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若い人が新聞を読まないと,よく指摘されている。したがって,新聞社の購読キャンペーンは「社会人になったら・・・」とか,若手タレントを登用して若年層に訴えかけることになる。確かに大学受験のために「天声人語」だけを読み,就職活動にそなえて日経新聞を読み始めた人も多いと思う。
 教材に新聞を活用する教育活動が,NIE(Newspaper In Education)「教育に新聞を」である。小学校で熱心に取り組まれているが,大学でも取り組む必要がある。
 電子ペーパーの調査研究のために,大学生にグループインタビューをしたときのことである。驚いたのは,彼らの親がすでに新聞を購読していない世代になっていることだった。では,新聞に親しんでいないか,というとそうでもない。新聞社のニュースサイトを利用しているのである。

映画が描く新聞の将来像

スピルバーグ監督作品『マイノリティ・リポート』には,数々の未来コンセプトの装置が使われている。21世紀半ばにおける近未来を舞台に,交通機関,通信機器,医薬品などとともに,ちょっとだけ「電子新聞」が登場する。トム・クルーズが地下鉄で逃げるシーンで,乗客が読んでいたのに気づかれただろうか。紙の新聞と同じ形状ながら,天気予報が次々と変わり,写真は動画で紙面全体がウェブのニュースサイトのようだ。
 映画スタッフは「現実的な未来」を描くために最先端企業を取材したという。その際,電子新聞のコンセプトを提供したのは,新聞社ではなく電子ペーパーを開発中のeインク社だった。新聞の将来像が未来志向のベンチャー企業によってもたらされたことが,新聞社の将来を暗示している。
 19世紀半ばに大量印刷が可能な高速輪転機が発明されて,新聞はマスメディアに生まれ変わった。電子ペーパーもまた新聞に革命をもたらす可能性が大である。

人気ニュースサイトの理由

ニュースサイトの利用率トップがヤフートピックスなのは,新聞関係者というより若者の常識である。新聞は一紙だけでなく併読しろとよくいわれるが,ニュースのインデックスサイトを利用すると報道記事の取り上げ方に偏りがあるのがよくわかる。
 また,ニュースサイトを利用していると,リンクされていればよいのに,と思うことがある。記事のニュースソースや関係する機関,組織は多岐にわたっている。新聞紙という閉じた媒体で読んでいるうちは気づかなかったが,リンクされていれば,ニュースを深く読み込めるはずである。しかし,新聞社のサイトは他へリンクせず自社情報で完結させている。リンクというネット文化を活かしていないのである。なぜか。
 一つにはリンク先の情報に責任が持てない,という考えに基づく。1社が提供しているサイトでも,ページを開いているうちにウェブサーバーが切り替わっていることは多い。ましてリンクを張り始めたら,新聞社の提供情報と他社のサーバー情報が読者から区別がつきにくくなる。誤解した読者からクレームがくるくらいなら,いっそのこと社内情報だけで閉じておこう,ということである。
 さらに個別記事へのリンクを拒否している社も多い。リンクは認めるものの原則的にトップページに限ったり,リンクを張った場合は連絡を求めている社が多数派ではないだろうか。
 一方で,新聞社は貴重な資源を使って取材したニュース情報を無料でネットに流し続けている。ネット文化を理解することと,ネットビジネスを構築することをはき違えている。
 ラジオやテレビが普及しても新聞が残ってきたことを考えると,文字情報によるニュースの取得行動は今後も長く続くと思う。問題なのは,サービス形態が変わっても,ニュースビジネスを成立させる方法である。