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介護のためのボディメカニクス 力学原理を応用した身体負担の軽減

自然科学

小川 鑛一(著) / 北村 京子(著)

A5判  192頁 並製
 2,700円+税
ISBN 978-4-501-41990-5 C3047
在庫あり

奥付の初版発行年月 2016年07月
書店発売日 2016年07月11日
登録日 2016年05月26日

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解説

介護を学習する人にとって理解しにくい「力学」や「物理学」の基礎を易しく解説。多くのイラスト・図面を用いて、介護負担を軽減する動作に応用されている力学原理を詳解。

紹介

介護を学習する人にとって理解しにくい力学や物理学の基礎を易しく解説。介護負担を軽減する動作に応用される力学原理を詳解。

「ボディメカニクス」とは、看護・介護者の腰部などの身体負担を軽減し、利用者が安全・安心な介護を受けられるよう、力学的原理を活用する技術である。介護を学習する人にとって理解がしにくい「力学」や「物理学」の基礎をやさしく解説。多くのイラスト・図面を用いて、介護負担を軽減する動作に応用されている力学原理を詳解。実際に自宅での介助シーンも取り上げ、介助動作とボディメカニクスとの関連および活用方法について紹介する。

目次

第1章 介護動作を助けるボディメカニクスとはなにか
 1.1 ボディメカニクスとはなにか
 1.2 人間の姿勢・動作とボディメカニクス
 1.3 ボディメカニクスの教え
第2章 ボディメカニクスを考えるための基礎力学
 2.1 力とはなにか
 2.2 物の重さについて
 2.3 大きさと方向を持つ「力のベクトル」のはなし
 2.4 回す能力「力のモーメント」のはなし
 2.5 「重心」のはなし
 2.6 「支持基底面」が広いと姿勢が安定するはなし
 2.7 てこの原理について
 2.8 ニュートンの運動の3法則のはなし
第3章 身体の姿勢・動作とボディメカニクス
 3.1 身体部位の重さと負担について
 3.2 身体の姿勢・動作と力学について
 3.3 力のベクトルと力のモーメントを考慮した負担軽減について
 3.4 重心は低く,支持基底面は広くし姿勢の安定化を図る
 3.5 姿勢で変わる関節が受ける力
 3.6 勢いをつけると大きな力がかかるのは慣性のため
 3.7 重心をコントロールして動作負担を減らす
第4章 介護動作とボディメカニクス
 4.1 介護動作と発揮力
 4.2 介護動作とてこの原理
 4.3 介護動作と力のモーメント
 4.4 介護動作と姿勢
 4.5 介護動作と支持基底面
 4.6 介護動作と慣性
 4.7 介護と摩擦~介護になぜ摩擦が大切か~
 4.8 看護・介護の研究について
第5章 負担が大きい介護支援場面の1事例とボディメカニクスの応用
 5.1 排泄介助
 5.2 ベッドから車椅子への移乗介助
 5.3 ベッドの上での移動介助
 5.4 食事介助
 5.5 利用者とのコミュニケーション
 5.6 終わりに
問題解答
付録
参考文献
索引

前書きなど

 「ボディメカニクス」というのは,人間に力学原理を応用した負担軽減の手法を考究する分野です。このボディメカニクスは看護・介護分野で働く人たちのために腰部負担や身体負担の軽減をはかるため早くから看護技術の分野で導入・教育されている力学原理です。
 ボディメカニクスが教えるところの動作を活用したからといって,脊柱障害あるいは腰痛発症が必ず防げるということは断言できません。しかし,物理の一分野である力学原理を身体構造(骨格系)に応用すれば,てこや力のモーメント(トルク)が教える原理のとおり,人間が発揮する力を軽減して介助負担の減少につながることは必至です。
 介護業務で腰痛を発症する原因の多くは,腰部に不自然な力が作用するためです。腰部にかかる力は,身体内部で発生する力なので,それを測ったり特定したりすることは困難です。お辞儀をする時のように上体(頭,胴体,前腕・上腕、手)を前傾すると,腰部には信じがたいほど大きな力がかかるという事実があります。
 この見えない大きな力がかかっていることをわかりやすく解説することを主たる目的として,本書を執筆しました。なぜ,腰部に大きな力がかかるかということを理解するためには,どうしても物理の一分野である力学原理のはなしをする必要があります。このような力学原理を理解し,それを意識して介助作業を行えば,不自然な姿勢,動作をとらなくなり,負担の軽減にもつながります。
 ボディメカニクスは,英語で「Body Mechanics」と書きます。これは身体(Body)と力学(Mechanics)を融合させる科学の一分野です。つまり,外部から人間の身体にかかる(受ける)力または人が物を動かす時に出す力に関わる科学なのです。わかりやすく説明するなら,寝ている利用者を座位に体位変換するために,介助者は背部に手を当てます。そして,手に力を加えて抱きかかるように起こします。この時,介助者が発揮する力は介助者の内部から出た力で,利用者の上体が起き上がるのです。
 これに対して,ベッド端座位の利用者を車椅子に移乗させる場合,一度は利用者を持ち上げるとすると,その時の力は介助者の内部力(内力)です。ところが,一度持ち上げてから身体を回転させるまで介助者は利用者を持ち上げたまま,一瞬の時間ですが保持します。この時の力は利用者の体重が介助者の手・前腕・上腕にかかり,さらに腰にも同じ力が加わります。この力は利用者の重さ(重力)という外力です。この重力という外力は利用者を保持している間中,介助者の足,腰,腕などにかかり続けています。
 このように,介助者はこの見えない力(内力)を発揮し,利用者の身体を動かしたり保持したりします。腰痛は上述した内力,つまり介助者が力を出したために発症することもあれば,重いものを保持するとか,座位姿勢を長時間続けるために発症するということもあります。特に,後者の場合は座ることが多い,運輸業に携わる人たちが多いという報告もあります。このように腰痛をを発症しやすい職種があるということからも腰痛は内力によっても,外力によっても発症するということが理解できます。
 不自然な姿勢で重い物や利用者を持ち上げる場合,あるいは介助する場合に腰痛発症の可能性は高くなります。このことから,腰痛は地球上に重力があるから起こるとも言えます。この重力は宇宙空間へ行けば存在しないのですが,地球上で生活する限り,どこへ行ってもその重力の影響を受けます。そのため,重力による腰痛を起こさないようにすることは不可能です。
 このことから,腰痛は質量の大きい重い物や人を看護,介護,介助することを業務とする看護師,介護士,座ることが多い運輸業者,重い荷物を運ぶ宅配業者に多く発症し,そのため腰痛は,職業病とも言われています。介助作業や重力物の移動により発症する腰痛の予防は,力学の原理を理解し,その道理を知ることで腰痛発症の可能性は減り,腰部負担も減ります。本書ではその予防原理に関係するボディメカニクスについて詳しく説明します。
 本書は5章構成です。第1章ではボディメカニクスの意味や活用方法などをわかりやすく説明します。第2~4章では介護負担を軽減する動作に応用されている力,重心,重心線,支持基底面,てこの原理,力のモーメントについて説明します。第5章ではもっとも苦労が多いと思われる次のような介助場面を取り上げ,介助動作とボディメカニクスとの関連について説明します。
 ・狭いトイレでの利用者の排泄着座と座位位置の調整
 ・車椅子へ移乗
 ・車椅子からベッドへ移乗
 ・ベッド上での移動
 ・頭部が動かせない利用者のコミュニケーション支援
 本書発刊にあたり重度障害をもつ方にご協力頂き,介助場面のビデオ撮影と写真掲載をこころよく承諾していただきました。ここに厚く感謝の意を表します。また,本書刊行にあたり,多大なご尽力をいただきました石沢岳彦氏,石井理紗子氏,小田俊子氏に厚く御礼申し上げます。

2016年5月
 小川鑛一,北村京子

著者プロフィール

小川 鑛一(オガワ コウイチ)
北村 京子(キタムラ キョウコ)

上記内容は本書刊行時のものです。

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