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 情報化により教科書が減ったキャンパスとして、前回、電機大学の例を紹介した。これは何も理工系大学だから進んでいるわけではない。むしろ少子化の中で生き残りを模索している地方大学や私立文系大学に、積極的な試みがある。
 今年の4月より武蔵野女子大学人間関係学部では紀伊國屋書店、アドビと共同で、PDF形式による電子テキストのネット配信を開始した。eラーニング最大の特徴である「いつでもどこでも」勉強ができるように、ネットによる予復習の環境整備を目指すという。大学が制作した3点の教科書に加え、有斐閣から発行されていた2点の本をPDF化した。他の出版社にも交渉中で、来年度から12点を追加し、紙と電子のテキストを併用する。

 これはもともと4月開講の通信教育部を念頭に開発されたシステムである。そこでは従来からの郵便に加え、インターネットを利用した申込みやレポート提出、添削指導などを行っている。従来型通信教育がどこでも苦戦している中で、定員を200名も超える1500名が集まった。
 インターネットを併用した通信教育は今後も増加するに違いないし、当然、その教科書は電子化されていく。一般の大学教科書を流用することも多いだけに、出版社は紙の教科書とあわせて、その電子版を準備しておく必要がある。
 ただ、そこで作られた電子テキストはPDFであり、その限りではディスプレイで紙面をなぞるにすぎない。音声や動画、インタラクティブ性は望むべくもない。eラーニングが「ラーニング」と名付けられる以上、単なる教科書、教材ではなく講義の要素が必要である。それには講師の音声、アニメーション図解に加え、理想的には授業の映像がある。教科書のPDF化が静的な教材作りとすると、より動的な教材作りがビデオ映像の利用である。
 ただ、最近のテレビ外国語講座を見てわかるように、映像教材にはかなりの演出が行われている。その分、見て飽きないが手間も経費も膨大である。放送大学の授業は据置カメラによる撮影で、教員の話とボードが中心であるが、それでもシナリオがあり撮影の準備も必要である。となれば教員の授業を映し出すのが、手っ取り早く簡単である。
 毎回の授業をビデオ撮影し、自動的にウェブページを生成して記録するプロジェクトが、前回紹介した電機大学で進んでいる。完成目標は全授業のビデオデータベース化であり、ネットによるオンデマンド配信である。電子教材としては洗練されてはいないが予復習や欠席した講義の受講には十分である。学生はウェブサイトから見たい授業を選ぶ。
 ただ動画像を全画面表示で記録すれば膨大なデータ量となりネット配信は困難である。そのため教員の板書やパワーポイントなどによるプロジェクター画面は静止画としてPDF化し、それと時間的に同期したストリーミングビデオを挿入している。授業を撮影すると同時にコンテンツが生成されることから同期型e ラーニングと呼ばれ、今最も注目される技術である。