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昨年の出版物販売総額は2兆2428億円で,前年実績を0.7%上回った(出版科学研究所調査)。出版物の売上げが前年を超えるのは実に8年ぶりである。
 また書籍が好調だったことにより,出版物の販売総額ではプラスに転じたものの雑誌は1.7%減と7年連続の前年割れである。なかでも週刊誌は4.9%減と大きく売上げを落としている。
 全体では雑誌と書籍の売上高は6対4で,雑誌が長い間,出版界の成長を支えてきた。ただし書籍は突発的な大ヒットで持ち直すこともあるが,雑誌は定期的な購読が中心で変動は概して穏やかである。今のところ雑誌は長期低落化傾向で,持ち直す材料が見つからない,といった状態である。

デジタル時代のフロー情報

雑誌の減少にはいくつかの理由が考えられる。一つは少子化による読者人口の減少である。売上げの大きいコミック誌がこの影響をもろに受けている。
 もう一つはインターネットやケータイの普及である。メディア接触の経費や時間の中でケータイが増えることで,雑誌が減っていることは間違いない。さらにインターネットがきっかけとなった情報環境の多様化,情報のフリー化がある。ネットで「タダ」で情報が取得できるようになったことで,情報収集にお金を投資する意識が低下している。
 就職,アルバイト,住宅,レストラン,テレビ,映画といった分野で情報誌がどんどんフリーペーパー化しているのも,読者の意識変化に対応した結果である。
 書籍がストック情報ならば雑誌はフロー情報である。時事的な情報が要求される週刊誌が,次にインターネットにシェアを奪われたのは容易に想像できる。
 もちろん情報の鮮度だけならば従来から新聞や放送があった。そこで週刊誌は新聞には書けないような事件の切り口,人間描写,ゴシップ,読み物に特徴を見出してきた。ところが,この分野には2ちゃんねるのように圧倒的な情報パワーを持った匿名ネット掲示板が出現した。それは情報収集のチャンネルが多様化しただけではなく,情報交換の魅力的な場にもなっている。ネットが週刊誌文化を飲み込んだともいえる。

ネットコンテンツのマンガ化へ

一方,マンガの電子書籍化は徐々にであるが売れ筋が出てきた。
 マンガはもともと大部数のメディアである。先ほど人気マンガである「ONE PIECE」は全35巻で1億冊を突破した最速記録となった。そのマンガの人気をベースに初めて売れた電子書籍が,武論尊,・原哲夫「北斗の拳」の電子書籍版である。全27巻の総合計で最初の1か月間で約1万ダウンロードがあり,その後,半年間で10万冊に達した。電子書籍としては破格の売れゆきである。
 一方,大変興味深い動きが,これと逆のネット発コンテンツのマンガ化である。ネット掲示板の書籍化という出版業界の新しいビジネスモデルに火をつけたのが「電車男」だ。これがマンガに飛び火し,複数のマンガ雑誌で競作されて話題となっている。
 一番最初にマンガ版電車男の連載を開始したのは,昨年末の「ヤングチャンピオン誌」(秋田書店)である。その後,「週刊ヤングサンデー誌」(小学館),「月刊チャンピオンRED誌」(秋田書店)と続く。さらに少女マンガ誌「デザート」(講談社)も読み切りの掲載を予定している。一つの作品が4誌で同時競作されるのは,かなり異例である。
 ベストセラー小説がマンガ化されることはあっても,競作されることはほとんどない。通常,2次的著作権契約を結ぶ際に,1社がマンガ化の排他的独占権を得ている。これによって他社がマンガ化するのを防ぐのだ。おそらく今回は,電車男が掲示板で生まれたという経緯もあって,著作権者側の意向があったのかと思う。