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2006年になって氷点下30度という厳寒が訪れ,モスクワ市内でも凍死が相次いでいる。幸いにも昨年末,僕が訪れていた「モスクワ国際ノン/フィクションブックフェア」期間中は暖冬気味で,例年だと凍りついている市内の道路も泥んこ道になっていた。
 とはいえ,寒いことにはかわりがなかったが,モスクワっ子にとっては苦にならない寒さなのだろう。フェア初日は,雨まじりの小雪が降る外で,開場1時間前から人が集まりはじめていた。本好きなモスクワ市民が心待ちにするブックフェアなのである。
 ところでロシアの若者の間でも日本のオタク文化が注目されている。コミックマーケットのような集いもあるそうだが,マンガ,アニメ,コスプレ,セル画収集といった区分が確立されていないで,みんなアニメージュニック(アニメオタク)と呼ばれている。
 翻訳出版としては,高橋留美子「らんま1/2」があったが,市場はこれからのようだ。

オンライン書店OZON

オンライン書店はロシアでも大きなビジネスになっている。オゾン(http://www.ozon.ru)のブースは,大きなロゴマークを壁紙代わりにした以外,わずかな本を並べるだけの簡素な作りである。在ロシア日本大使館のスタッフに聞くまでは,これがロシア最大のオンライン書店として勝ち組になっているとは思わなかった。
 オゾンのスタッフに聞くと,ロシアにおけるオンライン書店は,大きいところで3社ある。そのなかでもオゾンがリーダーで会社は8年前に設立したという。
 扱い商品の90%は本で,それもロシア語である。それ以外に,CD,DVD,ビデオ,デジタルカメラなどのデジタル機器,ケータイ,PCなど幅広い分野を扱っているが,電子機器は地方を除けば売れていないという。
 アマゾン・コムはロシアに参入しておらず,ロシア在住の外国人以外,ほとんど知られていない。購入価格は平均的には書店に比べて5%ほど高いが,ベストセラーだと書店より安く販売されている。ただし,ロシア国土は広く郵便料金は高くついている。
 モスクワ市内で在庫があれば,注文日の翌日出荷し3日目に届く。ただ,あまり在庫は抱えていないようで,在庫がなければ版元に注文することになる。在庫情報が確かではないため品切れの場合もあり,その場合は前金を返却するという。課金はクレジットカードが一番多いという。
 クレジットカードは日本や欧米ほど普及しておらず,このことが本に限らずオンライン販売市場の足かせになっている。

ロシアにおけるパソコン事情

ロシアのパソコン普及は進みつつあるものの,まだ一人一台にはいたっていない。大学生も自分用のパソコンを持たず,大学のパソコンルームで利用している。その台数も少なく,みんなが取り合って利用することになる。さらにインターネット利用は家庭での接続はまだこれからで,多くは繁華街などにあるインターネットカフェのパソコンを利用している。
 WTO未加盟のロシアでは,ソフトウェアの海賊版天国である。WindowsXPにMS-OfficeをいれたCD-ROMが100ルーブル程度だという。パソコンはソフトをバンドルしないで販売されている。
 通常は単体でソフトを購入するよりバンドルする方が安いのだが,違法コピーソフトを購入してインストールすれば,それより安くパソコン環境が手に入る。バンドルすることで価格競争力が落ちてしまうのである。
 このような環境にうまく適合しながら,ロシアにおける電子出版ビジネスは確実に進展している。数理学や情報科学において優秀な人材を輩出してきたロシアである。ITビジネスのおもしろさに気づいたロシアの若者たちが,世界の電子出版をリードする時代もくるかもしれない。