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出版局長だより (第18回)

出版局長だより 第18回

出版局長の脇英世です。少し遅くなりましたが、皆様、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

去年の暮は突然舞い込んだ原稿執筆依頼に振り回され続けました。3000字を9本、期限は1週間というものです。昔はその位、何とも思わなかったので、簡単に引き受けてしまいました。

外部から注文を頂けるのは、まことにありがたいのですが、これが予想外の地獄の苦しみとなりました。締切を守れなかったというのは40年近い文筆生活でなかった事なので、何とかなると思っていたのですが、全く何ともなりませんでした。歳をとったと思います。残念でした。

年末になると体力も消耗し、会合などにも欠席が多くなりました。私個人の用事で外出できたのは、家族が計画してくれた恵比寿のロウリーズでの私の誕生日祝いと、NHK交響楽団の第九のコンサートだけでした。

ロウリーズは、家内をサンフランシスコのステーキ・ハウスのハリスに連れて行った事が原因でした。「ああいう美味しいプライムリブは食べた事がない。日本でも美味しいプライムリブが食べたい」というのが家内の主張で、一生懸命捜してくれたのです。この話は私の『シリコンバレー スティーブ・ジョブズの揺りかご』に書いてあります。

素晴らしかったのは、私達のテーブルを担当してくれた女性のメイドさんの対応で、これは一度行って是非体験する価値があります。楽しみを削がない様に、どう素晴らしかったかは書きません。

ワインはべリンジャーがあったので、赤のべリンジャーを頼みました。ここでずっと疑問に思っていた疑問に再度ぶつかりました。米国のナパバレーで、べリンジャーに出会って、その素晴らしさを友人達に吹聴したのですが、しばらく前に奇妙な事態に出会ったのです。

裕福な友人達が銀座で、べリンジャーと称するものを注文してくれたのですが、それは深い青のラベルで、私の知っている薄いクリーム色のラベルではないのです。銀座ですし、とても高い料金を取られるのでしょうから、それは私の知っているべリンジャーではありませんとも言えませんでした。

ロウリーズでも同じような事で悩みました。家に帰って調べて分かりました。ベリンジャーには4ランクあって、上からプライベート・リザーブ、アベラシオン、ファウンダーズ・エステート、ストーン・レアーズというランクがあります。

私が美味しいと思っていたのは、プライベート・リザーブのカベルネ・ソービニヨンで、年度によって差はありますが、オーパスワンと同じ位のランクです。友人達に御馳走してもらったのは、アベラシオンのナイツ・バレー・カベルネ・ソービニヨンでした。価格比は4:1で、私のような素人でも少し味が違うのではと思ったのは、ある意味で当然のことでした。

プライムリブの味はどうだったかですって?
これには伊丹十三先生風のセリフでお答えしたいです。
決まっているじゃないですかと。
是非、御自分で体験して見て下さい。

NHK交響楽団の第九のコンサートは3年ぶりでした。年末ここに来る時は、いつも寒いと思います。再びコンサート・マスターの篠崎史紀氏の貴族的な容貌に感激しました。NHK交響楽団の演奏は素晴らしかったです。

通路を歩いている時に、どこかで見た人なのですが、どうしても思い出せない人にお会いしました。2列後に座られたので、気になって、どなただろうと思い出そうとしましたが、どうしても思い出せません。最後に昔御会いした国会議員の先生だと気がついて御挨拶しました。

新年になると、日経BPから取材の申し込みを受けました。『スティーブ・ジョブズ 青春の光と影』を書いたせいか、仙人のような存在の私を思い出して頂けるのは大変ありがたいのですが、しばらくぶりなので、とても緊張しました。慌てて3日漬けくらいの勉強をしました。何とか、しのげたと思いますが、とても疲れました。

暮に疲れて寝てばかりいて、ブルーバックスの古い『脳の探検』上下と、新しい『新 脳の探検』上下を読みました。ショーペンハウアーの影響でしょうか。これら4冊を読んで、人間の脳は、とても複雑な機械で、私が生業としているコンピュータなどとは段違いに複雑で精巧なものと理解しました。今やコンピュータは人間の脳に近づいたなどと不遜な考えを持たないようにしようと思いました。

さて、本年もよろしくお願いします。