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看護・介護を助ける姿勢と動作 イラストで学ぶボディメカニクス

自然科学

小川鑛一(著)

A5判  192頁 並製
 2,300円+税
ISBN 978-4-501-41860-1 C3047
在庫あり

奥付の初版発行年月 2010年06月
書店発売日 2010年06月30日

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紹介

看護・介護を学習する人にとって力学や物理学は理解しにくい。本書は、簡単な動作実験などを通じて、理論をやさしく解説。

「ボディメカニクス」とは、看護・介護者の腰痛などを予防し、利用者が安全・安楽に介護を受けられるようにするために力学的原理を活用する技術。作業者の腰痛などの障害を防止するためにボディメカニクスを活用することが必要不可欠。看護・介護を学習する人にとって「力学」や「物理学」が理解しにくい。これらの力学などについて、簡単な動作実験などを通じて、理論をやさしく解説。多くのイラスト・図面により、視覚的に理解できる。

目次

第1章 やってみようボディメカニクス!
 1.1 つま先立ちの実験
 1.2 壁にお尻と踵をつけてお辞儀する実験
 1.3 片手,上体,片足を壁につけて壁と反対側の足を持ち上げる実験
 1.4 座位姿勢で足位置を変えて立ち上がる実験
 1.5 座位姿勢で上体を傾けないで立つ実験
 1.6 立位の人があなたのおでこに指先を当てた状態で立つ実験
 1.7 立位の人があなたに手を差し伸べた状態で立つ実験
 1.8 座ったあなたが前傾しながら立つ実験
 1.9 慣性の効果を確かめる糸切り実験
 1.10 10円玉が居残る実験で慣性の効果を知る実験
第2章 身近なボディメカニクスを考える
 2.1 人間の姿勢・動作と力学について(ボディメカニクス)
 2.2 日常生活に見るボディメカニクス
 2.3 仕事に見るボディメカニクス
 2.4 看護・介護に見るボディメカニクス
 2.5 スポーツに見るボディメカニクス
第3章 ボディメカニクスを理解するためのやさしい力学
 3.1 人間の機能,特徴,能力の限界
 3.2 力と圧力の違いは何か(力の単位,圧力の単位,質量,ベクトル)
 3.3 滑らかな動きと速度・加速度について
 3.4 動き出したら止まらない慣性について
 3.5 重力があるから腰痛が起こる
 3.6 重心を支持基底面内に収めて転倒を防止する
 3.7 テコの原理を知って仕事を楽にする
 3.8 力のモーメントで負担の大きさがわかる
 3.9 姿勢の安定・不安定について
 第1章の実験課題の解答
第4章 看護・介護の姿勢・動作とボディメカニクス
 4.1 看護・介護に役立つ基礎ボディメカニクス
 4.2 腰痛を起こす要因と予防
 4.3 自力で動く姿勢・動作を考える
 4.4 看護師の日常業務を考える
 4.5 負担が大きい看護・介護動作を考える
 4.6 用具を使用した看護・介護作業を考える
 4.7 看護・介護動作のエビデンスを考える
 4.8 看護介護動作のボディメカニクスとキネステティクについて
 4.9 ボディメカニクスを振り返る
参考文献
索 引

前書きなど

 看護や介護業務において,ベッドメーキング,体位変換,車いす移乗などの動作が多く行われていることでしょう。このときにとる姿勢や動作は,前傾姿勢,ひねり姿勢,持ち上げ動作,左右アンバランスな筋活動などです。これらの動作を行うと,腰椎や椎間板,腰部筋群へ過度の負荷がかかり,その結果,腰痛が起こる可能性が高まります。看護師・介護士の腰痛発症率は70%とも80%ともいわれるほどに高く,腰痛予防の方法として,看護・介護動作時の”ボディメカニクス”の活用が推奨されています。
 筆者は看護大学や看護専門学校で「看護人間工学」という科目を担当しており,何冊かの教科書と参考書を上梓しました。この教科書を使ってボディメカニクスを取り入れた人間工学の授業を行ってみると,初めの頃はこの科目になじめないようです。”工学”という文字がアレルギーとなっているためか,内容を理解してもらうまでに時間を要します。しかし,物理や力学に密接な関係がある看護援助動作の説明,用具を使った介助の実演とともに,電車内の手すり,SuicaやPASUMOなどの自動改札システム開発,トイレ洗浄機の開発に人間工学の手法が取り入れられていること,身近な物にはペン,消しゴム,ナイフなどの文房具にも人間工学が応用されていることなどを話すと,にわかに抗議を熱心に聴講する気配が感じられます。そして,「身近な人間工学を探せ!」という課題を出してからは,人間工学を応用した製品に囲まれ,いろいろ使ってみてすばらしい物が身の回りや自宅にたくさんあることに気がつき,それらをよく観察するようになります。さらに,ボディメカニクスの実例をいくつか紹介すると,ボディメカニクスは人間工学,物理・力学に関係があることがわかり,授業終了時には人間工学の講義は看護・介護業務には絶対必要であるという声も聞こえます。
 本来,人間工学は人間と物との接点に関わる安全・デザインに主眼がおかれ,効率・能率,安全性を確保するために発達してきました。安全で使いやすい物があふれ豊かになった現在,人間工学は人の動作や人を扱う看護・介護の分野においても応用されるようになってきました。特にME機器をはじめとする医療用具や機器を扱う看護・介護の分野では,あえて人間工学の応用といわなくても,そこにはその思想が当然のように取り入れられた開発がなされ,製品化されて普及しています。
 患者,障害者,高齢者の日常援助においても,脊柱障害や腰痛を起こしたり大きな負担を被ることが多い看護・介護業務では,その援助動作に力学原理に基づいたボディメカニクスの応用が必要とされています。これらを予防する,あるいは援助負担を軽減するための技術としてボディメカニクスの講義を人間工学の講義の中に設けてあります。しかし,看護や介護学生の多くは物理や力学原理を素通りしてきた,どちらかというと文科系志向の人が多いのではないでしょうか。そのため,講義や実習で「ボディメカニクス技術の有効性はある程度認めるが,その有効性がどの程度あるか」という,ボディメカニクスの原理や,理屈を知ることに対しては消極的なところがあります。
 腰痛が起こる主たる原因は地球上に重力があるためです。本書では,その重力の意味と身体の重心や重心線の意味,あるいは転倒のメカニズムを理解するために必要な支持基底面,さらに身体にかかる力の負担を考えるために重要な力のモーメント,テコ原理など力学原理をやさしく説明し,その力学に基づくボディメカニクスの原理を看護・介護動作に応用する意義を解説します。ボディメカニクスの原理が理解できれば,やってはいけない動作とともに,「ボディメカニクスを応用したら自身の体を障害から守れる」という自覚をもてるようになるでしょう。ボディメカニクスは看護・介護分野の専用技術ではありません。私たちが日常生活で出会うあらゆる姿勢や動作に関係するもので,本書でも説明するように自転車を漕ぐ動作,階段の上り下り動作,自動車運転時の姿勢,各種スポーツ時の姿勢や動作などあらゆる人間の生活場面,活動場面にボディメカニクスは有効です。
 看護学生から力,ベクトル,重心,力(Kgf)と質量(Kg)の違い,力のモーメント,摩擦などがよくわからないという声を聞きます。このボディメカニクスのことを知るためには,力学の基礎が必須条件です。しかし,物理・力学を苦手とする看護・介護学生にとって,このボディメカニクスの理屈を直ぐに理解することは困難でしょう。そこで,まず初めに第1章の簡単な不思議発見実験を皆さんが体験してみて下さい。「これはなぜか?」という疑問を持つことでしょう。続いて,第2章でボディメカニクスとは何かを理解するため,身近な例をあげてその理由を説明します。第3章でボディメカニクスを理解するための力学をわかりやすく解説します。そして,最後の第4章において看護や介護作業中に患者を抱き起こしたり,薬品ケースなどの重量物を持ったり運んだりする場合のボディメカニクスについて,図やイラストを用いて詳述します。
 ボディメカニクスに深い関わりのある物理学・力学が苦手な学生,看護師,介護士の皆さんでも内容を理解できるように,工夫して解説しました。本書で述べるボディメカニクスを活用され,腰痛発症の予防や看護・介護時の負担軽減に役立つことを願っています。
 最後に,これまでの人間工学シリーズの編集・出版に対して大変お世話になった石沢岳彦さんに,今回も無理なお願いをして本書の編集にご協力いただきました。ここにあらためて厚くお礼申し上げます。
 平成22年5月
 小川鑛一

著者プロフィール

小川鑛一(オガワコウイチ)

上記内容は本書刊行時のものです。

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