科学技術と教育を出版からサポートする

ハードディスクや半導体メモリーによるデジタル携帯音楽プレーヤーが急速に普及している。2003年の国内販売台数は60万台で,携帯型MDプレーヤーの5分の1程度にとどまっていた。ところが今年の国内販売台数は約190万台と予測され,来年にはMDを抜くという(読売7月4日)。

iPod課金とは

急速なデジタル携帯音楽プレーヤーの普及は,著作権法の改正審議でも中心的な話題を提供している。私的録音録画補償金の改正をめぐる,いわゆる「iPod課金」である。同制度は,MDやCD-Rなどのメディアと,その利用機器の販売価格に補償金を前もって上乗せしておき,著作権者に分配する制度である。
 これらのメディアはレコード会社などによって正規に販売された音楽CDをデジタル録音することができる。これによる損失があることを認め,その分を補償するという考え方である。権利者団体を通じて各権利者へ分配されるなどしている。録音補償金は1993年に徴収が始まっているが,iPodなどデジタル携帯音楽プレーヤーは含まれていない。
 しかし,iPodなどをデジタル携帯音楽プレーヤーと呼んではいるが,パソコンにつなげればリムーバブルディスクとして認識される。実態としては外付けHDDやUSBメモリーと何ら変わらない汎用ストレージメディアなのである。
 文化庁著作権委員会著作権分科会法制問題小委員会でも,7月の委員会で中間報告を作成する予定だったが,賛否が分かれたため中間報告の作成を断念している。

iPodで勉強

さて,音楽ばかりではなくiPodの語学学習への利用が注目されている。昨年と今年,大阪女学院大学と同短大では新入生全員にiPodを配布し話題となった。あらかじめ授業で使う全リスニング教材がインストールされており,学生はいつでもどこでも教材を聴くことができる。従来は,大学の教員により制作されたカセットテープ教材を配布していたのだが,これをiPodに切り替えたものである。
 メディアが変わったことの目新しさはあるものの,それ以上の学習効果はあるのだろうか。これについては大阪女学院大学の加藤映子教授が6月のCEIC(コンピュータ利用教育協議会)例会で報告していた。聞く限りでは学生のモチベーションは確かにあがっているのだが,それは「電車の中で使うと注目されてうれしい」といったメディアの新奇性が大きな理由となっていたようだ。
 もちろんMDにはなくiPodならではの利用方法がある。英文をディスプレイに表紙する際,HTMLテキストにしておけばリンクを張ることができ,テキスト間のジャンプが設定できる。
 この機能を利用した市販教材もすでにある。ソースネクストがテクストと音声をiPodにコピーし,外出先でも利用できる英会話教材「MP3英会話」を発売している。また東京リーガルマインドも,iPodを利用した資格試験の対策講座「iPodクラス」を始めている。
 今年は,名古屋商科大学でも約1000人の新入生全員にiPod Shuffleが配布された。大阪女学院大学同様,教師自らが制作した200タイトル以上の語学教材をダウンロードできるという。
 音楽を持ち歩いてヘッドホンで聴くスタイルは,79年にウォークマンによりもたらされ,すでに四半世紀を超えている。そしてiPodによりすべての音楽コレクションを持ち歩くことが,新たな音楽スタイルとなった。さらに普及したハードの上で,語学学習が提供されはじめたのである。
 歩きながら音楽を聴き,学習する。それはいつでもどこでも,といわれるユビキタス時代にふさわしいメディアスタイルである。