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一昨年後半からケータイ小説の書籍化が目立って増えている。ケータイサービスの「魔法のiランド」に掲載された作品だけでも,この1年間で10点を超えた。今年になって『ケータイ小説家になる魔法の方法』という本まで出版されているほどである。
 『Deep Love』の成功以来,スターツ出版がケータイ小説の刊行に熱心である。ただし『Deep Love』の作者Yoshiにしろ,その後の作品が売れているわけではない。そもそもケータイ小説のすべてを小説と呼ぶにはかなり抵抗があるところである。
 「魔法のiランド」とはケータイサイトの無料作成サービスを行っているコミュニティサイトである。このサイトにある小説執筆・公開機能を用いたケータイ小説が急増したことを受けて,昨年3月にケータイ小説サイト「魔法の図書館」のサービスを開始した。現在までに70万タイトル(!)が公開されたという。
 ケータイ小説の新人賞だけでも「ケータイ文学賞」,「日本ケータイ小説大賞」,北海道文教大学の「ケータイ小説コンテスト」など,次々に新設されている。小学館「きらら携帯メール小説大賞」には,2年間で合計1万篇を超える作品が寄せられた。応募が多かった理由として,字数が一番少ない(500〜1000字)からという。そういえば,若者の間でケータイ小説がブームになる前に,ケータイ短歌ブームもあった。

ケータイ小説の特徴

携帯電話を読書装置とした場合,そこには「読むこと」の明らかな制約がある。特徴としては,画面が小さく,直線的な読みとなる。内容の全体的な把握に弱く,読み返しにも向いていない。読みは常に前に前にと進むことになる。
 携帯電話の連載に向く小説は,一般にライトノベルであるといわれる。「魔法の図書館」プロデューサーである伊東おんせんによると,ケータイ小説の特徴として,「センテンスが比較的短く,かつリズミカル」「改行,行間の使い方」「会話文に独白があしらわれ,説明的な文章が少ない」「カッコなどの使い方に工夫」の4点をあげている。
 「魔法の図書館」が素人の作品掲載を主体としているのに対し,既存の文芸出版社が運営するケータイ小説サイトは,新人を含むプロの作家の作品連載が中心である。前者が素人の書きっぱなしであるのに対し,後者は文芸雑誌同様に担当編集者がいて作家と共同作業をおこなっている。

ケータイ小説の女王

書き下ろしのケータイ小説で最初に話題になったのが,2003年に「新潮ケータイ文庫」に連載した内藤みか『いじわるペニス』である。彼女を「ケータイ小説の女王」と命名したのは,楽天ブックスの安藤哲也店長である。
 インプレスの主催する電子書籍セミナーで講演したところ,会場に内藤さんが来ていた。ケータイ小説について聞きたいこともあって,講演会終了後,一緒に飲むことになった。
 ケータイ小説の連載1話分は,携帯電話での読みやすさを検討して原稿用紙3枚にした。これはスポーツ新聞の連載小説と同じ長さである。この長さのなかに必ず盛り上がりのある山場を描き,最後の1画面で次回への期待がつながるように執筆する。マンガ編集の世界でいう山と掴みである。
 次回への期待を描く方法の一つとして「だって,彼は・・・。」のように「・・・。」で終える手法を用いているという。さらに1回の分量が少ないことから,ストーリーの展開を早くし,登場人物を少なくして風景描写なども長々と書き込まないという。また,画面が小さいことから数十字で改行しているという。
 赤川次郎だったか「電車のなかで読まれる小説だから,会話を多くしている」という発言を読んだ記憶がある。ケータイ小説はその先を行くのである。