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 イラストで学ぶ

看護人間工学

工業・工学

小川 鑛一(著)

B5判  216頁 並製
 3,000円+税
ISBN 978-4-501-41640-9 C3047
在庫あり

奥付の初版発行年月 2008年03月
書店発売日 2008年03月12日

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目次

第1章 人間工学ってなに
 1.1 人間工学のあらまし
 1.2 人間工学の応用は幅広い
 1.3 人間とモノ,人間と人間の関係を考える
 1.4 家庭における人とモノとのかかわり
 1.5 人間と機械とのかかわり
 1.6 人間と家具の寸法について
 1.7 人と人とのかかわり
 1.8 看護業務と人間工学
 1.9 看護人間工学とは
 1.10 患者の移動・移乗と看護人間工学
 章末問題
第2章 人間のすばらしさと物・人とのかかわり
 2.1 五感のすばらしさを考える
 2.2 手・足の役割を考える
 2.3 看護で発揮できる力について
 2.4 姿勢を考える
 2.5 作業姿勢を考える
 2.6 力作業と腰部負担について
 2.7 人間の能力拡大と人間工学について
 2.8 人間と物との関係を考える
 2.9 人が物を操る能力を考える
 2.10 人が人を操るしごと(看護・介助)
 章末問題
第3章 自身の身を守るボディメカニクス
 3.1 看護人間工学とボディメカニクスについて
 3.2 人間の動きの中での姿勢のあり方
 3.3 ボディメカニクスの教えるところ
 3.4 ボディメカニクスを支える基本原理について
 3.5 看護に必要な力について考える
 3.6 重力という力は何か
 3.7 看護とニュートンの運動法則のかかわり
 3.8 引っ張り力,圧縮力,せん断力とはなにか
 3.9 力を発揮すると何ができるのか
 3.10 力と圧力の違いは何か
 3.11 看護と圧力—点滴・注射器から圧力を考える
 3.12 どのような場面で摩擦は看護に役立つか
 章末問題
第4章 ボディメカニクスを理解するための力学
 4.1 看護とベクトルの話し
 4.2 テコの基本的な話し—第1種テコの原理
 4.3 テコにもいろいろある—第2種,第3種のテコの原理
 4.4 看護におけるテコの原理応用
 4.5 力のモーメントとトルクの違いは
 4.6 力のモーメントの応用—ドアの開閉能力と力のバランスについて
 4.7 力のモーメントの計算で作業負担がわかる
 4.8 人の重心はどのように求めるのか
 4.9 床面重心はいかにして求めるのか
 章末問題
第5章 看護の負担を軽減する基礎的な技
 5.1 支持基底面ってどんな面か
 5.2 支持基底面を広げるいくつかの方法について
 5.3 店頭しにくさと支持基底面と重心の関係
 5.4 倒れやすさと支持基底面と重心
 5.5 速く動くとなにが悪いのか
 5.6 じっとしていても負担はかかる
 5.7 座っていても腰痛になるのはどうしてか
 5.8 15[Kgf]のバケツと人を持ち上げる場合の力について
 章末問題
第6章 看護の安全性と人間工学
 6.1 ヒヤリ・ハットが重なると重大事故になる
 6.2 ヒューマンエラーとはどんなエラーか
 6.3 ヒヤリハットとはなにか
 6.4 リスクとはなにか
 6.5 リスクを減らすフェイルセーフとはなにか
 6.6 事故を防ぐにはどうしたらよいか
 6.7 事故を限りなくゼロに近づけるために
 章末問題
第7章 看護と情報とコントロール
 7.1 情報とはなにか
 7.2 情報をキャッチするための人間の五感と機械のセンサー
 7.3 情報は何のために役立つのか
 7.4 情報の取得と情報交換
 7.5 フィードバック・コントロールとはなにか
 7.6 看護におけるフィードバック・コントロールとは
 7.7 フィードバック・コントロールから見た人間の特徴
 章末問題
第8章 ME機器とその役割はなにか
 8.1 医療・看護と仲よくする工学技術
 8.2 複雑なME機器はだれが扱うのか
 8.3 医用電子工学と医用工学の違いとME機器
 8.4 ME機器とフィードバック・コントロール
 8.5 ME機器と看護人間工学
 8.6 ME機器と安全について
 章末問題
第9章 身近な人間工学の応用
 9.1 睡眠と人間工学
 9.2 健康と人間工学
 9.3 コンピュータ作業とテクノストレス
 9.4 家庭でのわかりやすい人間工学の応用
 章末問題
第10章 看護人間工学のまとめ
 10.1 看護師—物—患者に応用されている看護人間工学
 10.2 用具を用いた看護作業の負担軽減について
 10.3 機器を用いた看護作用の負担軽減について
 10.4 看護技術と人間工学
 10.5 看護人間工学のまとめ
 章末問題
章末問題 解答
参考文献
索 引

前書きなど

 工学は,基礎科学を工業生産に応用して生産力を向上させるための応用的科学技術の総称であって,機械工学,電気工学,情報工学のように物質・エネルギー・情報など広い範囲にかかわりがあります.この工学が”人間”と結びついた「人間科学」とはなにかと問われると,それに応えられる人は少ないのが現状です.それは人間のようなロボットを作るのかとか,人間のように賢い自動機械を研究するのかと思われ,人間工学の内容を推測することは難しいようです.文系の人にとっては用語「人間工学」の中に工学という文字があるためか,はじめから難しそうだと思われます.
 数学や物理を学んでいない看護師が多いことから,工学という文字を見るとそれだけで難しい分野と決めつけ,その中身の想像はつかないようです.人が働く作業空間とその環境,人が住む住空間とその環境,そこで扱う各種の機械装置や物は,人間の心理,生理,解剖など人間の諸特性を考慮に入れ,そのうえで創意と工夫をもってデザイン・製作されたものばかりです.人間工学は,人間の能力やその限界を知って,それに合わせるように上述した空間,環境,物を設計し,作業手順を考慮して製作していく科学です.
 人間が行動を起こし,動作する場合は疲れない,負担が少ない,誤りが少ない,手触りがよい,使いやすい,操作しやすい,楽である,気持ちがいいなどと安全,安楽,快楽を求めます.物を扱う場合は,その物の大きさ,形,重量,色などが扱う人にとって心地よく使いやすく,そして便利であることが求められます.
 人間が扱う対象は,ものばかりではありませんが,仮にものを扱うとしてもそれは人間のためです.教育,医療,看護,福祉,人命救助のように人を対象とする分野もあります.看護の分野に注目すると,看護師が扱う対象とするのは患者という人間です.言葉がわるいのですが,人間が人間を操る場面もたくさんあります.それは,体力の衰えた患者が病室から検査室やトイレに行く,患者をしっかりと支えて歩行介助をする,ベッドから車椅子に移乗介助をするというようなことです.看護師は,食事介助のために臥床患者を抱き起こして長座位にすることもあります.さらに,ベッド上の患者がずり下がった場合には枕元へ戻す介助,ベッドメーキング作業など重・軽労働的な仕事もあります.体温,血圧などバイタルサインを測る日常の看護業務もあります.
 こうした看護業務をみると,患者という人間を直接扱う場合もありますが,電子体温計,血圧計などのME機器を使って体温,血圧などを測る場合もあります.鑷子(せっし,ピンセット),鉗子(かんし,刃のないはさみ),ハサミのような小道具を使う場合もあるでしょう.このような用具,小道具,容器,ME機器などを使った場合に事故が起こると大変です.そこには安全で使いやすくするために人間工学的な工夫がなされています.こうした人間工学的な配慮のお陰で,慎重にして安全は看護業務が遂行できるのです.
 体格のよい患者の介助を行う場合,うっかりすると看護師は脊柱障害を発症します.患者が診察を受けたり入院したりするために,診察室や病棟の空間,内装,照明,ベッドサイズや高さ,調度品,トイレ,洗面台など好ましい環境が求められます.患者が医療行為を受けるにあたっては,安全で安楽な環境が望まれます.こうした環境の整備や周辺の問題を解説する方法に人間工学が役立ちます.
 本書は,第1章〜第10章まであり,人間工学の基礎から説明し,看護と人間工学,そしてその応用として特に工学的センスでボディメカニクスの詳細な説明を行います.看護の分野でもフィードバック・コントロールの考え方が大切かと思い,他書に見られない話題についても詳しく述べました.
 看護の分野に不慣れでしたが,看護師に腰痛発症者が多いと聞き,1992年ごろより看護動作の人間工学的研究を行ってきました.それ以来,この動作研究を行ってきた関係で,今では大学,看護専門学校において,「看護人間工学」という科目の講義を行っています.使用していた教科書は「看護動作を助ける基礎人間工学」です.これは1999年に出版されましたが,どちらかというと工学よりの教科書です.そこで,本書を改訂することで話を進めてきましたが,前述の教科書を長年使用してみて,数学,物理の不得意な看護初学者を対象にするためにはもう少しわかりやすく,看護に役立つ内容に改めるべきであると考えが変わりました.前書の図表を使用し,全体を見直し,新たに「イラストで学ぶ 看護人間工学」として出版することにしました.本書は,前述のボディメカニクスに加えフィードバック・コントロールにも主眼をおいて書き改めました.そして,各章末には内容を補うための「章末問題」を入れ,その全問題に対して解答例を載せました.
 大学・看護専門学校において,授業開始時に人間工学を知っているかとの問に対し,ほぼ全員の学生は知らないと回答します.ところが,講義が終わり講義の感想を聞くと全員が人間工学は面白いといい,今後も勉強したいという学生が大半を占めます.人間工学の内容は広範囲にわたりますので,この用語の内容は不透明だと思われているようです.そのために人間工学の知名度は極めて低いということがわかりました.現場の看護師に対する人間工学の知名度調査によると,人間工学という用語を知っている人は,841人中121人で全体の14%で,どんな内容かについての理解度はわずか7%です.人間工学は身近な物や環境,人の動作にも関係する面白い内容の学問です.その内容がわかってもらえると看護人間工学は幅広く世間に認知されるものと思われます.本書がその橋渡しになれば幸いです.
 最後になりましたが,本書を出版するにあたり東京電機大学出版局の石沢岳彦さんには,前回の基礎人間工学に引き続き,このたび本書出版においても大変お世話になりました.ここに厚く御礼申し上げます.
 2008年2月
 小川鑛一

著者プロフィール

小川 鑛一(オガワ コウイチ)

上記内容は本書刊行時のものです。

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