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日本ペンクラブと日本出版学会は7月27日に「日本版デジタルアーカイブを構想する〜公共基盤・民間運営・著作表現の自由の観点から〜」と題した合同シンポジウムを開催した。これは6月30日に開催された第1回合同シンポジウム「グーグルブック検索和解協定を検証する」の成果を踏まえ,第2回として日本におけるデジタルアーカイブやコンテンツインフラのあり方について討議したものである。
 当日は,ときおり強く降る雨で集客が心配されたが,ふたを開ければ200人を超える参加者となった。蒸し暑いのと熱気と照明で,司会していて汗だくになったが,企画者として手応えもあり,このテーマに対する関心の高さを再認識した次第である。

国会図書館に127億円

米国でのグーグルブック検索訴訟の和解案は,ことの是非とは別に,図書のデジタルアーカイブの重要性と構築することの必要性を提起した。日本でも,出版社による電子出版や,紀伊國屋書店OCLCによる「ネットライブラリー」,小学館系ネットアドバンスによる「ジャパンナレッジ」など,デジタルアーカイブプロジェクトがスローテンポながら開発されてきた。しかし,ここにきて知財推進を追い風とした著作権法改正に加え,補正予算により国会図書館のデジタル化計画が一気に進むことになった。明らかにグーグルによる一連の活動が影響を及ぼしている。
 2010年1月1日から施行される改正著作権法により「インターネット等を活用した著作物利用の円滑化を図るための措置」として,「国立国会図書館における所蔵資料の電子化」が著作権者に許諾をとることなく可能となった。国会図書館では,従来から明治・大正期の図書14万8千冊をデジタル化し「近代デジタルライブラリー」として公開してきた。著作権者を追跡するなどに,約2億円を要したという。この手続きが不要になるのである。
この法的整備を背景に,前年の100倍規模となる約127億円が補正予算に計上された。これにより1968年までの図書,博士論文,古典籍,官報など約92万冊の蔵書のデジタル化を手がけることになる。これが景気対策予算の一つだと聞くと,いささか首をかしげたくなるが,いずれにせよ,民間に図書のデジタル化作業が業務委託されることとは別に,アーカイブを元にした需要が喚起されていかねばならない。

デジタル雑誌の取組にも予算

国会図書館の127億円と比較すると百分の一程度にすぎないが,デジタル雑誌の整備事業にも国家予算がつくことになった。総務省が募集した「ICT利活用ルール整備促進事業(サイバー特区)」の実施テーマに日本雑誌協会が応募し,このほど「雑誌コンテンツのデジタル配信プラットフォーム整備・促進事業」として採用されたからである。今後2年間の実証実験で,デジタル雑誌のビジネスモデルの確立を目指すという。
 従来,取り組んできたような出版社単位。個別雑誌単位でのビジネス展開では勝算がみえない。そこで出版社横断的な雑誌記事アーカイブを構築し,新たな価値創出をめざそうというのである。
 検証すべきテーマは既存雑誌コンテンツの使用許諾ルール,コンテンツ作成の手順やファイル形式,さらにビジネスにしていくためのサイト運営や専用端末機の開発など多岐にわたっている。そこでは書籍の本文をスキャニングするといった単純な作業ではない取り組みが求められている。
 過去の雑誌記事の横断的な検索や表示が可能になれば、書籍アーカイブ以上の魅力が期待できる。コンテンツ管理に関与せず、インフラの研究に投資するという、とても有効な国家投資ではないだろうか。
 次は国会図書館のアーカイブを民間としてどのように利用するか。早急な取組が求められる。