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電子文書法が昨年11月に成立し、今年4月から施行されることになった。この法律により民間企業に保存が義務づけられている文書について、紙だけではなく電子的な保存でも可能となる。
 同法はe-文書法とも呼ばれているが、正式には「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」及び「同法施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」である。一連の「e-Japan戦略」の目玉施策の一つとされている。
 企業では毎年決済処理したあとで伝票や領収書、帳票類を7年間保管しなければいけない。このような財務諸表は法人税法により保存が義務づけられている。電子文書法の成立に伴い、文書保存にかかわる関連法として、そのほか銀行法や証券取引法など251の法律が一括改正された。
 現在でも会計処理をパソコンなどで行っていれば会計データの電子的保存は認められている。この容認範囲を領収書や契約書まで広げようというものである。
 紙文書で行っていた業務文書を電子化し、さらに文書管理も電子化することには大きなメリットがある。保存コストの削減だけではなく、紙代や印刷費、文書の輸送コストなども削減できる。文書の共有や検索、回覧等も簡単になるだろう。また注文書や領収書、契約書などはウェブによる電子伝票のやりとりとして可能である。
 これにより年間3000億円の経費削減になるという。

技術的課題

原本として扱える電子文書は二つに分けられる。一つはワープロなどではじめから電子的に作られた“オリジナルな電子文書”で、もう一つは紙で作成された既存の文書や手書き文書をスキャニングした“電子化文書”である。
 当然、このためには電子文書の永久保存や原本性の確保、改ざん防止などの措置が必要となる。比較的に簡単なのはオリジナルな電子文書である。電子署名によって同一性を保証すればよい。
 一方、電子化文書はさらに技術的な課題がある。まず手書き文書をスキャニングした場合、原本とするだけの解像度が必要である。文字が判別しにくいようであれば原本とはならない。また、スキャナデータがもとの文書と同一であることを、作成にかかわった誰かが保証しなければいけない。人による同一性の保証と改ざん防止のために電子署名が必要である。さらに、あたかも過去に存在していたかのように時刻を改ざんされないためには、時刻認証という存在証明が求められる。

電子文書の長期保存

長期にわたる保存のことも考えなければいけない。この間、ある社会学者を訪ねたところ、定年のため大学の研究室を引き払う作業中であった。社会調査データが収まった何巻ものMT(磁気テープ)を前に「書いた論文は紙で残っているが、このテープは読みとる機械がない」というのである。おそらく70年から80年代に作られた、多くのコンピュータデータが同じ運命にあることだろう。
 個人が利用している限りでは、MTどころか8インチや5インチのフロッピーディスクも読むことが難しくなっている。法律が決まった以上、ファイル形式、記録メディア、リーダーソフト、さらにOSやハードウェアまで保存しておく必要がある。
 すでにウェブ公開されている官報などには、電子署名や時刻認証がされている。一口に電子文書法の成立といっても、誰でも利用できるが誰にも改ざんできないようにする技術的解決があってのことである。
 これからは紙の文書が「主」で電子文書が「従」であった時代から、主従の関係が逆転し、電子文書が「主」となる時代になっていく。その結果、今まで以上に多量にデジタル的な文字が溢れ、読み書きされることになるだろう。