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マスメディア関係者の間で,「EPIC2014」が話題になっている。「最良の,そして最悪の時代」とナレーションで始まるメディアの未来予測フラッシュムービーである。2014年になると人々にとって,最良の年となり「前世紀には考えられなかったほどの膨大な情報にアクセスできるようになる。誰もが,何らかの形で貢献をする」。一方,マスコミにとっては「衰退する運命にあり,20世紀的なニュース機関は結果的にはそれほど遠くない過去の残留物となった」最悪の年でもあると刺激的なナレーションが続く。
 「dSb::digi-squad*blog」ブログに日本語訳があるので,フラッシュとともに見ていただくのが一番だが,大変興味深い話なので,概要を取り上げておく。

グーグルゾンの誕生

物語はコンピューターのシステムを支配したマイクロソフトの時代が終わり,人と社会の情報を支配するアマゾン・コムとグーグルの時代として描かれている。
 2014年に続く道を,1989年のティム・バーナーズ-リーによるWWWの考案で語り始め,アマゾン・コム,グーグルの登場を取り上げて現在につなぐ。その後,グーグルはあらゆる種類のメディアを保存・共有するための万能プラットフォームと最高の検索技術を提供し,アマゾンはリコメンデーションシステムと巨大な商業インフラを提供する。
 2008年にはマイクロソフトに対抗してグーグルとアマゾンが合併しグーグルゾンが誕生。あらゆる情報ソースをもとに各人に向けて自動的に記事を配信するサービスが始まる。
 「2010年のニュース戦争は,実際のニュース機関が参加しなかった」とした上で,グーグルゾンのコンピュータは,あらゆる情報ソースをもとに自動的に新しい記事を作り出すことが可能となる。
 2014年,グーグルゾンは進化型パーソナライズ情報構築網(EPIC)を公開。コンテンツは一人ひとりの消費行動や趣味,人間関係をもとにカスタマイズ化されるようになる。誰でも自分のメディアを持ち,「新世代のフリーランス編集者」として対価が得られる時代となる。
 EPICの支配に対する抵抗としてニューヨークタイムズはオフラインとなり,エリートと高齢者向けに紙メディアを提供するようになる。「しかし,ほかにも進むべき道は,おそらくあっただろう」として物語は結ばれる。

未来を予測する最良の方法

このメディアの未来を予測した物語が,多くのメディア関係者を刺激した。ただし,作者がメディアの終焉を描いたのか否かは,次回の検討としたい。
 個人的には,予測が当たるかどうかは興味はない。そもそもこの物語は,技術的根拠に基づいたように見えるがSF物語にすぎない。未来の予測は未来そのものではない。では何かというと〈現在〉なのである。歴史観が常に時代の都合で修正されるように,未来の予測も現在の反映にすぎないのである。
 1970年に開催された大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」だった。当時は科学技術の発展が人類に平和をもたらすという幸福な予想の中にあった。それが35年後の今,開催されている愛知万博のテーマは「自然の叡智」である。環境問題の解決策を「自然」に学ぶというこのテーマは,まさに現在の私たちがおかれた状況といえないだろうか。
 さらに付け加えれば,未来のネットワーク社会がユートピアかディストピアか。それは予測するものではない。そのことについては,アラン・ケイの有名な言葉を引用しておきたい。
 The best way to predict the future is to invent it !
(未来を予測する最良の方法は,未来を創りだすことだ!)
http://www.robinsloan.com/epic/