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米国アマゾン・コム社が2003年10月に提供を開始した書籍全文検索サービス「Search Inside the Book」,もうお試しになったでしょうか。これまでオンライン書店での検索といったら,書名,著者名,出版社名に解説中のキーワード程度であった。それが新サービスでは書籍の本文を検索し,立ち読みすることができるのである。

「本のGoogle」と呼ぼう

全文検索の対象書籍はスタート時点で12万冊,約3300万ページにも及び,出版社190社以上との提携でアマゾン・コム社がすべてスキャニング,データベース化したという。今までどおり,検索窓からキーワード入力するだけで,そのキーワードを含むすべての本をリストアップし,ユーザー登録している人ならば,そのページと前後2ページまで閲覧することができる。本文は画像データであるが,そのキーワードにはちゃんとマークが重なって表示される。
 Googleに対抗するために,検索エンジン開発会社の設立を発表してから,わずか1カ月後。相変わらずのスピード経営ぶりである。もちろん,かなりの準備と資金が必要だ。すでに2001年に表紙をめくって一部のページを閲覧できる「Look Inside the Book」サービスを開始しており,当時から次のサービスに向けて計画されていたことがうかがえる。
 創業者CEOであるジェフ・ベゾスは,ニュースリリースで「イノベーションは顧客の体験を増すことができる。Search Inside the Bookはその好例である。われわれは人々が欲しい本を探すためのまったく新しい方法を提供している」と,自信に満ちた発言をしている。もちろん使ってみれば,その便利さにうなずかざるを得ないし好意的な反応も多い。

読者の支持と出版社の対応

米国の著作権保護政策に異を唱え,『コモンズ』などの著作があるレッシング教授も「驚くほどクール」と賛辞を送っている。また「本のGoogle」と呼ぼう,と書かれた新聞記事では,問題は立ち読みしたあとでユーザーが本を買うかどうかである,としている。
 続報はアマゾン・コムからである。導入後5日間の対象書籍の販売実績は対象外の書籍を9%上回り,さらに37出版社が参加を申し出てきたと発表があった。
 もちろん好意的な反応ばかりではない。ページ数が限定されているとはいえ,全文検索可能な書籍の中にはリファレンスなどもあり,1ページ読むだけで要件が終わってしまう本もある。だいたいキーワードで検索し本文を読むことができると言えば「図書館」である。すでに有料による電子図書館サービスはクエスティア,イーブラリーや出版者運営の「サファリ」などがある。
 サファリに積極的に参加していて,アマゾン・コム社のサービスに参加を見送った出版社の一つがオライリー社である。ティム・オライリーはアマゾンの新サービスは本屋の立ち読みに近く,ある種の本は売れる機会が増えるが,ときどき参照すればよい本には潜在的な問題があると指摘している。
 ジョン・ワイリーは実用書や料理本も含み5000タイトルを追加するという。ランダムハウスは一部を除外し,小説,ノンフィクションなどの読み物で参加するなど,各社さまざまな対応である。

著者の反応

一方,今回のサービスが作家の著作権許諾がなかったことで,作家団体の反発を呼んでいる。作家協会は全会員宛のeメールで問題点を指摘している。アマゾンもサービス開始時にあったとされる印刷機能を停止したと発表した。
 とはいえ画面のキャプチャはできる。テキストデータのダウンロードに慣れたアメリカ人には不便かもしれないが,日本の書籍では画像データのeブックは多い。もちろん,日本での実現はさらに困難なサービスである。