科学技術と教育を出版からサポートする

松下電器のΣブックに続き,噂になっていたソニーの電子出版事業が発表になった。このソニーを中心とした新会社「パブリッシングリンク」の設立発表会では,電子ペーパーが使われたeブック端末が参考出展されている。
 端末の仕様は公開されていないので次の機会にするとして,新会社がどのような電子出版ビジネスを展開するのか,検討してみたい。

ソニー大手出版・印刷連合

「パブリッシングリンク」には,ソニー,講談社,新潮社,大日本印刷,凸版印刷の5社に加え,全国紙2社や筑摩書房,岩波書店など長年CD-ROM出版を手がけてきた出版社が参加している。陣容をだけを見ると電子出版の経験も豊富で,その難しさや面白さをよく知っている面々が並んでいる。
 ポータルサイト「Timebook Town」を来春に開設し,会員制度により電子書籍の配信を開始する。ここでは2種類のサービスがあり,「Timebook Library」では好みの本を1冊ずつ閲覧読書でき,「Timebook Club」は文芸やビジネスといった分野ごとにお薦めの本を,固定料金制により毎月5冊ほど閲覧する。
 特徴はなんと言っても,電子書籍コンテンツの“レンタル”である。今までの電子書籍販売では,1冊ごとにコンテンツをダウンロード購入していたが,このサービスでは期間限定による閲覧読書となる。予定の閲覧期間は2ヶ月。まさに「タイムブック」な訳で,これによって価格を安く設定できるとのことである。

コンテンツ“レンタル”の成否

デジタルコンテンツをダウンロードする方式で,必ず問題になるのが不正コピーだ。音楽コンテンツがネットで不正に交換されていることに,出版社や作家はかなり神経質になっている。
 市場が立ち上がる前にコンテンツホルダーの自己規制が働く一方で,セキュリティを強くすれば購入や利用が不便になってユーザーの支持は得られない。レンタル方式の導入により,出版社がコンテンツを安心して提供できる環境になったとはいえる。でも,それだけでよいのだろうか。
 レンタル方式を採用した発想には,新古書店の販売が好調なことや図書館貸出率が高いことも関係しているだろう。確かに短期間に読み捨てられて新古書店に持ち込まれる本は多く,また図書館での貸出率も高い。いずれも出版界が問題視していることではあるが,本は借りて読むという読書スタイルが確立されたともいえる。また若い世代は,ケータイメールで1日に多くの文字を読んでいる。必ずしも本を購入するだけが,「読む」ことにはなっていない。
 だからといって,期間限定レンタルが読者に受け入れられるかといえば,それも疑問だ。なぜって,それは出版社の都合であり,読者の要望とは違った領域での発想である。
 「値段設定」も難しいところだ。現在,eブックは本の2次利用で制作されており,原価回収は終わっている。オリジナルのeブックを制作すれば,それなりの開発費がかかることになる。
 デジタルコンテンツを購入しても所有した実感は湧かない。一方で本は装丁,紙質,重量感などによって物理的に存在し,所有する満足感がある。eブックが物理的存在感が薄い分,かなり感覚的に安い価格を設定しないと,読者には受け入れられないだろう。

いつまでも「電子書籍元年」

2003年は低迷中だった電子書籍市場に大きな変動があった年になった。アメリカから相次いで伝わるeブック撤退に対して,日本では松下電器に続きソニーの参入である。ただ,一部で「電子書籍元年」といった表現が使われているが,もう何度も「元年」とうたわれながら,いまだ年を重ねていないのが電子書籍である。