必要であるとはかぎらないが,サービス工学の技術のなかみを理解するためには理系的・技術的背景があった方が深く理解いできるだろう。
 本書では,必ずしも非専門家向けに平易な解説が十分できているわけではなく,サービスの現場でサービス工学の技術を利用しようとする方々への実用的な解説をどのように提供できるかは,今後の重要な課題であると認識している。そういった点では今後,サービス工学関連の情報がさまざまな用途に応じて提供されるためにも,本書の内容から読者の新たな好奇心が喚起されることで,サービス工学が提供する価値の受容者と提供者が共創的に作動し,サービス工学のコミュニティが漸次的に拡大していくことを期待している。
 2012年11月
 著者しるす

著者プロフィール

本村陽一(モトムラリョウイチ)
竹中 毅(タケナカタケシ)
石垣 司(イシガキツカサ)

上記内容は本書刊行時のものです。

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