色彩工学 第2版

色彩工学 第2版
著者 大田 登
ジャンル 全て
その他
出版年月日 2001/09/01
ISBN 9784501618902
判型・ページ数 A5・324ページ
定価 5,170円(本体4,700円+税)
在庫 在庫あり

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色彩工学を平易に解説.日本色彩学会推薦図書

 本書は,測色学の基礎・発展・応用の分野を「色彩工学」として総合的にとらえ,色彩工学をこれから学び応用する学生,技術者,および実務で色彩工学を活用している技術者を主な読者対象とした。
 本文中では,色彩工学の基本を説明し,ここだけ読めば色彩工学を一応理解できるようにまとめ,より深い理解が必要な場合には,各章末に「参考」で詳しい説明を収録している。

 色は,目が不自由でない限り,誰にでも見える。しかし,色とは何かを説明しようとすると,途端に難しくなる.辞書を引けば,色とは「視覚のうち光の強弱と波長による相違を識別する感覚」などとあり,余り理解は進まない。はっきり言葉で説明できないのは,色が視覚という我々の五感の一つであるからである。五感は,人間が外界の刺激を感じる視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚の5つの感覚であるが,感覚に関する言葉は,色以外でもいずれも説明が難しい。例えば,「匂い」は辞書には,「井に感じられる感覚」などとあり,同語反復の感を免れない。
 ところで,我々が外界から受ける刺激の80%は,視覚を通じてであるといわれる。実際,「みる」の意味をもつ漢字は217文字もあり,「きく」の意味をもつ漢字は18文字に過ぎないといわれている.他の4つの感覚と比較して,視覚が実に多くの情報を伝えていることがわかる。
 本書では,最も重要な感覚である視覚,特に色を定量的に表す方法について紹介する。定量的に表すとは,数字で記述することであり,例えば,「東京と大阪は,ずいぶん観れている」とか,「東京と青森は,とても遠い」などと形容詞により表現せず,「東京と大阪の距能は,552.6kmである」とか,「東京と青森の距離は,739.2kmである」と明快に記述することである。このようにすれば,「大阪と青森を比較したとき,青森のほうが186.6kmも遠い」と正確に比較することができる。
 色の場合でいえば,例えば日本の国旗(日章旗)の赤色は,「少し朱を帯びた朝日のような赤色」などと形容詞に頼らず,「日章旗の赤色はR=16」であるなどと記述するわけである。日章旗の寸法は,縦横比は2:3,日章の直径は縦軸の3/5,日章の中心は旗の中心とはっきりと定められているが,日章の赤色は,ものによりかなりの差があるのが現状である。しかし,R=16のように定量的に記述できれば,寸法の場合と同様に,どこでも同じ赤色の日章旗を製作し,使用することができる。
 色の定量化は,測色学(colorimetry),光の定量化は測光学(photometry)の分野に属するが,本書では測色学の理解に必要な測光学の基本を紹介し,測色学の原理と定式化を最近の発展に触れながら説明する。次いで,こうした知見が,産業界で有効に応用されている分野をいくつか紹介する。
 本書は,測色学の基礎・発展・応用の分野を「色彩工学」として総合的に把え,色彩工学をこれから学び応用する学生,技術者の方々,及び現に実務で色彩工学を活用している方々を念頭に置いて執筆したものである.こうした方々に本書を活用して頂ければ幸いである。本文中では,色彩工学の基本を説明し,ここだけ読めば色彩工学を一応理解できるように心がけた。更に理解を深めるために,重要な事項は章未の参考で詳しく説明した。 色彩工学は,物理学・心理学・生理学を含む境界領域を対象としており,その理解には,これらの分野以外に数学・化学などの知識も必要とされる。このため,東芝ライテック㈱の森礼於博士,元富士写真フイルム㈱の東条英氏,現同社足柄研究所の高橋公治氏らに貴重な御意見を頂き,内容の正しさを期した。ここに記して感謝したい。更に,読者からの御指摘,御叱正を請い,今後の改訂・充実を図りたい。また,筆の遅い私の原稿完成を半ば諦め,半ば呆れながらも,最後まで忍耐強く待って下さった東京電機大学出版局の朝武清実氏,田原良子氏にも感謝したい。

1993年11月
 大田 登
第1章 光と視覚
1.1 光
 1.2 目の仕組み
 1.3 目の順応と絶対感度
 1.4 分光感度と測光標準観測者
 1.5 測光量の定義
 1.6 測光量の単位
 1.7 測光量の計算と測定
 1.8 測光量の換算
  参考1(1.8)完全拡散面光源の光束発散度,照度及び輝度
  参考2(1.8)輝度と明るさ
第2章 色覚と表色系
 2.1 色覚の仕組み
 2.2 色覚の化学
 2.3 表色系と用語
 2.4 マンセル表色系
 2.5 加法混色による表色系
  参考1(2.3)彩度に関する用語
  参考1(244)色名による色の表示
第3章 CIE表色系の成立
 3.1 RGB表色系
 3.2 XYZ表色系への変換
 3.3 X10Y10Z10表色系
 3.4 三刺激値と色度座標
 3.5 条件等色
 3.6 主波長と純度
 3.7 色温度と相関色温度
 3.8 照明光と光源
 3.9 標準の光と補助標準の光
  参考1(3.1) 等色関数の求め方
  参考1(3.2) 表色系の変換
  参考2(3.2) XYZ表色系への変換
  参考3(3.2) 虚色[X]と[Y]の考え方
  参考1(3.4) X10Y10Z10表色系での測光量
  参考1(3.5) 用語「条件等色」の起源
  参考1(3.7) 相関色温度の簡便な求め方
  参考2(3.7) 色温度変換フィルター
  参考1(3.8) 黒体放射の分光分布
第4章 均等な表色系
 4.1 均等色度図
 4.2 等明度尺度
 4.3 均等色空間
 4.4 色差と心理的相関量
 4.5 CIELAB色空間とCIELUV色空間の比較
 4.6 色差の換算
  参考1(4.2) 視感反射率YからマンセルバリューVの求め方
  参考1(4.3) 暗い色に対する修正式の求め方
  参考2(4.3) その他の均等色空間
  参考1(4.4) 色操作ΔH*の直接計算方法
第5章 測色値の測定と計算
 5.1 刺激値直読方法
 5.2 分光測色方法
 5.3 測定幾何学的条件
 5.4 測色値の計算方法
 5.5 均等色空間での測色値
  参考1(5.2) 蛍光物質の分光測色
  参考1(5.3) 反射測定の比較標準
第6章 CIE表色系の発展
 6.1 加法混色
 6.2 減法混色
 6.3 放射の視感度の最大値と最明色
 6.4 色順応の過程
 6.5 フォン・クリースの色順応予測式
 6.6 CIEの色順応予測式
 6.7 色覚モデル
 6.8 条件等色の解析
  参考1(6.1) 混色の規則
  参考1(6.2) ランベルト・ベールの法則
  参考1(6.3) 視感度の最大値の計算方法
  参考2(6.3) 最明色の計算方法
  参考1(6.5) 基本分光感度の求め方
  参考2(6.5) フォン・クリースの色順応予測式の導き方
  参考3(6.5) フォン・クリースの色順応予測式の応用例
  参考1(6.6) CIEの色順応予測式の応用例
  参考1(6.7) ATD色空間におけるマクアダム楕円
  参考1(6.7) ATD色空間の色順応補正
  参考1(6.8) 条件等色の外れの理論的限界の計算方法
第7章 CIE表色系の応用
 7.1 光源の演色性の評価
 7.2 常用光源の分光分布の評価
 7.3 白色度の評価
 7.4 照明光条件等色度の評価
 7.5 観測者条件等色度の評価
 7.6 照明光の分光分布の設計
  参考1(7.6) 所定の分光分布の計算方法
参考文献
付 録Ⅰ 基本単位と用語
    Ⅱ 行列の演算
    Ⅲ 偏微分法
付 表
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