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検索サービスの勝ち組といったらGoogleとYahoo!である。以前はgooやエキサイトといった検索サイトも個性を発揮していたが,勝ち組が次々と打ち出すサービスの前に影が薄い。
 一方,勝ち組検索サイトとは一線を画すことで,使い方によっては面白いアイディアに結びつく検索サイトがある。国立情報学研究所の高野明彦教授らが開発した「新書マップ」である。

「新書マップ」のおもしろさ

本が知識の宝庫であることから,書誌情報なども検索のヒントになることがある。仕事柄もあるが,情報収集に著者紹介や本の解説が実によく役立っている。この本の持つ書誌情報を利用して,検索に利用したのが新書マップだ。
 このサイトではキーワードや書名が一致しなくても,関連する言葉や内容を含む本を見つけ出すことができる。これにはWebcat Plusのために開発された「連想検索」手法を使っている。
 さらに書籍データベースとして特徴的なのは,研究者や編集者ら20人が協力して作った約1000のテーマ別分類である。これに沿って各社の新書や選書7000冊をデータベース化している。結果的に書店では出版社別に並べられている新書がテーマ別に並べ直され,意外な発見に満ちている。
 例えば「電子出版」で検索すると円の内側に「編集の仕事」「情報戦争」「読書」「暗号と情報社会」などの10の関連テーマが表示される。テーマをクリックすると数冊から十数冊ずつの本が紹介され,それぞれの本の解説や目次が表示される。円の外側には,「インターネット」「社会」「メディア」「技術」といったキーワードが並び,それぞれ内側のテーマと呼応している。

長文による連想検索

ただ,このような単純なキーワード検索だけだったらFlashを使ったインターフェースに目新しさはあっても,オンライン書店とたいした違いはない。むしろ長文をそのまま質問文として入力できる連想検索に本領が発揮される。
 そこで試しに「デジタル出版よもやま話」の連載76回全文を入力してみる。「ネット発コンテンツのマンガ化「電車男」コミック誌競作」と題した1600字ほどの文章をそのままコピーして検索欄に入力する。すると「メディア・リテラシー」「プライバシー」「マンガ」「新聞論」「知的財産権」「ジャーナリズム」といった分類テーマが,すばやく表示される。テーマもキーワードも,原文には含まれていなかったものが浮かび上がってきた。
 この中から最初の3項目にテーマを絞って再検索する。すると今までなかった「報道写真」「インターネット検索」「戦争報道」といったテーマが登場する。
 ここで「報道写真」をクリックすると『映像のトリック』といった書名の並ぶリストが表示される。さらに新書以外の一般書を見つけることもできる。
 おわかりのように新書マップは新書ガイドのための検索エンジンではない。新書をアイディアを飛躍台としたアイディアプロセッサーなのである。
 なぜ新書かということについて,高野明彦教授は『新書マップ』というガイドブックの中で「新書全体は,ほとんどあらゆる話題をカバーする一巻の入門書,あるいは次々と新しい項目が書き加えられている“ライブ” な百科事典・用語集」だとして,歴史的な名著をひも解く平易な入門書から健康法,年金との付き合い方など「人生を豊かにするための確かな知識や考えるヒント」があると述べている。
 一般公開されてからほぼ1年。現在,新書マップには4月の新刊までが収録されて7704タイトルである。
 新書は著者や編集者が知識を再編集した器である。それがインターネットにない魅力である。