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ビジネス機械・システム産業協会(JBMIA)の電子ペーパーコンソーシアム主催により,電子ペーパーシンポジウムが10月10日,日本科学未来館で開催された。同シンポジウムは毎年開催されており,今年で5回目となる。

産業団体としての取組

JBMIAは複写機やレジスターなど電子事務機メーカーの業界団体である。ワープロ専用機は90年代前半まで同協会の柱となる製品であったが,Windows95の普及とともに瞬く間に市場から消滅した。ビジネス向けの工業製品を扱う以上,絶えず新しい技術に注目して市場開拓と業界の啓蒙に取り組む必要がある。
 その点,電子ペーパーは複写機メーカーが開発に取り組んでいたこともあり,環境問題を追い風に市場拡大が期待されてきた。では,この5年間で電子ペーパーの市場が活性化されてきたかとなると,残念ながらいまだ商品点数も少なく低迷が続いている。
 そこで,一般の関心を高め製品化のアイディアを募ろうとコンソーシアムでは,電子ペーパーを使用したアプリケーションアイデアのコンテストを昨年から開催している。一般公募なだけに技術的実現性よりも革新的な(突拍子もない)アイディアが集まってくる。
 今回,優秀賞は逃したものの事前審査で大受けしたのが,巨大な電子ペーパーパネルを宇宙空間にあげ,太陽光をコントロールしてエコ問題を解決しようというアイディアであった。提出された絵は地球を覆うサイズなのだから,SF映画と言うより“マンガ”である。ただ環境というキーワードが電子ペーパーと結びついていることがよくわかる。

応募作品の分類

コンソーシアムは,いくつかの研究グループを持つがコンテストを企画するのがRG3(メディア論)である。小清水実グループ主査(富士ゼロックス)が,昨年のアイデアコンテスト受賞作品を分析している。
 応募内容は壁,床,屋根,窓などの建材や,衣類,めがねなどの身につける日用品など“環境系”に電子ペーパーを利用するアイデアが全体の半数近くを占めている。電子ペーパーといえば,誰でもが紙やパソコンの代替製品を考えるのだが,両者をあわせても環境系アイディアにわずかだが及ばない。触覚をあわせたアイデアもあった。また,紙の形状そのものや,曲げたり,薄さ,可搬性,読みやすさといった紙からの発想よりも,環境や日用品に埋め込む発想が半数近くを占めていた。昨年の準大賞である電子ペーパースリッパがこの好例である。これは病院などで患者に行き先を指示してくれるアイデアが評価されたものである。
 小清水氏は電子ペーパーがメディア化していく際には,視覚メディアから五感メディアへの変化,機能やスペックからストーリーやファンタジーへの変化,メディアの環境化から環境のメディア化への変化の三点を指摘している。
 「読み」は,一般に考えられている以上に身体全体の行為である。英単語を覚えるためには手で書きながら声に出すと効果が高いことは誰でもが知っている。紙は見るための表示装置ではなく,読むために五感に訴えてきたメディアなのだ。
 また,紙は印刷用紙に限っても手に持ったり,書き込むことのため肌触りや筆記具との適性が求められてきた。さらにパッケージなどに利用する製品は,加工性や風合いなどの要素も求められる。コミュニケーション手段である電子メールは機能性だけなのに対し,紙の便せんには儀礼とファンシー性が求められている。もともと紙が実現しているメディア要素は多岐にわたっている。
 一方,液晶ディスプレイが(その名のとおりの)表示を越えた利用としてはタッチスクリーンがあった程度である。ディスプレイ技術で電子ペーパーをとらえていると発想が貧弱になるようだ。